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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
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進化した筋肉


 マッスルガゼルがマキシマムガゼルに進化した。

 よりムッキムキのガッチガチになったからロシェリは落ち込んだけど、なっちゃったものは仕方ない。

 三人でロシェリを慰めた後、依頼の選別を任せて俺と従魔達はギルド裏の修練場へ移動。

 そこでマキシマムガゼルと軽く手合せし、動きの確認をすることにした。


「とりあえず俺が相手するから、掛かって来い」


 ハルバートを構えてそう告げると、マキシマムガゼルは両拳をぶつけ合わせて鼻息を吐き、雄叫びを上げながら突っ込んできた。

 力強い走りで接近してきて、握りしめた拳を振り下ろしてきたから回避する。

 「拳術」スキルが無いとはいえ、あの体格だから一撃一撃が重くて強そうだ。

 だけど大振りが目立つし、予備動作で攻撃が予測しやすいから、避けるのはさほど難しくない。


「防御はどうだ?」


 軽めにハルバートを振り、槌部分で攻撃してみる。

 意外と素早く反応して片腕で防御すると、空いている方の手で反撃してきたから、後ろへ飛んでそれを回避した。

 マッスルガゼルの時は攻撃を受け止めたら、押し返さないと反撃できなかった。

 これは二足歩行になって、両腕が使えるようになった利点だな。

 しばらく手合わせを続け、マキシマムガゼル自身にも動きを確認させる。

 俺の方から見るに、まだ今の体に慣れていなくて上手く使いこなせていない気がする。

 向こうも違和感を覚えたのか、手合わせを終えると首を傾げ、両手を握ったり開いたりしている。


「まずは体に慣れさせるのが先決か」


 そこさえ解決できれば、手合わせをした感じだと大丈夫な気がする。

 いっそのこと両手が空いたから、武器や盾を持たせてみるのも面白いかな。


「お前、武器に興味あるか?」


 肩を回しているマキシマムガゼルに問いかけると、少し考える素振りを見せた後に頷いた。

 左手に盾を持って構えるようにしたり、右手で何かを振っているようにしているから、ベイルさんのようなスタイルを求めているのかな。

 なんにしても、この後でロシェリ達と相談してみよう。


「おい。ちょっとでいいから、そいつを斬らせろ」


 唐突だな、レギアめ。


「駄目に決まってるだろ。大体、ちょっと斬るってどれくらいだよ」

「腕……。いや、指でいい」

「やらせねえよ!」

「何も手足の指全部とは言わねえよ、足の指全部で勘弁してやる」

「一本たりとも斬らせるか」


 進化して早々、指が欠損ってシャレにならんわ!


「なんだよ、ツマラナイな。しゃあねえ、今回は勘弁してやるよ」


 心底つまらなさそうに呟くと、レギアは眠りだした。

 まったく、どうしてこうも物騒なんだこいつは。

 というか今回どころか、今後も斬らせねえよ!


「お待たせ。そっちはどう?」


 おっ、来たな。


「体が変わった違和感があるみたいだ。こればかりは、慣れてもらうしかないな」

「四足歩行が二足歩行になったし、体も大きくなったもんね」

「そういうこと。で、依頼は?」

「これ……」


 見せてくれた依頼はいつも利用している薬屋からで、内容は倉庫にある在庫品と備品の確認と整理と倉庫内の掃除。

 報酬は金銭とは別に薬の提供と書いてあって、低級の体力回復用ポーション五本と他二本とある。

 金額が少なめだから、商品の現物支給で補うってことか。

 こういうのは物によりけりだけど、低級とはいえポーションなら有りだ。他二本が何なのか、少し気にはなるけど。


「分かった。じゃあ行くか」


 武器は必要無さそうだから次元収納へ入れておき、早速薬屋へ出発。

 いつもマッスルガゼルの背中に乗っていたロシェリも、進化して二足歩行になったから自分で歩くかと思いきや、マキシマムガゼルが持ち上げて右肩に乗せた。

 そうだよな。お前なら、それくらい楽にできるよな。


「いい……眺め」


 ロシェリもご満悦みたいだから、まあいいか。

 そう自分を納得させ、改めて薬屋へ出発。

 道中でマキシマムガゼルに武器を持たせるかを聞いてみると、金に余裕があるから、明日にでもバロン工房へ相談に行ってみようということになった。

 つまり、武器を持たせるのに賛成ということだ。


「こいつ自身は、盾と片手で扱える武器を使うつもりみたいだぞ」

「だったらやっぱり斧かしら? ミノタウロスのライバルって話だし、合いそうじゃない」

「力が強そうだから、メイスもいいんじゃないかな?」

「鎖付き……鉄球?」


 それって確か、モーニングスターって武器だよな?

 体格と力に優れたマキシマムガゼルなら、片腕でも扱えそうだけど……。

 うん、想像してみたら似合う気がする。

 だけど、盾と一緒に使うものかと聞かれると首を傾げてしまう。


「その辺りは明日、工房に行ってからにしよう。まずは今日の仕事をしっかりこなそう」


 ちょうど薬屋が見えてきたから話を切り上げ、入店する。

 店番をしていた店主の婆さんに依頼を受けた旨を伝えると、リリーと呼んだ十歳くらいの少女を伴って店の裏の倉庫へ案内された。


「ここだよ。あたしゃ店番があるから、手順はこの孫娘に聞きな」


 婆さんに紹介され、お願いしますとリリーが頭を下げた。

 というか、その子は孫なんだ。


「頑張りましょう、お兄さん、お姉さん、……魔物、さん?」


 店先で待機させずに連れて来た従魔達を前に、あなた達もやるのと言いたげな表情だ。

 気持ちは分かるけど、本人達は至って真面目にやる気満々だ。

 そんでもって、実に役に立っている。

 どうせ掃除するからと倉庫の中の物を外へ運ぶ際、中へ入れるコンゴウカンガルーとビルドコアラは作業を手伝ってくれるし、外へ出した物はマキシマムガゼルが軽々と置き場へ運んでいく。そして外に置いた物は、運搬に加われないメガトンアルマジロが見張りをする。

 その様子にリリー、大興奮。


「魔物さん、凄いです! お祖父ちゃんがぎっくり腰になっちゃった荷物を、ああも軽々と!」


 今回の依頼を出したのも、普段倉庫の管理をしているリリーのお祖父さんであり、あの婆さんの夫でもある爺さんがぎっくり腰になったからだそうだ。

 リリーの両親である娘夫婦は、いくつかの村へ薬の配達に行っていてしばらく不在のため、依頼を出したんだと教えてくれた。


「だけど、この時期に倉庫の掃除なんて、遅すぎない?」

「お薬屋さんの冬前は戦場です! 入手できなくなる前に薬草を確保して、片っ端から保存処理をして、お薬を作ってと大変なんです!  そうなると倉庫もいっぱいになって、お掃除どころじゃないんです!」


 つまり、冬になって薬草が採れなくなる前に大量に仕入れ、それを保存処理したり薬を作ったりして倉庫がいっぱいになる。

 そうなると掃除が大変だから、薬草の入荷がほとんど無くて在庫品も減っている今が、薬屋にとっての掃除時という訳か。


「確認、作業……も?」

「そっちはお掃除のついでです!」


 キッパリ言い切ったよ、この子。

 まあいいか。理由はなんであれ、ちゃんと報酬が支払われれば。

 そのためにも、こっちもしっかり仕事しますか。


「ところで報酬で貰える薬、体力回復用ポーション以外が何なのか、リリーちゃんは知ってるかい?」

「知ってます!」


 おっ、知ってるのか。なんだろう。


「前にお祖母ちゃんが泥棒さんを退治した、物凄い匂いのする香水です! 泥棒さんが聞いたことの無い悲鳴を上げて凄い事になっていたので、とてもよく効きますよ!」


 あんのババァ、報酬になんちゅうもんを付けてんだよ!

 ロシェリ達もさすがにそれは、って言いたげな表情をしている。

 せっかく、しっかり仕事をしようと気を引き締めたのに、今ので一気にやる気が失せた。

 だからって依頼放棄するわけにはいかないから、とりあえず作業を続ける。

 やがて作業が終了したら婆さんへ報告。確認してもらってサインを貰ったら、報酬はギルドに預けてあると言われた。


「その報酬が、どうしてあの劇薬的な香水なんだよ!」

「ひゃっひゃっひゃっ。大して売れないから、在庫処分だよ」


 在庫は在庫でも不良在庫だろ!

 というか、ちょっとは売れたのかアレ!


「もの凄く効くのに、どうして売れないんですかね?」

「リリーちゃん。君は大物になるかもね」


 首を傾げるリリーへリズが呟いた言葉に、俺達は静かに同意して薬屋を後にした。

 例の香水? 次元収納へ入れて死蔵だ、死蔵! 怖くて使えるか、あんな物!

 なお、帰ったらマキシマムガゼルを見た一部の従士隊員達が、見事な筋肉だと騒いだのは言うまでもない。

 その中にシュヴァルツ祖父ちゃんとゴーグ従兄さんが混じっていたのは、軽くスルーしておいた。

 離れた場所で二人に呆れている奥さん一同と従妹コンビよ、なんかごめんなさい。




 ****




 翌日。バロン工房でマキシマムガゼルの件を相談すると、ロイドさんが作った盾をいくつか見せてもらえることになった。

 運ぶのが大変だからと、わざわざ台車に乗せて運んできた大きな盾もあるけど、マキシマムガゼルはそれを片手で持ち上げる。

 その姿にバロンさんを含め、見物している職人達が感心している。


「大した腕力だな。そいつは巨人族用に作った物だってのに」


 筋肉ムッキムキのガッチガチだからな。

 とはいえ、普通の人なら両手を使っても持ち上げられなさそうな、大きくて重そうな盾を片手で扱うのは大したもんだ。


「やっぱり斬り甲斐のありそうな奴だな。あの盾もろとも斬ってやりたいぜ」

「やめろ」


 こいつが憑依すればできそうだから怖い。勿論、やらないぞ。

 順々に用意された盾を全て扱ってみて、最終的に巨人族用に作ったっていう、縦長で鈍い銀色をした大きくて重そうな盾が気に入ったようだ。

 どれどれ、どんな盾だ?




 メタルステゴの盾 高品質 土属性

 製作者:ロイド

 素材:メタルステゴの背びれ メタルスコーピオンの外殻

 スキル:衝撃緩和LV6【固定】

     火耐性LV4【固定】

     風耐性LV4【固定】

     腕力向上LV3【固定】

 状態:良好


 岩をも粉砕するメタルステゴの背びれを使った盾

 メタルスコーピオンの外殻も使用されているため、高い耐久性を誇る

 相当な重さのため、振り回せばかなりの威力になる




 重い点を除けば、結構良い盾みたいだ。

 振り回す使い方も、あいつは片手で扱えているんだからいけそうだな。


「これが、いい……の?」


 主人であるロシェリの問い掛けに、マキシマムガゼルは肯定するように何度も頷く。

 値段を聞くと、特別サービスで金貨二枚と言われた。

 なんでも、この店に通っていた巨人族の冒険者のために作ったものの、渡す前に怪我で引退したため不良在庫化して困っていたそうだ。

 昨日の薬屋の婆さんから貰った香水といい、なんか不良在庫に好まれてるな。

 だけどこっちは物が良いから、絶対に買いだ。


「どう、思う?」

「俺から見れば、絶対に買いだと思う」


 説明を受けても不安が残っていたロシェリに問われ、「完全解析」を使ったことを暗に伝えながら勧める。

 それもあってかロシェリは購入を決め、盾の代金を支払った。

 続いて武器も見せてくれたけど、予想通り斧やメイスといった物が中心だった。そして何故か、モーニングスターまである。


「これは……」

「小僧の使うハルバートって武器を作った奴が、何を思ったのか作った物だ。一人立ちを許した時に持っていけって言ったのに、忘れていきやがったんだよ」


 これ、あのドワーフが作ったのか。

 でもこれって、忘れていったっていうより、邪魔になりそうだから置いていったんじゃないか?

 長いし鎖が煩そうだし棘だらけだし、何より重そうだし。


「そっちの棘付き鉄球に憑依するのも、面白そうだな」

「面白い……か?」


 こいつのセンスがイマイチ分からない。そもそも、あんな物を使える気がしない。

 マキシマムガゼルも手には取ったものの、イマイチなようですぐに戻している。

 他にも色々と試した結果、マキシマムガゼルが気に入ったのは。


「それ、なの……?」

「それを選ぶの?」

「それなんだ……」

「それか……」


 荒い鼻息を吐きながら、これがいいと俺達に見せてくれたのは、棘付きの大きなメイスだった。

 いや、メイスというよりも鉄製の棍棒だな。

 握る部分より先が徐々に太くなっていて、真ん中から先端にかけて棘だらけになっている。

 単なる殴打じゃなくて、棘が刺さる殴打を目的とした武器なのかな。


「そいつもあいつが作った物だ。メイスの新たな形を模索すると言って、そんな妙な物を作りやがった。デカくて重い点を指摘したら、強度と威力を追求した結果だと笑っていたから、拳骨をお見舞いしてやったぜ」


 そりゃなあ。形状は目を瞑るとしても、あんな大きくて重そうな物、巨人族でも扱えるかどうか。

 むしろ、それを片手で扱えるマキシマムガゼルが凄いな。

 というかあのドワーフ、本当に変わった武器が好きなんだな。




 アイアンゴーレムの棘付き鉄棍棒 中品質 無属性

 製作者:フレイド

 素材:アイアンゴーレムの破片

 スキル:不欠損LV3【固定】

     魔法耐性LV2【固定】

 状態:良好


 相当量のアイアンゴーレムの破片を使用

 密度が高いため、とても耐久性が高い

 重いのと、棘付きの見た目がイマイチなのが欠点




 「完全解析」にすら欠点として指摘されてるよ、この見た目。

 だけどマキシマムガゼルは、えらく気に入っているようだ。


「ちなみに、あれの値段は?」

「どうせあれも、あの馬鹿が忘れていった物だ。銀板一枚で売ってやるよ」


 だから、持っていくのは邪魔だから置いていったんじゃないか?


「本当に、それで……いいの?」


 再度確認したロシェリに、上機嫌なマキシマムガゼルが何度も頷く。

 見た目のせいかあまり乗り気でないロシェリだけど、暑苦しくてむさ苦しいマキシマムガゼルの圧に屈して、肩を落としながら代金を支払った。

 落ち込む主人と上機嫌な従魔。主従関係大丈夫かと思ったのは、俺だけではないはずだ。

 そのマキシマムガゼルは、他の従魔達に武器と盾を自慢している。

 やめろ、コンゴウカンガルーとビルドコアラ。俺達も手が使えるから武器が欲しいって訴える、その目はやめろ。

 そもそもお前ら、「拳術」とか「連打」とか「爪撃」とか、素手の時に発動するスキルがあるから武器はいらないだろ。


「武器を持ったら、拳で殴れなくなるぞ」


 そう伝えたら、言われてみればって反応が返ってきた。

 拳打用のガントレットがあるのは、黙っていよう。


「じゃあ、お邪魔しました」

「おう。壊れる前に点検に来いよ」


 去り際にそう言ったバロンさんに分かっていると返し、その足で冒険者ギルドへ。

 ギルドには入らず裏手の訓練場へ向かい、体と武器の慣らしを兼ねてマキシマムガゼルの訓練をする。

 まずは個人練習という形で訓練をしてもらっているんだけど、周囲から視線が集まっている。


「なんだ、あの大柄でムッキムキな魔物は」

「あいつらがいるってことは、あれってまさかマッスルガゼルの上位種か!?」

「すごく……大きいです……」

「大きな盾と……鉄製の棍棒? どっちも重そうなのに、平然と振りまわしてるわね」

「ふんぬぁー! 負けてられるか、俺もマッスルマッスル!」


 なんか変なのが一人いるけど無視しておこう。


「動きがぎこちないね」


 リズの言う通り、武器を持っていたり構えたりする姿はサマになっているんだけど、動きがぎこちない。


「春までに……なんとか、してほしい……」

「そうね。暖かくなって魔物が動き出す頃までには、マシになってくれないとね」


 そうだな。そのくらいが目処かな。

 暖かくなれば魔物も動物も冬眠から覚めて、討伐依頼や魔物の素材の採取依頼も増える。

 その頃までにぎこちなさが消えていれば、戦闘もなんとかなるだろう。


「なら、特訓だな」


 次元収納からハルバートを取り出し、素振りを繰り返すマキシマムガゼルに近づく。


「一旦止めろ。今度は俺の相手をしながらだ」


 素振りを止めたマキシマムガゼルの前に立ち、これからする特訓の内容を伝える。


 自分は回避に専念するから、とにかく攻撃してこい

 たまに反撃をするから、それは盾で防げ

 安全対策にハードボディを使っておくから、遠慮は無用


 ざっくり言えばこんな感じだ。

 斬らないのかとレギアが反応したけど、斬らないと断じたらツマラナイと呟き、すぐにふて寝を始めた。

 一方のマキシマムガゼルは力強く頷くと、盾を前に出して鉄棍棒を少し引いて構える。

 構えはそれっぽくてサマになっているんだよな、構えは。


「ハードボディ!」


 これで安全対策は大丈夫っと。


「さあ来い!」


 こっちも構えて合図を出すと、大きく鳴き声を上げて攻撃を繰り出してきた。

 あらゆる角度から鉄棍棒が振るわれ、それを「動体視力」スキルで見切って避け続ける。

 時折仕掛ける軽め反撃は、全てを防げているわけじゃないけど、なんとか盾で防ごうとして何回かに一回は防げている。

 しかしこうして回避だけに専念していると、相手の動作の特徴や武器の使い方、間合いを見抜きやすくて反撃できそうな隙を見つけやすい。

 攻撃や防御のことを考えない分、回避のための観察に集中できているからか?

 この前の従士隊との訓練での、色んな武器と直に手合せるする訓練も、こうしたやり方の方が学びやすかったかもしれない。

 やっぱりあの二人には、同じ体を動かすにしても内容を考えてもらいたいな。


「その調子でもっと打ち込んでこい!」


 威勢の良い鳴き声で返事をしたマキシマムガゼルは、気合いを入れたのかより激しく攻撃してくる。

 だけど、そのせいで大振りになってる。


「大振りになってるぞ。こんなの、ロシェリでも避けられるぞ!」


 注意したら鳴き声で返し、ぎこちないながらも修正しようとしている。向上心のあることでよろしい。

 そこのロシェリ、無理無理無理って何度も首を横に振るな。

 俺にとっても思わぬ訓練になった手合せは、ロシェリが空腹を訴えて昼食にするまで続いた。




 ****




 うん、だいぶこの体に馴染んだね。

 やっぱり適度に憑依しておかないと、慣れるまでの時間が掛かるようになるのかな。

 さてと。いつまでもこんな狭い部屋にいるのはツマラナイから外に出たいけど、どうやって出よう。

 今の僕なら、窓の格子を壊すのも扉を壊すのも簡単にできる。

 どっちにしようかな。


「おい、まだ起きているのか。さっさと寝ろ」


 ああもう、煩いなあ。たまに来る監視の人。

 扉の方を壊して、この人を殺しちゃおうかな。


「明日にはここを出て座学なんだ、大人しくしてろ!」


 へえ。この体の人、明日にはここを出られるのか。

 だったら明日までのんびりして、調子を完璧にしておこう。

 そしてここを出られたら、久々の大暴れを堪能するんだ!

 はぁ、楽しみだなぁ。明日が待ち遠しいなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 厳密にはモーニングスターは棘の生えた鉄魂を指す言葉で、先端と持ち手が鎖でつながっているメースはフレイルと呼ばれる武器です。
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