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『世界は幾何学で作られている』
いちばん重要なものは幾何学だった
著者 アミーア アレクサンダー 著
松浦 俊輔 訳
ジャンル 一般書 > 単行本 > 外国歴史
出版年月日 2020/08/24
ISBN 9784760152582
判型・ページ数 4-6・368ページ
定価 本体3,400円+税
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この本の内容
目次
本書は驚くことに幾何学的な原理こそが私たちの世界を形成したという物語だ。著者は歴史的な出来事をドラマ化し、読者を感動させる本を書いてきた。本書では16世紀に戻り、幾何学によって形作られた世界を読み解く。この本には、専制君主、王、建築家、そして意外な角度で交差する忘れられた天才たちが登場する。
1661年のある夜、ルイ14世の下で財務管理官を務めていたニコラ・フーケは逮捕される。彼の罪状は奇妙なものだった。それは大胆にも壮大な幾何学的庭園を建設するというものだった。そうすることで、だれもが服従すべき絶対的な階層というものを乱したというのだ。幾何学は、どのような場面でも正しいものであり、その完全性において、神の権利の証とみなされた。幾何学的庭園の優美で対称的なデザインは単なる装飾品ではなく、確実性の証明であり、それゆえに支配のよりどころでもあった。どのようにしてフランスの王族がこの独特の景観デザインに惚れ込んだのか? そして、なぜベルサイユにそれが実現されたのか?
古代ギリシア人は数学に「真理」を求め、絶対的な論理的確実性がそこにあると思った。人間は不確かであるが、幾何学は絶対的不変性をもっていたからだ。そこからプラトン、アリストテレス、アウグスティヌスへと絶対的な神の国という考えが西欧を覆っていく。さらにコペルニクスが幾何学により天体の動きを証明した。ガリレオも同様に幾何学を用いて世界を記述する。こうして西洋においては幾何学を理想型とする考えが広がっていった。しかし世界を規定する力は神だけに宿るものであり、それに対抗する考えは神を冒涜するものとして非難されることにもなった。話は変わって17世紀のフランス、ルイ14世の時代。ニコラ・フーケとの確執の話が展開していく。そのさなかに作られたヴェルサイユ宮殿に見られる幾何学景観は、西洋が植民地を獲得するにつれ、それらの国で見られる幾何学景観へもつながっていく。
その原理を説明するためにローマの建造物での遠近法の話(鏡自体は二次元だが、その前に立つと奥行きを知覚してしまう。つまり二次元から三次元を作ることになる)につながり、フィリッポ・ブルネレスキによる透視図法を利用した三位一体の三次元空間の表現、メディチ家最盛期に活躍したレオン・バッティスタ・アルベルティにおける幾何学の扱い方、そしてルイ14世がなぜ幾何学的庭園を造ることになったのかを語っていく。
ベルサイユのエレガントな庭園から始まり、ロンドンの都市計画、サンクトペテルブルク、ベルリン、ウィーン、サイゴン、カルカッタ、ニューデリー、マニラ、キャンベラからワシントンDCまで、幾何学的な光景が近代の風景に刻まれていることを証明していく。
著者は次のように主張する。ユークリッド幾何学は、私たちの社会がどのように構築されているかについて、重大な影響を加えている。それは、私たちの都市がどのように建造されるかを決定し、また政治構造を説明するための根拠にも使われている。ユークリッドの『原論』の証明は単に真実であるのではなく、理性のみにより証明されたものであった。アレクサンダーは15世紀イタリアにおけるユークリッド幾何学の再発見と、フランス王族の数世紀にわたる幾何学的な庭園への嗜好、それはベルサイユで頂点を迎えるが、それが武力衝突と動乱の時代における権力の統合の目に見えるシンボルとして作用したことを詳細に物語る。本書ではわれわれの世界に刻まれた幾何学の記念碑的物語、それらが支持した信仰、今日までの私たちの生活を形作った方法を述べる。
【著者紹介】
アミーア・アレクサンダー
カリフォルニア大学ロサンゼルス校で歴史を教える。著書に『無限小』(岩波書店、2014年)、「幾何学的な風景」、「夜明けの決闘」がある。ニューヨーク・タイムズ紙、ロサンゼルス・タイムズ紙などに記事が掲載されている。NatureとThe Guardian、NPR、その他で特集記事がある。ロサンゼルス在住。
(柏書房さんのサイトより)
なろう主人公は叫んだ。
「首都区画整理が大変なら、最初から都市を作ればいいよね!」
どこのロシア皇帝だよ!
神は死に。民は王を弑逆し、陰謀が人を腐らせ、混沌は世界を覆っている。希望はどこにあるのか。ここにある。
とある忠臣がいた。
彼は幼い頃より支えてきた王を己の庭に招待して歓待し、永遠の忠誠をただ誓った。王は彼に死刑を下した。
人望あふれる臣下であったので追放となったとき、王は勅命をもって『減刑』として獄につないで彼が死ぬのをただまった。
なぜか。かの王は自分に歯向かったものたちに寛大だったはずだ。その真意は彼が国王をもてなす庭を造ったからだった。
庭?
庭である。
王は彼の庭を徹底して破壊し彼の庭師を奪った。
庭師? 庭師である。
庭師は幾何学的秩序をもって王の庭を飾った。
教会が何をいおうと幾何学は崩せない。証明を通してわかる絶対的な宇宙。ユーグリット幾何学。転じて幾何学を操る王となった彼は己に歯向かう者たちに幾何学の力をもって視覚として聴覚に味覚に嗅覚に訴え触覚を伴う庭という体験をもって『王こそ神』とすべてに知らせた。幾何学は身分制度を支える強力なツールとなった。
王を中心とする官僚国家には王の力を体感できる機能が必要なのだろう。
今となっては人権侵害に見える王権国家は戦乱や内乱から人々を守るために必須だった。その身分制は幾何学的秩序をもっていた。民はそれを受け入れた。
古代の遺跡を調べ絵を描くものがいた。
彼は消失点を見出し、荒野にあたかも『ここに建つ予定の建物が見える』仕掛けを作り出す。古代の技法がよみがえる。
それは絵の中に空間を作り出す。その中には必ず幾何学的秩序があった。
新国家が生まれた。
自由と平等の理想を体現する権威ある都市にせねばならない。
しかし、神の権威に疑問をなげかけ、正しく人々を導く幾何学に陰りが見える。
『ひょっとしたら同じ図形でも面積とか変わるかも』
ユークリッド幾何学を打ち壊す新ユークリッド幾何学の導入。
図書館は図書館。政府官邸は政府官邸。動かすと成り立たない権威の都市はやがて『どのビルをどこに動かしても機能する』都市へと変貌していく。統一という秩序はやがて多様性を持った秩序へと変わっていく。
あなたのときめく心を中心に。
人々は回る。
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