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鍛冶屋の教え 横山祐弘職人ばなし
著/かくまつとむ
(小学館文庫)
水戸斉昭の刀鍛冶から、農具・生活刃物を打つ職人へ。幕末から平成の現在まで、鉄とかかわってきた奥久慈の野鍛冶・横山祐弘氏が語る、鉄の不思議と道具の魅力。懐しい日本を思い出す、文庫書き下ろしの聞き書き集。
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字サイズだけを拡大・縮小することはできませんので、予めご了承ください。 試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
(※小学館HPより抜粋)
ものすごいレアケースだが『剣の心得はない』が『一通りの鍛冶技術を持っており鉄を知り尽くしている』人物が鋳つぶされる前提で預かった大量の刀(古いもの新しいもの駄作に名刀と豊富な資料)を用いて竹藪にて一振りずつ試し切りをした話がある。
(本人曰く『何百本』なので恐らく生竹)
茨城県北西部、奥久慈に4代続く野鍛冶・横山祐弘氏は若い時分(※大正10年生まれ)に進駐軍の刀狩りに遭ったらたまらんと地元の方々から大量の刀を預かった際、『どうせ作り変えてしまうくらいならば』と試し切りを実施したそうである。
(惜しむらくはこの際専門家が詳細なデータを取っていない事)
横山氏の経験則によれば『上級将校の刀(先祖代々の品)より下級将校が新しく作ってもらった刀』。ダントツ。
古刀に使われる玉鋼には見た目やさびにくいなどの良さもある(※不純物が多くさびにくくまた鍛造しやすい。反面、均質ではないので出来にムラがある)ことを踏まえつつ新刀や古刀お互いの良さを述べられているのが印象的である。『玉鋼は魔法と相性がいい』などの独特のなろう設定を導入しないと素人が持っても相応の効果を発揮する兵器(達人が使う『武器』とは分けた)として古刀はイマイチという結果に?!
(※実際に刀を持ったことのある筆者=鴉野個人の拙い経験では現代鋼で作っている刀の中には斬るたびにいちいちガツンと来て痺れたりするものもある。たかが紙を斬るくらいで関節炎になってはたまらん。横山氏も語っているが、逆に素材が柔らかいゆえ滑らかに斬れたりするので一概に古いからダメ新しいからいいあるいはその逆の問題ではなく、あくまで使い勝手、美しさ、職人の技などなどすべて刀としての個性という結論に達する。当時最高の技術で作られたものには相応の敬意を払うべきだ)
この書籍は鍛冶屋の興味深い神事に近い習慣や家の作りの工夫、家が燃えろ壊れろと祈っている大工と違って家が燃えたら火事見舞いで道具を作り直してあげないといけないのでたまらんから頼むから火事おこさないでとか、鍛冶屋のごみ混じりの地面の土は子供が磁石遊びにもらっていったり大人が肥料に使うため野菜と引き換えに引き取ってくれたなどの田舎で注文通り何でも作った野鍛冶の生活を描写する正直なお話などが満載であり、アマゾンの電子書籍サービスであるKindleでも読める(Kindleがあればその場で注文確定して読めます)。流通量が多いのか恐らく図書館にもあるので購入を検討した方はとりあえず地元の図書館の予約検索サービスを試してほしい。
横山氏ご本人が大正生まれで戦時中は何度も戦地に運ばれかけつつ『ぶっ壊れたもの(※天皇陛下からの賜りもの)をこっそり直したり作れる』特技の為、また古来からの技術を今も踏襲(※単純に子供が独立したのでベルトハンマーを人にあげちゃっただけ)し、38式や機関銃から農家の小道具まで何でも直して作っており『戦場で鍛冶屋が治せるレベルの兵器は却って実践的なこともある』と述べられ、鍛冶屋として一通りの道具や実務知識も余すことなく語ってくださっています。
鹿島神宮の仏の御霊は鉄としては相当古いがそれゆえ素材としてはお粗末で足で踏めば多分曲がる発言は草生える。
また、本書における『昔ながらの鍛造が成された包丁で冷凍食品を斬ってはいけない』等の台所で起きる鉄のトラブルのお話は鉄の特性を踏まえていて実に興味深く拝読した。意外と台所で起きる鉄のトラブルは多かった!?
鎌などの鍛造の際、焼き鉄に土を塗る代わりに味噌やアユの腸の塩辛を導入したりする、鍛造用の味噌が存在するなどのお話は瞠目に値するし、横山氏の制作環境が江戸期大正期からほぼ変わっていない(前述したとおりベルトハンマーすら使っていない)ことからあなたの作品の資料にもなるかもしれない。
……いや、これみたらなろうの転生主人公、異世界の鍛冶屋に無茶ぶりしすぎやろ!




