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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
92/116

殺戮との戦闘


 奥義の会得に思ったよりも時間が掛かって、帰還が遅れた。

 精霊王がこっちの様子を伝える度に焦りそうになった気持ちを抑え、どうにか会得して戻って来たものの、遅れたせいで少なくない被害が出た。

 だけど、悔やむのは後だ。

 今は目の前にいる、あいつを倒さないと。


「ちょっ、何よあいつの色。どす黒くて殺意しかないじゃない」


 「色別」で感情を見たアリルが、戸惑いながら見えた色と感情を教えてくれた。


「存在自体が殺意、ってことか」

「ハッハッハッ。見た目の割には斬り甲斐がありそうじゃねぇか」


 見た目はそこまで大柄じゃなく、光そのものが集合して人を模しているみたいだ。

 あれがゼオンとデルスが混じり合い、誕生した生命体か。

 以前は「完全解析」できなかった理由は、精霊王から聞いた。

 だけどこの世界に適応した今なら、「完全解析」ができる。

 さあ、お前は何なんだ。



 ジェノサイドヒューマノイドスピリット 精霊人 性別無し


 状態:健康


 体力10942 魔力9847 俊敏10883 知力921

 器用10731 筋力9964 耐久10928 耐性10935

 抵抗10526 運777


 スキル

 気配探知LV10 気配察知LV9 索敵探知LV9 魔力爪LV7


 種族固有スキル

 不定形魔法


 称号

 殺戮者 虐殺者


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法 趣味 三大欲求




 ジェノサイドヒューマノイドスピリット。

 それがあいつの名称か。

 長いから以後、ジェノサイドと呼ぼう。

 それにしても、レギアの憑依でレベルが上がって見えるようになった称号が、物騒以外の何物でもないぞ。

 で、不定形魔法ってなんだ。




 不定形魔法

 特定の属性や形状が存在せず、想像した魔法が発動される

 属性や形状が存在しないため、詠唱不要




 うわっ、こいつは厄介だ。

 通常魔法は発動の際、その属性と形状を口にして発動させるのに、それが必要無いだなんて。

 だけど魔法である以上、レギアの「魔法吸収」で対応できるだろう。

 他には探知能力に優れていて能力の数値が高い以外、特に危険そうなスキルは見られない。

 とはいえ、スキルの入れ替えで「魔力爪」を奪っておいた方がいいか?

 いや駄目だ、そのために使えるこっち側のスキルが足りない。

 どう見繕ってもレベルを下げるだけに終わるから、スキルの入れ替えは温存しておこう。

 そう判断して「完全解析」を終えるのとほぼ同時に、ジェノサイドが不気味な笑みを浮かべた。


「気を付けて、凄い悪意が向けられてる!」


 「悪意探知」で悪意が向けられたことをリズが報せるのと同時に、ジェノサイドが駆け出した。

 速い、とんでもなく速い。

 だけどレギアを憑依装備したことによる強化、直接ここへ転移するから予め施しておいた自己強越化魔法と付与魔法、そして「心眼」スキルによって動きが見えるし、体も思考も反応できる。

 魔力爪を両手に纏って迫る姿を目で捉え、皆を守るため前へ出ながらハルバートで攻撃を防ぐ。

 するとジェノサイドは驚きで目を見開いた後、不機嫌な表情になって魔力爪を何度も振るう。

 怒り任せの割に速くて重くて鋭くて強い攻撃を防ぐと、舌打ちしそうな表情で後退した。


「見ろ、あいつが退いたぞ」

「というか、あの速さに反応したのか?」

「誰だあの少年は」


 後方からざわめきが聞こえ、ジェノサイドが忌々しそうにこっちを睨んでくる。


「どう? あいつは」

「強い。お前達は一撃でも受けたら終わりだ」


 攻撃を受けてみて分かった。

 あんなのをロシェリ達が受けたら、一撃で死ぬ。

 筋肉従魔達は浅ければ一撃ぐらいは耐えられそうだけど、浅く済むように反応できるだろうか。


「今の……残像しか、見えなかった……」

「接近されたらひとたまりもないね」

「同感ね。前衛は任せたわ」

「……分かった」


 残像しか見えないとなると、絶対に後ろには通せない。

 ロシェリ達もそうだけど、後ろには俺達が到着するまで戦っていたノワール伯父さんやライラさん、他にも大勢の人達がいる。

 これ以上被害を出さないためにも、ジェノサイドはここで倒さないと。

 鼻息を荒くして前に出てきたマキシマムガゼル、拳をぶつけ合わせながら並び立つアシュラカンガルーとゴウリキコアラの表情からも、同じ気持ちと決意が窺える。

 残るギガントアンキロは俺達の後ろへ立ち、後衛のロシェリ達を守る位置に着いた。

 それとほぼ同時にジェノサイドが再び迫って来た。

 迎撃するため母さんから貰ったスキルの一つ、「瞬動」でこっちも接近し、勢いそのままに魔力爪とハルバートの斧部分が激突。

 そのまま互角の打ち合いになるけど、両手に魔力爪を纏うジェノサイドに対し、こちらは長物のハルバート。

 防いではいるものの、手数と攻撃動作の差から防戦一方になる。

 だけど俺は一人じゃない。一緒に修業を乗り越えた、頼もしい仲間が三人と四体もいる。


「っ!?」


 一方的に攻めていたジェノサイドが何かに気づき、右手の動きが止まる。

 視界の隅から振り下ろされたのは、打ち合いの間に接近していたマキシマムガゼルの棘付き鉄棍棒。

 左手で俺へ攻撃をしつつ、それを右手で防御した。

 そこへさらに、背後からアシュラカンガルー、左側面からゴウリキコアラが迫る。

 接近に気付いてハルバートと棘付き棍棒を弾いて、迫る二体へ攻撃しようとするのを連続突きで阻止する。

 動きが止まったこの隙に、前へ跳躍しながらジェノサイドとアシュラカンガルーの位置を入れ替えて、目の前に現れたアシュラカンガルーを跳躍そのままに跳び越る。


「!? !?」


 急に位置が移動したことに困惑するジェノサイドへ向け、ハルバートの斧部分を振り下ろす。

 だけど困惑しながらも危機を察したのか、両手で刃を挟んで受け止められた。

 今だ。ここであるスキルを発動させ、刃に小さな爆発を起こす。

 刃を挟んでいたジェノサイドの両手が爆風で離れ、両腕を大きく開いた状態で後退する。

 これがレギアを憑依装備することでレベルが上昇し、一時的に「斧術」が進化した「爆斧術ばくふじゅつ」だ。




 爆斧術LV1【斧術LV11】

 斧術スキルがLV11になったことで進化したスキル

 爆斧術LV1であり、同時に斧術LV11でもある

 斧での攻撃時、刃が触れた部分を爆発させられる

 斧以外での武器でこのスキルは使用することは不可

 レベルアップに伴い、爆発の威力や効果が強化される




「ふっ!」


 さらに後退したジェノサイドへ向け、「飛槍術」の突きを放つ。

 ただの突きなら届かない距離を、突きを飛ばすことで届かせて無防備な腹へ命中した。


「っ!」


 腹部への直撃にジェノサイドの表情が歪む。


「ジルグ、撃つわよ!」


 後方のアリルからの掛け声に、後方へ跳んで距離を取る。


「シャイン、レイン!」

「アイスジャベリン!」

「ロックミサイル!」


 後方から放たれた魔法にうっとおしそうな表情をしたジェノサイドは、口を大きく開ける。

 そして口から大音量の嫌な音と共に衝撃波を放ち、迫る魔法を破壊しながら攻撃してきた。


「くおぉぉっ!」

「なによ、これっ!?」

「ひうぅぅぅ……」

「頭が、割れそうだよ!」


 嫌が応にも耳を閉じたくなり、考えるより先に体が動いて耳を塞ぐ。

 だけど指の僅かな隙間から届く音に頭が痛くなり、さほど強くないとはいえ衝撃波に体が襲われる。

 さすがの筋肉従魔達もこれには耐えられず足を止めて耳を塞ぎ、耳を塞げないギガントアンキロは蹲って苦しそうに鳴き声を上げている。


「この程度で情けねえな。しゃあねぇ、ちょっと待ってろ」


 憑依装備でハルバートになっている本体のレギアがそう言うと、「分裂」で防具として憑依装備している分体のレギア全ての口を開き、「魔法吸収」で音と衝撃波を吸い込んで無効化した。

 そうか、今の音と衝撃波は不定形魔法だったのか。


「!?」


 魔法が吸収されたことにジェノサイドが驚いている。

 隙あり、だな。


「やれっ、レギア!」

「おうよっ!」


 両腕を広げたのに合わせ、「魔法放出」で吸収した魔法をジェノサイドへ放つ。

 余計に驚いたジェノサイドは自分の放った攻撃を浴びて、苦しみながら仰け反る。

 この隙に「瞬動」で再度接近して、レギアの「闇属性攻撃」で漆黒に輝く槌部分を振るう。

 苦しみながらもこれを片手で受け止めたジェノサイドだけど、直後に黒い衝撃が全身に走って後方へ吹っ飛ばされた。

 これが「爆斧術」同様、一時的に「槌術」が進化した「衝槌術しょうついじゅつ」だ。




 衝槌術LV1【槌術LV11】

 槌術スキルがLV11になったことで進化したスキル

 衝槌術LV1であり、同時に槌術LV11でもある

 槌での攻撃時、面が触れた対象へ衝撃を放つ

 槌以外での武器でこのスキルを使用することは不可

 レベルアップに伴い、衝撃の威力や効果が強化される




 まだLV1だから爆発も衝撃もさほど強力でないとはいえ、ジェノサイドに効かないほどじゃない。


「いけるぞ、一気に攻めろ!」

「言われなくとも。ハイドロスプラッシュ!」

「ウィンドカッター!」

「サンダー、ランス!」


 後衛から魔法の援護を受け、ギガントアンキロを除く筋肉従魔達と共に接近してジェノサイドへ攻め込む。

 筋肉従魔達に攻撃が当たらないよう、「瞬動」で間に割って入ったり、魔法や「飛槍術」で妨害をしたりしつつ魔力爪を防いで反撃するものの、「爆斧術」と「衝槌術」を警戒して回避ばかりしている。


「こん、のっ!」


 攻撃を避けられ、空振った勢いで体勢が崩れたゴウリキコアラへの攻撃しようとするのを阻止するため、槍部分で突く。

 「飛槍術」を警戒してか、ジェノサイドは攻撃を中止してゴウリキコアラを飛び越えて回避した。

 着地したところへ降り注ぐロシェリの光魔法、イリュージョンレイは魔力爪で防がれ、アリルが三本同時に放った矢は蹴りで弾かれた。

 そこへリズの土魔法、ランドファングでジェノサイドの足下の地面が巨大な口となって鋭い牙が襲い掛かるも、これも魔力爪と蹴りによって破壊されてしまう。

 この隙にアシュラカンガルーと並走して接近しようとしたら、俺達には目もくれずロシェリ達の方へ駆け出した。


「させるか!」


 速度を落としてアシュラカンガルーを視界に入れ、ハルバートを振りながらジェノサイドと位置を入れ替える。


「!?」


 視界の変化と高い察知能力で俺の存在に気づいて驚いたけど、もう遅い。

 槌部分を無防備な背中へ叩き込み、「闇属性攻撃」と「衝槌術」を合わせた黒い衝撃波を受けてジェノサイドは吹っ飛んでいった。

 地面を何度も跳ね、転がり、やがて地面にうつ伏せに倒れる。


「やった……のか?」


 今の台詞言った奴、それはやっていないフラグだから言うんじゃない。

 そしてジェノサイドが動きだしたから、そのフラグが成立しちゃったじゃないか。


「今のうちに畳みかけろ! ガトリングエクスプロージョン!」

「シャイニング、ブラスト!」

「スパイラルブリザード!」

「ガイアバンカー!」


 完全に起き上がる前に魔法を一斉に放つ。 

 ところが命中する前にジェノサイドは顔を上げ、嫌な音と共に放つ衝撃波でこっちの魔法を破壊した。


「またそれかっ!」

「ハッ! 学習しねぇ奴だな」


 「瞬動」で一番前まで出て、レギアが「魔法吸収」で音と衝撃波を吸収する。

 するとジェノサイドは今度は上を向き、口から上空へ向けていくつもの球体を放つ。

 それは放物線を描きながらこっちへ落ちてくる途中、空中で小さい球体に分裂して広範囲に散らばった。


「っ!? レギア!」

「おうよ!」


 「魔法放出」で迎撃して可能な限り相殺するも、範囲が広すぎる上に数が多くて全てを相殺できない。


「全員守れっ!」


 大声で叫んで間もなく、辺り一帯へ球体が降り注いだ。

 小さくとも威力は相当なもので、あっちこっちで爆音や悲鳴が響き渡り、土煙が辺りを覆う。

 俺はレギアが再度「魔法吸収」してくれたから助かったけど、後ろはどうなった?


「ロシェリ、アリル、リズ、無事か!」


 呼びかけにすぐ返事は無かったものの、少し間を置いて返事があった。


「ぶ、無事、だよ……」

「なんとか防御魔法が間に合ったわ」

「あっぶなかったぁ……」


 そうか、良かった。

 だけど筋肉従魔達は返事が無い。

 やがて土煙が晴れると、ケラケラ笑いながら体を揺らすジェノサイドの姿があった。


「ホークアイ」


 あいつを前に後方を見るわけにはいかないから、周囲を確認するためにホークアイを使う。

 そうして見えたのは、傷だらけのギガントアンキロへ駆け寄るロシェリ達、盾を傘のようにして自分とアシュラカンガルーとゴウリキコアラを守ったマキシマムガゼル、そして負傷者を連れて後方へ下がる土塗れの騎士団と冒険者と従士隊の混成部隊。

 ノワール伯父さんやライラさん、髭熊といった知り合いの無事は確認できたけど、今の攻撃で大勢が負傷していて混成部隊は混乱気味だ。


「エリア、ヒール」


 ホークアイの視界に「仁治癒魔法」で覚えた、広範囲の治癒魔法を使うロシェリの姿が映った。

 それによって筋肉従魔達だけでなく、範囲内にいる混成部隊の負傷者も傷が癒えていく。


「これは……」

「こんな広範囲への治癒魔法があるのか?」

「良かった、これなら助かるぞ」


 負傷者の傷が癒えたことで混成部隊が落ち着きを取り戻した。

 だけどジェノサイドはこれが気に入らず、あざ笑う表情を怒り心頭に変えて地団駄を踏み、こっちへ向けて駆け出した。


「こいっ!」


 ハルバートを構えて迎え撃とうとしたら、ジェノサイドは向きを変えた。

 向かう先にいるのはロシェリ。

 回復させたのが気に入らなかったのか!?

 慌てて後を追うけど、追いつけるかは微妙だ。


「ラ、ライトアロー!」

「くらいなさい!」

「ロックスパイク!」


 ロシェリ達が放つ迎撃の矢と魔法は避けられ、魔力爪で破壊され、傍にいたギガントアンキロが振るう棘付き尻尾は蹴りで弾かれてしまう。

 だけど視界には避けられたライトアローとジェノサイドがいるから、それを入れ替え。

 もう少しでロシェリを捉えようとしていた魔力爪は空を切り、入れ替えに使わなかったライトアローと矢が直撃。

 さらに入れ替えに使ったライトアローも遅れて命中した。

 勿論、これで倒せるとは思っていない。

 入れ替えによる位置移動のお陰で追いついたんだ、これでも喰らっておけ。


「レギア、少しの間だけ越せ!」

「おうよ!」


 レギアと決めた合図で僅かな間だけ「超越」を発動させる。

 直撃を受けて動きが止まったジェノサイド。

 その無防備な脇腹を狙って斧部分を振り抜き、「闇属性攻撃」と「爆斧術」で黒い爆発を発生させて上空高くへ吹き飛ばす。


「ぐっ!?」


 これだけ強化しての「超越」だから、僅かな間とはいえ体に一瞬痛みが走る。

 だけど止まれない、次はこれをくれてやる。


「レギア、吐け」

「吐け言うんじゃねぇっ!」


 文句を言いながらも、さっき吸収した小さな球体を「魔法放出」で放つ。

 空中にいるジェノサイドに避ける術は無く、体勢が悪いから魔力爪での迎撃もできずに直撃を受けた。

 まだだ、まだやらないと。


「ガトリングエクスプロージョン!」


 間髪入れず魔法を放つとロシェリ達だけでなく、混成部隊で魔法を使える人達も魔法を放つ。

 ここが千載一遇の好機。

 そんな気持ちで魔法を放ち続け、やがて魔力爪の解けたジェノサイドが地面に叩きつけられた。

 まだだ、あいつにはやり過ぎるくらいじゃないと倒せない。


「スパイラルフォール!」


 「水魔法」が進化した「激流魔法」により、膨大な量の水が渦巻く激流の滝となって上空からジェノサイドへ垂直落下で襲いかかる。

 普通の人間なら間違いなく死んでいる水量が一点集中で降り注ぐ様に、後方からの魔法は止まった。

 しばらく続いたスパイラルフォールが収まると、水浸しになっている中心に大きな水溜りができていて、そこに仰向けで微動だにしないジェノサイドの姿があった。


「やった……のか?」

「倒したのか、あの化け物を」


 だからそれはやっていないフラグだから言うなって。

 念のため「完全解析」で……まだだ。

 あいつの状態は中傷で、死亡になっていない。


「レギア、トドメを刺す! 越せ!」

「おうよ! 叩っ斬ってやれ!」


 レギアに「超越」を共有させ、体の痛みに耐えながら「瞬動」で接近し、首へ向けて斧部分を振り下ろす。

 これで切断しない限りは倒せない。

 そのつもりで振り下ろした刃は、閉じていた目を開いたジェノサイドの拳とぶつかり合って防がれ、水中へ沈めるだけに終わった。

 これ、ただの水溜りじゃなくて水の勢いで地面が窪んで、そこに水が溜まっていたのか。

 だったらこのまま「爆斧術」だ。

 「超越」で威力の増した爆発を起こしたらすぐに距離を取り、宙へ舞った水と土と小石が落ちてくる中、「超越」を解除してもらって様子を見守る。

 水が溜まっていたとはいえ、窪みっていう密閉空間の中で爆発を受けたんだ、仮に生きていたとしてもただじゃ済まないだろう。


「おい、どうだ。防がれたが、今の爆発でやったのか?」

「分からない。とにかく確認しないと」


 落下物が全て落ちたようだから、生死を確認するために近づこうとすると、少し手前の地面から白い光が飛び出してきた。


「なっ!?」


 咄嗟に避けようとしたものの間に合わず、憑依装備による防具が無い右太ももが抉り取られた。


「ぐあぁぁぁっっ!?」


 脚をやられたから立っていられず、倒れ込んで歯を食いしばって痛みを堪える。

 今のはなんだ?


「ジルグ君!」

「ロシェリ、治療を」

「はっ! う、うん!」


 ロシェリが駆け寄って来ようとすると、窪みからジェノサイドが飛び出してきて着地した。


「ひっ!?」


 ジェノサイドを前にしたロシェリの足が止まり、慌ててマキシマムガゼルがさっきの攻撃で破損した盾を構えて前に立つ。

 一方のジェノサイドは、俺を見てニヤリと笑う。


「あの野郎、地面を貫通させてお前を撃ちやがったぞ」


 はあっ!?

 なんだよそれ、言うほど簡単なことじゃないぞ。

 いったいどれだけの威力の不定形魔法を放ったんだよ。


「んなことより、早く立ちやがれ」

「無茶言うな、この足だぞ……」


 肉がえぐれて骨が見えてるんだぞ。

 正直、痛みを堪えるので精一杯だ。


「ちっ。おい大食い小娘、さっさと治せ!」

「は、はひっ! ディ、ディスタンス、ヒール!」


 近づけないロシェリは、距離が開いている相手を対象にした治癒魔法を使ってくれた。

 みるみる傷は治っていくけど、すぐには治らない。

 それを見たジェノサイドは気に食わない表情をすると、再び魔力爪を両手に纏う。

 拙い。治癒魔法を受けている今は動けないし、魔法を使うために魔力を集めたら治癒魔法に影響が出る。

 傷は……まだ治っていない。

 今攻撃されたら、俺にはどうしようもない。

 魔力爪を構えたジェノサイドが襲い掛かってこようとした直前、何かに気づいて急に後ろへ飛び退く。

 その直後に、数本の矢と魔法が飛び退く前にいた場所へ命中した。


「そうはさせないよ」

「私達を忘れないでよね」


 後方で杖を構えるリズと、矢をつがえた弓を引くアリル。

 そして俺の前に駆けてきて並び立つ筋肉従魔達。

 邪魔をされたジェノサイドは不機嫌そうにしている。

 確かに俺にはどうしようもない。

 だけど仲間達がどうにかしてくれるから、治るまでちょっと待ってろ。


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