閑話 ジルグと関わって
どうしてこうなった。
なんで俺が拘束されて、ガルア基地へ連れて来られなくちゃならないんだ。
悪いのは全部あの出来損ないで、俺は何も悪くないってのに。
「あれ? あいつって俺らと一緒に研修に来た奴じゃね? なんで拘束されてんだ?」
「分かんねえけど、外で何かやらかしたんだろ」
「拘束されるって何やったんだ、あいつ」
「さあな。でもあいつはほら、落ちぶれバレルだからな」
「そういやそうだな。最近はちょっとマシになったけど、少し前までは酷い槍捌きだったからな」
一緒に王都から来た連中が、擦れ違いざまにわざわざ聞こえるように喋っている。
あいつら、好き勝手言いやがって。
そもそも、なんであいつらが治安維持隊や王都防衛隊に配属されて、俺が内勤で雑用ばかりの庶務課に配属されているんだ。
おかしいだろ! 俺は名門グレイズ家の跡取りで、あいつらは食い扶持稼ぎのために騎士団に入った、貧乏貴族の三男や四男や平民だというのに。
「ここで座って待ってろ」
乱暴に取調室へ押し込んだ奴らは、また暴れられたら困ると言って空間収納袋と槍を奪ったまま扉を閉め、外から鍵を掛けやがった。
「ちくしょう! 俺は悪くない、これは不当な扱いだ!」
「煩いぞ!」
煩いのはお前だ、こんちくしょう。
せめて水くらい持ってきやがれってんだ。
帰ったら父上に頼んで、ここの奴らを全員クビにしてやろうか。
イライラしながら椅子に座り、机の上に足を乗せて待つ。
この俺をいつまで待たせるんだ。さっさと調べて無実の俺を解放しろ。
しばらく待っていると、取調官が二人の騎士団員と書記を連れてやって来た。
取調官は俺よりも階級が上だから、机に乗せていた足は一応下ろし、姿勢を正しておく。
「バレル・グレイズ。これより取り調べを行う。質問には正直に答えるように」
そう言った取調官は正面に座ると、「看破」スキルの備わった真実のベルを机に置く。
騎士団員は俺の後ろに立ち、書記は別の机に座る。
外から鍵を掛けられると、聴取は始まった。
「まず、お前は口論していた相手、冒険者であり腹違いの弟だった元ジルグ・グレイズ。現ジルグ・アトロシアスに対して暴行未遂を働き、反撃されたことに逆上して公衆の面前で槍を手にした。これは間違いないか」
「……ああ」
くそっ。真実のベルがあるから、嘘は言えない。
下手に嘘の証言をしたらどうなるか、騎士団員の俺はよく知っている。
「では次に口論の内容だが、お前がジルグ・アトロシアスに対し、暴言を吐いたのが切っ掛けで間違いないか」
はあ? 暴言だと?
「暴言なんて言ってない」
「ならば、なんと言ったんだ」
「出来損ないを出来損ないと言っただけだ」
これは紛れもない真実だ。嘘じゃない。
その証拠に真実のベルは鳴らない。
「出来損ないとは、ジルグ・アトロシアスの事か?」
「そうだ」
他に誰がいる。
「それが暴言でなく、なんだというんだ」
「あいつが出来損ないだから、そう呼んだんだ。そこのベルも鳴ってないだろ」
つまり、あいつが出来損ないなのは真実だということだ。
「勘違いするな。真実のベルは、知っている真実を偽った時に反応する物。つまりはお前が彼をそう思い込んでいるのなら、お前の中でそれは真実だということであって、彼が出来損ないの証という訳ではない」
はっ? なんだよそりゃ、聞いたことねえぞ。
「お前が彼をどう思うかは勝手だが、それを口にすれば暴言以外の何物でもない」
「あいつが出来損ないだから、そう言ったんだ。それのどこが悪い!」
「どうやらお前は、言って良い事と悪い事の区別もつかないようだな」
本当の事を言っているのに、それのどこが悪いんだ。
あいつが家にいた頃は散々言っていたし、父上も母上達も弟達も言っていた。だから悪い事じゃない!
「とりあえず、切っ掛けがお前なのは確かだとして……。その後、口論に発展。お前は殴りかかった」
「あいつが俺を馬鹿にしたからだ!」
「彼も言い返した際、挑発したような言い方になったと証言していた。だが、だからといって手を出して良い理由にはならない」
「反抗的な態度を取ったから、教育しようとしたんだ! あいつが家にいた頃は、いつもやっていたことだ!」
身の程知らずには、身の程を知らしめておかないとならない。
どっちが上なのかしっかり教育するためには、こちらが格上だということを体へ叩き込む必要がある。
だからこそ、優れている力を振るおうとしたんだ。
すると取調官だけでなく、俺の後ろにいる騎士団員も書記も急に雰囲気が変わった。
どうした、俺の素晴らしい言い分に感動でもしているのか?
「一つ確認する。ジルグ・アトロシアスがグレイズ家にいた頃、それは頻繁に行っていたのか?」
「ああ。ああ、使用人への教育を庇った時とか、反抗的な態度を取った時とかにな」
「なるほど。つまりグレイズ家の内部では家庭内暴力が常日頃から行われていた、いや今も使用人に対して行われているかもしれないのだな」
はっ? 家庭内暴力……しまった!
あくまで教育ってことにして、内容は言わないよう父上に言われていたんだった。
「いや、違う。今のは言葉の綾で」
「真実のベルは鳴らなかったぞ」
ぐっ! そうだ、こいつがあるから誤魔化しようが無い。
「どうやら、聞かなければならないことが増えたようだな」
姿勢を正す取調官の強気な表情を前に、俺は何かが崩れ出すような気がした。
その後も延々と取り調べは続き、さっきの出来損ないとの出来事だけでなく実家でのことまで聞かれた。
なんとか誤魔化そうとしても、取調官の誘導尋問と口の巧さの前に墓穴を掘り、俺達グレイズ家が出来損ないや使用人に対し、日常的に暴言と暴力をしていたことが明らかになってしまった。
「グレイズ家の内情についての件は、この地域の担当をしているホルス中隊長へ報告し、本部で対応してもらう。これは立派な暴行であり、虐待にも当たるからな」
「う、ぐぅ……」
「それとお前が犯した暴行未遂及び、勤務中又は非常時でもないのに公道で刃物を手にした件の処分については、これから当基地の大隊長に判断を仰ぐ」
ちっくしょう!
だが落ち着け。実家の内情についてはどうしようもないが、俺自身が出来損ないへやったことは大したことがないはず。
暴行は出来損ないに防がれたし、刃物も手にしただけでそれを持って暴れた訳じゃない。つまり、どちらも未遂に終わっている。
飲み屋で客と店員がイザコザを起こして同様の案件が発生した時は、双方を一晩牢屋へぶち込んで頭を冷やさせ、翌朝に厳重注意をして解放していた。
おそらくはそれと同じことになり、今夜は牢屋で過ごすことになるだろう。
「それと、未遂だからと処分を甘く考えるなよ」
「はっ?」
「国の治安を守り、民の安全を守るべき騎士団員が、その民へ向けて暴力を働こうとし、傷害又は殺害しようとしたんだ。未遂で終わったとはいえ、騎士団員にあるまじき行いを厳しく罰しなければ、騎士団としての示しがつかん」
はぁっ!? なんだよそれ、どうして騎士団員だからって厳しく扱われなきゃならないんだよ!
「だったら、俺を投げ飛ばして仲間に拘束させた出来損ないは!」
「先に手を出したのはお前で、拘束したのはお前が槍を手にしたからだ。よって、彼とその仲間には正当防衛が認められる。口論については、反省していたとはいえ注意喚起くらいはするだろうがな」
俺が厳しい罰を受けるのに、あの出来損ないは注意喚起程度だと?
ふざけるな。注意喚起なんて、罰則の中で最も軽いものじゃないか。
せめて鞭打ち百回くらいはしないと、俺の気は治まらないぞ。
「お前には一先ず懲罰房に入ってもらう。処分は決まり次第、追って通達する。連れて行け!」
『はっ!』
取調官の命令を受けた二人の団員が俺の腕を左右から掴んで拘束し、扉の鍵を開けさせて連れ出す。
「おいやめろ、放せ!」
何を言っても、どれだけ抵抗しても拘束は解けない。
この基地の団員達や、王都から共に研修に来た同僚達の前を引き摺られるように連行され、そのまま懲罰房の中へ放り込まれた。
連れて来た二人の団員は閂と鍵を掛けると引き上げ、どれだけ扉を叩いて出せと叫んでも無反応だ。
「くそっ! 俺をこんな所に閉じ込めやがって!」
懲罰房の中はトイレとベッド、小さな机と椅子があるだけ。
窓には頑丈な鉄格子が嵌められていて、同じく頑丈な扉には中を確認するための小さな窓と、食事を通すための小さな戸があるだけ。戸にも外から閂と鍵が掛かっていて、内側からは空けることが出来ない。
仮に空いたとしても、腕が一本通る程度だから脱出は無理だ。
「ちっくしょう! 何故だ、何故こうなった!」
五年くらい前から何かが狂いだした。
俺よりずっと劣っていた周囲に徐々に差を詰められ、気づけば追いつき追い抜かれた。
やがて差が開きだし、俺に転がされていた連中が俺を片手間のように転がし、見下して踏み台にして除け者にした。
媚びていた連中も、いつの間にか掌を返して俺の下を離れた。
いつも褒めていた親父からは叱責され、俺の物になるはずだった女もいなくなって、遂にはあの出来損ないにまで恥を掻かされた。
「俺が何をしたってんだ! いつも通りにやっていた、それだけだってのによ!」
叫んでも誰も答えない。虚しい気分のまま、俺はフラフラとベッドに倒れ込んだ。
その日の夜に、俺への処分が扉越しに通達された。
・研修期間中は懲罰房で謹慎。研修は不参加扱い
・始末書の提出
・厳重注意
・研修期間中の給料は三割減
・自由時間である研修最終日に、騎士団心得の座学講習を受講
「当件は本部にも連絡する。向こうでも処分が下るだろうから、覚悟しておけ」
「はぁっ!? なんでだよ!」
「お前は研修中はこちらの監督下にあるが、所属は本部だ。騎士団にあるまじき行為をした以上は、正式な所属先で改めて処分を下すのは当然だ」
なんだよそれ!
いいじゃねえか、こっちでの処分だけで済ませば。
どうして、わざわざ本部へ連絡するんだよ。どうして、向こうでも処分を受けなきゃならねえんだよ!
「通達は以上だ。最終日まで、そこで反省しているんだな」
「待て、待てよぉっ!」
呼びかけに応えることなく、通達をした騎士団員は去って行く。
どうして、どうしてこうなったんだよ……。
****
夕食とお風呂を済ませ、寝間着姿でロシェリちゃんとアリルさんとベッドの上で雑談を交わす。
ジルグ君は明日の訓練について打ち合わせするため、ノワールさんとシュヴァルツさんの所へ行っていて不在。
だから、部屋には僕達三人しかいない。
色々と話しているうちに、話題は今日遭遇したジルグ君の兄のことに移っていた。
「しっかし胸糞悪かったわね、ジルグの腹違いの兄って奴は」
「同感だよ。ああも人を出来損ないって連呼するなんて、人としてどうかと思うね」
何様のつもりなのかな、あいつは。
しかも縁を切った上に腹違いとはいえ、自分の弟に対してさ。
「ジルグ君……馬鹿ニスル輩……。殲滅、シタカッタ……」
……うん? なんか大人しいロシェリさんからは、想像できない口調が聞こえたんだけど?
しかもなんか闇魔法でも纏っているかのように、寒気を覚えるくらい怖い空気を発してるし。
えっ、なにこれ。いくらあいつがムカつくとはいえ、何でロシェリさんの纏う空気が変わってるの?
「ちょっとロシェリ、そっちは止めなさい」
「?」
アリルさんが声を掛けたら元に戻ったのはいいんだけど、さっきのは無自覚だったのかい?
本人は枕を抱きながら首を傾げてるし。
「一体どういう親にどう育てられたら、ああいうのが育つのかしら」
「まあ、いいじゃないか。ジルグ君が同じように育ってなくて」
「もしも……そうなら。私達、こうして……ない……」
だろうなあ。
出会った頃の僕なんか、軽く無視されそう。
今の彼だからこそ、僕に手を伸ばしてくれた。
あの醜態を晒した兄みたいに育っていたら、僕を差別していた連中と同じになっていただろうね。
「私……餓死……してた、かも……」
「集落を追い出されたことに絶望して、どうなっていたことやら」
二人がジルグ君と一緒にいる経緯は、ある程度聞いている。
これも彼が今の彼だからこそ、救いの手を差し伸べたと言えるね。
あの人のようなジルグ君だったら、見向きもしないと思う。
「ていうかさ、ジルグはああいう家族と暮らしてたのよね。成人して追い出されるまで」
「うん、そう聞いているよ」
「なんていうかさ、これまでは話に聞いていただけだから漠然としたイメージだったのが、急に具体的に想像できるようになったわ。あいつが元実家で暮らしていた光景が」
分かる。僕もこんな感じかな、だった想像がこんな風だったんだねって思えるようになったから。
わざと無抵抗だった点に関しては嘘だって、帰り道で聞かされた。
だけど、さっきみたいに暴言を浴びて、今回は防いだけど暴力も受けていたのは本当なんだろうね。
「許スマジ……。グレイズ家、殲滅、撃滅……木端微塵」
「はいロシェリ、落ち着きなさい。ほら、尻尾触っていいから」
「ほわぁ……。もふ、もふ……」
差し出されたアリルさんの犬尻尾を、まるで宝物を愛でるみたいに撫でるロシェリさん。
一瞬前の冷たくて黒い感じが霧散して、ほわほわした感じでアリルさんの尻尾を撫でている。
少し羨ましい。そして可愛い、妹にしたい。
「んっ……。それにしてもさ、なんとなくだけどジルグがスキルの入れ替えに躊躇しない理由が、分かったような気がするわ」
ちょっと艶めかしい声が漏れたのは、尻尾を触られているからかな?
「どういうこと?」
「リズだって、ああいう奴から暴言を浴びて暴力を受けていたら、スキルを入れ替えていいやって思わない?」
「思う」
もしも僕が同じことをできるのなら、祖父母以外の集落の連中にやっていただろうね。
まあ、とっくにジルグ君がやってくれたし、風の噂では仕事が上手くいかなくて苦労しているって聞いてるから、いい気味だよ。
「ちゃんと、見境も、つけてる……」
「そこは被害者側だったからじゃない? それに元実家の使用人や護衛の人達に支えられたって話だし、そこら辺の教育もしっかりやってもらったんでしょ」
なんかもう、その使用人や護衛の人達が彼の育ての親でいいと思う。
でも……うぅん。
「どうか……した?」
「いやさ、もしもスキルの女神様とやらが先天的スキルを間違えていなかったら、どうなっていたのかなって」
「「あぁ~……」」
ジルグ君曰くポンコツ女神が、与える先天的スキルを間違えたことが、今の状況に繋がる切っ掛けだった。
もしも最初から「完全解析」を受け取っていたら。
もしも間違いに気づかずにいたら。
所詮はたらればだけど、どちらにしても今の状況には辿り着かないと思う。
最初から「完全解析」を与えられていたら、元実家を追い出されることは無い。
間違いに気づかれず「入れ替え」のみだったら、今みたいに強くなっていないだろうから、どこかの戦いで命を落としていたかもしれない。
「人生は偶然の積み重ねって、お祖母ちゃんに教わったのを思い出したよ」
「偶然の積み重ね、ね……。確かにその通りね」
「違う。これは、運命。私と、ジルグ君……出会う運命、だった……」
「ロシェリさん、その根拠は?」
「女の……勘!」
わあい、否定できるのに同じ女として否定できない根拠が飛び出たよ。
「でもそれだと、ロシェリが虐められていたこととか、私がタブーエルフになって集落を追い出されたこととか、リズが白毛で生まれて迫害された上に、味方だった祖父母を失ったことも運命ってことになるわよ。でなかったら、出会わなかったかもしれないから」
それも一理あるね。
あっ、ロシェリさんが落ち込んで、精神安定を求めるようにアリルさんの尻尾を激しくモフモフしている。
「んあっ……。ちょっ、もう少し加減しなさい」
モフモフに連動してアリルさんの反応が艶めかしくなっていく。
よかった、僕の尻尾はモフモフ系じゃなくて。
「うぅぅぅ~」
「分かった、分かったわよ。私が余計な事を言いました、悪うございました!」
尻尾へのモフモフ攻撃に屈したアリルさんが、発言に対する謝罪をするとモフモフ攻撃は緩まった。
刺激が治まったアリルさんは俯いて、ゆっくりと息を整えている。
表情の艶めかしさと相まって、なんだか事後みたいに見えるよ。
「大丈夫? アリルさん」
「はぁ……はぁ……。尻尾って、結構頭にビリビリ来るのよね」
生憎、僕の尻尾はロシェリさん好みのモフモフ系じゃなくてフサフサ系だから、触りたいって言われたことはない。
でも尻尾の付け根辺りが敏感だから、アリルさんの言っている感覚は分かる。
そこ以外ならちょっとくすぐったいくらいでしかないんだけど、どうしても付け根辺りは背筋を通過して頭に変な感じがビリビリ来るんだよね。
お風呂でも、うっかり強く刺激しないように優しく洗うくらいだし。
「初めて、触らせてもらった時……これ以上、だった」
「伝え忘れて不意打ちで刺激が来たから、変な声を出しちゃったわ」
恥ずかしそうにしているから、たぶんジルグ君にも変な声とやらを聞かれたのかな?
「もう、やめてよね。毛並みも荒れるから、ほどほどにしてね」
「……断る。モフモフは、偉大で、至高で、素晴らしい」
「いや、断られても困、んはあぁぁぁぁっ!」
激しい尻尾モフモフ再び。
真っ赤になって体が細かく何度も仰け反っている様子は、見ていて妙な気分になってくる。
これ、ジルグ君が見たらどんな反応をするだろうと思っていたら、扉が勢いよく開いた。
「「おじゃましま~す」」
噂をすればなんとやらでジルグ君が来たのかと思ったら、可愛らしい寝間着姿のユイちゃんとルウちゃんだった。
二人はたまに突撃してきて、僕達と一緒に寝ているんだよね。
ベッドが狭くなるし、乗っかられたり引っ付かれたりで落ち着かないって言うジルグ君は、二人の突撃を密かに襲撃とか襲来って言っている。
「あれ? ジルグお従兄様はいないのですか?」
「あ~。アリルお従姉様とロシェリお従姉様、遊んでいる。楽しそ~」
「いや、これは遊んでるんじゃ、はうぅぅっ!」
否定しようとしても、ロシェリさんからの絶え間ないモフモフ攻撃による刺激が上回って、仰け反りそうになりながら悶えてしまっている。
これはユイちゃんとルウちゃんの教育に良くなさそうだから、止めた方がいいかな。
「「楽しそう!」」
あっ、そういう反応をするんだね。
別に遊んでいる訳じゃ……ないのかな?
とにかく楽しそうだと判断した二人が加わり、モフモフ攻撃が激しくなってアリルさんが凄い事になってる。
らめえぇぇぇっ、とか言って細かく痙攣しているけど、これ色々と大丈夫なのかな。
「リズメルお従姉様!」
「お従姉様の尻尾も~、触ると気持ちいいの~?」
うん? なんか狙いをこっちにも定められた?
逃げるべき? これは逃げるべきなの?
「「それ~」」
あっ、ちょっ、止めて。
こっちにも迫らないで、ていうか君達すばしっこいから僕じゃ避けられ……付け根はらめえぇぇぇっ~。
この後、戻ってきたジルグ君に助けてもらい、調子に乗り過ぎたロシェリさん達は正座で軽く説教を受けることになった。
助かったけど、蕩けた僕とアリルさんの表情にジルグ君は少し気まずそうだった。




