#更科日記 #古典文学

　更科日記といわれて『蕎麦屋の日記か』という方。全然違う。

　この物語は平安時代を生きた元少女の回想記である。であるのだが。……えぇっーと（当惑）。

　宮仕えとか、優雅な都の生活とか想像すると痛い目に遭う。

　なんせ彼女の生まれた環境はド田舎。娯楽などない。都で流行っているという物語など触れることもできない。

「源氏物語読んでみたい読んでみたい読んでみたい」

　ブチ切れた彼女は幼少の身なのになぜか薬師寺仏(等身大フィギュア)を彫って祈りまくる。

『都行きたい都行きたい。全巻読みたい仏様お願い』(※違訳)

　確かに治療が必要なオタクだよ！

　なお、長じて大人になると夢のお告げで『いい加減仏道勉強せんか』と仏さまにもキレられる。お告げのレベルがひと味違う！

　都に戻ってキャッハー！　これで源氏物語読める！　しばらく会っていなかった娘が都に戻ったらオタになっていた。それは実母も呆れる。

　可愛がってくれた乳母が死んで流石にショックが過ぎ、オタ活停止すると命を失ったかのように落ち込むので家族が伝手を辿ってそうら養分だよと源氏物語フルセット到着！

　全巻セットを手に入れてキャッハー尊い尊い尊すぎて目が潰れる状態になる『菅原の孝標の娘』（筆者）さん。

　イベント仲間がいないから辛い。苦しいだの、オタ活すぎて現実を見て黒歴史に苦悶したりどう考えてもこの人は生まれる時代を間違っている。

　一応更級日記には現在漫画版があり、オタにとって平安時代のオタの悩み萌えの分かりみ深すぎと一部では有名なのだが電子書籍版はないようで内容を確認できなかった。

　余談だが彼女の親族（伯母）には平安時代版『私が夫に愛されないのはどう考えてもお前らが悪い！』な『蜻蛉日記』で有名な道綱の母さんがいる。先祖は学問の神様菅原道真。エリートな文章力と教養で最強エリートなオタが己の黒歴史を描くのだから面白くないはずがない。エリートオタってどこの森茉莉さん(もりまり。森鴎外の実子。BL小説の先駆者らしい)だよ。伯母の道綱母さんといい黒歴史を描いて受けをとる伝統でもあるのか！？

　平安時代の早すぎたオタの回顧録として読むのならこれほど面白い古典文学はない。