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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
56/116

入れ替えたのに追い込まれる


 一斉に迫り来る無数の武器。

 前後左右に加えて上からも迫っているから逃げ道は無く、避けたら味方が危ないから防ぐことでしか生き延びる道は無い。


「ディメンジョンドーム!」


 咄嗟に使ったのは防御系の空間魔法。

 前面に防壁を出すだけのディメンジョンウォールと違い、全方向の防御が可能な半球状の防壁を作り出す。

 これで全員を覆うように防壁を張ったけど、攻撃の数が多すぎるから長くは耐えられそうにない。


「ほう、空間魔法の使い手がいるのか。しかし、この数を相手にいつまで保つかな」


 その通りだ。だから今のうちに迎撃態勢を整えないと。


「すまん、助かった」

「礼はいい。それより、長くは保たないから今のうちに迎撃準備を」

「分かっている。後衛を中心に置いて密集陣形を取れ。物理でも魔法でもいいから迎え撃て! ジュリス、付与魔法だ!」

「はい! ハードボディ、パワーライズ、アクティブアクション!」

「アリルも頼む!」

「分かってる!」


 前衛も後衛も関係無く、全員が自己強化魔法や付与魔法で強化をしていく。

 俺もアリルが掛けてくれたハードボディ、パワーライズ、アクティブアクションに加え、自己強越化魔法のエフェクトエクステンドで継続時間を伸ばした上で同じ魔法を強化魔法として重ね掛けする。

 そうしている間にもディメンジョンドームには小さな亀裂が走っていく。


「お前も自分の身くらいは守れよ!」

「ひゃ、ひゃい」


 怯えながらも返事をして盾を構えるドロンさん。

 そのドロンさんには、テレサさんが付与魔法で強化をしていた。


「なかなか耐えるな。ではこれでどうだろうか。どけ、ファイアーボールとダークボールを撃て」


 そうデッドリーメイカーが告げると、数本あった杖が先端をこっちへ向ける。

 直線上にいる武器が全て退くと、杖の先端から炎と闇の球が放たれた。

 おいおい、杖は命令されれば魔法も自分で撃てるのかよ。ていうか、魔力あるのかよ。


「ぬうっ!」


 魔法はディメンジョンドームへ直撃。近くにいたマウロさんは思わず腕で防御の構えを取ったけど、ディメンジョンドームはどうにか耐えられた。

 だけど亀裂は一気に広がって全体にまで及んでいる。


「ちょっ、こんな場所で火魔法を使うなんて、あいつ正気なんですかっ!?」

「向こうは空気なんて必要の無いアンデッドよ。こっちは使えなくても、あっちは使い放題なのよ」


 そうか、向こうは食事や睡眠どころか空気さえ必要としないんだ。

 そう考えるとなんかちょっと狡い。


「ふふふふ、少しは頑張ってくれよ。武器としての性能確認をする、いい機会だからな。放ち続けろ」


 余裕綽々といった言葉の直後に再び魔法が武器の嵐と共に降り注ぎ、とうとう限界を迎えたディメンジョンウォールは崩壊した。

 直後に大量の武器が殺到してくる。


「いくぞぉっ!」


 迫る無数の武器を薙ぎ払い、叩き、防ぎ、魔法で迎撃する。

 反応速度を上げるアクティブアクションのお陰で、全員が対応できている。

 従魔達もハードボディで強度の上がった肉体を駆使し、後衛を守ったり物理的に武器を叩いたり足下に落ちたのを踏みつけて壊したりしている。


「ひいい、ひいい」


 ドロンさんも怖がりながら懸命に防御して自分の身を守りつつ、どうにか後ろにいるロシェリとテレサさんを守ってくれている。


「むう。単純な命令しか受け付けないのはともかく、行動も単純で連携が最悪だな。やはり、ある程度は自律的な思考をさせて連携を取れるようにするのが、今後の課題だな」


 くそっ、戦闘は武器に任せて自分は見物しながら分析かよ。

 でも実際に武器同士の連携が悪い。数に圧倒されて気づかなかったけど、互いにぶつかりあったり、杖の放った魔法の前に飛び出して吹っ飛ばされたり、その巻き添えを食らったりしている。

 でもだからこそ、こっちは対応できている。いくらこの人数で協力しているとはいえ、あらゆる方向から迫る無数の武器を全て捌くなんて普通は無理だ。

 そういう意味じゃ、あれらの武器が研究途中の不完全品で助かった。


「これならいけるよ! なんとか耐え凌ぐんだ!」


 突っ込んできた槍を盾で防ぐタバサさんから檄が飛ぶ。

 確かに耐え凌ぐって言葉がピッタリだな。

 なんとか凌いでいるものの、全てを防げている訳じゃない。中心にいる後衛陣はともかく、前衛陣は徐々に体に傷が増えてきている。俺も防具で守れていない箇所に小さな傷がいくつかできていて、今も防ぎきれなかった剣の斬撃が頬を掠めた。

 その剣は直後にアリルが魔法を命中させ、空中をふらついている隙に柄を掴んで別の武器を防ぐのに利用した後、杖から放たれた魔法へ向かって投げて破壊する。

 一番傷ついているのは防具も無しで防いでいる従魔達だ。

 いくら「屈強」や「硬化」のようなスキルとハードボディで強化したとはいえ、全く傷がつかない訳じゃない。

 なんとかフォローしたいけど、こっちも目の前の武器を捌くのに精一杯でそれどころじゃない。なんとか治癒魔法やポーションで治せるぐらいで済んでくれ。


「おっらぁっ!」


 槌部分で叩いて折れた剣の刀身が、回転しながらデッドリーメイカーへ向かって飛んでいく。

 そのまま頭にでも刺されって思ったけど、片手で簡単に受け止められた。


「ふむ……。止まれ、盾以外は戻れ」


 受け止めた刃を足元へ落としたデッドリーメイカーの命令で武器の動きが止まり、出入口を塞ぐ盾以外はデッドリーメイカーの周囲に戻った。


「少々実力を見誤ったな。羽虫の割になかなかやるじゃないか」

「へっ、余計なお世話だ! それよりどうした、もう終わりか!」


 なんで止めたのかは分からないけど、正直なところ助かった。

 凌げていたとはいえ、さすがに少し疲れてきたし軽傷とはいえ傷も多くなってきた。特に従魔達は傷が多いせいか息を切らしていて、構えに力強さがあまり感じられない。

 後衛陣も少なからず傷ついていて、体力の無いロシェリは肩で息をしながら杖を支えにして立っている。


「これで終わりのはずがないだろう? とっておきを試してみたくなっただけだ。来い!」


 そう叫ぶと奥への通路の先から、何か大きな物が飛んできた。

 現れたのは、パワーライズをして両手で持っても振れなさそうなぐらい巨大な大鎌。しかも刃は大小の一対じゃなく、大きな刃が五対で合計十枚もある。

 おまけにこいつは骨じゃない。見た目じゃ何を使って作られたのか分からないけど、明らかに鉱物の色合いをしている。


「こいつは強度の強化をすべく開発していた新作だ。インゴットを作る際に骨粉を混ぜてみたのだが、魂の定着が上手く出来なくてね。こいつは数少ない成功例だよ。振るえ」


 そう呟くと大鎌は自らを振るい、周囲を浮遊している武器を全て破壊した。

 粉々になった武器は俺達が破壊したのと同じように、破片となって地面に落ちて微動だにしなくなる。

 それを見たベイルさんは、信じられないような表情をして目を見開く。


「お前、何故自分で作った武器を壊す」

「こんな失敗作に興味は無いからだ。今後の研究の踏み台にはなったが、失敗作には違いない。醜態はたった今、見させてもらったからな」

「ふざけるな! お前も鍛冶師の端くれなら、自ら作った武器への思い入れや、素材となった命への思いやりは無いのか!」


 激怒して声を上げるベイルさんに対して、デッドリーメイカーは首を傾げた。


「そんなのが何の役に立つ。所詮は物、完成品が失敗作か成功作か、ただそれだけだろう? 失敗作は成功作への踏み台になったら、お役御免の廃棄物だ」

「テンメエェェッッ! それでも鍛冶師か!」


 激高したベイルさんが声を荒げて叫ぶ。

 ドワーフは使わなくなった武器や防具は鋳潰して再利用したり、炉の炎にくべて新たな物を作り出す糧にしたりして供養するから、鍛冶に関わっていなくともああして扱うのが許せないんだろう。

 さて、そんなあいつのとっておきはどんな物なんだ?




 インテリジェンスマジックデスサイズ 高品質 闇属性

 製作者:オズワード

 素材:ダイノレックスの骨の粉 鋼 魔心石

 スキル:鋭刃LV7【固定】

     強振LV6【固定】

     斬撃LV6【固定】

     魔斬LV5【固定】

     火魔法LV3【固定】

     闇魔法LV3【固定】

 状態:魂憑依


 知性を与えられ、自ら動ける骨製の武器

 ただし自ら考えて行動するほどの知性は無く、製作者の指示が必要

 通常の武器と同じように扱うことも可能

 ただし製作者かアンデッドかホムンクルス以外だと、スキルは無効

 自ら行動する際は空中に浮遊できる

 全ての刃が柄から分離して、魔力で繋がった状態で動かせる




 こいつ、刃物なのに魔法まで使えるのかよ。

 というか説明文の最後の一行、なんか嫌な予感しかしないぞ。


「それにこいつが暴れたら、どうせ壊れていた。だったらせめて、こいつの邪魔にならないようにした方がいい」

「だからって、壊すことはないだろう!」


 その通りだ。引かせて保険として残しておくことだってできたはずだ。


「はあ、くだらない問答だな。もういい、奴らを始末しろ」


 命令を受けたインテリジェンスマジックデスサイズが一気に距離を詰め、刃を振り下ろしてきた。

 咄嗟に盾を構えたベイルさんとタバサさんが前に出て防ぎ、その後ろにメガトンアルマジロとマッスルガゼルが二人を支えるようにして踏ん張る。

 そうして受け止められはしたものの、徐々に押されて後退している。


「なんつう力だよ、こいつ!」


 二人と二体が全力を込めても抑えきれない力に、タバサさんが声を上げる。

 この隙に攻撃しようと飛び出すと、俺とほぼ同時にラナさんとキキョウさんも飛び掛かっていた。

 俺とラナさんは側面から、キキョウさんは跳躍して上から仕掛ける。

 ところが、俺のハルバートもラナさんの短剣もキキョウさんの剣も全て防がれた。

 説明文の最後にあったように、柄の部分から分離して縄ぐらいの太さの魔力で繋がった三枚の刃によって。


「ミャア!? こんなの有りミャ!?」

「なんと奇怪な!」


 ラナさんとキキョウさんが驚くのも無理は無い。分かっていた俺だって、実際に目の当たりにして驚いているんだから。

 そのまま押し返された後、魔力での繋がりを伸ばして襲い掛かって来た刃と打ち合う。こいつ、刃一枚でも強い!


「援護よ! ウィンドカッター!」

「ダーク……ストライク!」

「ショックサンダー!」

「ならば、こちらも魔法で迎え撃て」


 後衛陣が援護のため魔法を放っても、インテリジェンスマジックデスサイズからも魔法が放たれて相殺されたり、「魔斬」スキルで切り刻まれたりしている。

 さらにベイルさん達との押し合いから離脱して、残りの刃を全て伸ばしてきた。

 もはや刃状の触手攻撃と言える猛攻は、さっきの武器による波状攻撃とは別の意味で厄介だ。


「ひいぃぃ……」


 ドロンさん、こんな時ぐらいは勇気を出してくれ。

 この際、自棄になってでもいいから前へ出て、後衛陣を守ってやってくれ。そんな後衛陣の後ろで震えて自分の身だけ守ってないでさ!


「ほう。この人数を相手に戦えるとは、なかなか。半分遊びで備えた能力だが、想定以上に使えそうだな」


 刃の一枚と打ち合いながら高見の見物をしているデッドリーメイカーを睨むと、ちょうどその背後にマウロさんが回り込んでいるのが見えた。

 手甲を装着した右拳を握り、後頭部へ向けて突き出す。

 けれど、その拳は担いでいた槌で防がれた。


「甘いぞ。仮にも上位種へ進化した私を、そう簡単にやれるとでも?」

「くっ!」


 そのままマウロさんとデッドリーメイカーの戦闘が始まった。

 いくらCランクとはいえ一人で大丈夫なのか気になるけど、今は他人の心配をしている場合じゃない。こっちも刃を相手にしながら魔法へも対処しているんだ、これ以上は脇目を向けられない。

 飛来する魔法を避け、縦横無尽に振るわれる刃と打ち合い、隙を突いて本気の一撃を刃へ叩き込むけど上手く受け流されてヒビの一つすら入らない。

 だったら手を変えて……。


「コンドルブレイブ!」


 数羽の風の鷲を形成する風魔法を、相手にしていた刃へ向けて放つ。

 それらは全て「魔斬」スキルで切り裂かれたけど構わない。だってそっちは囮で、本命は。


「こっちだ!」


 コンドルブレイブを目晦ましに使って、刃と柄を繋ぐ魔力を斧部分で両断する。

 これでどうだ。いくらなんでも、繋がりが切れれば……ってうおぉぉっ!? 切った繋がりがあっさり戻って刃が襲ってきた!

 くそっ、繋がりを切っても駄目なのか!


「なんなんだこいつは、まともじゃないぞ!」

「ちいっ、どうすればいいってんだ!」


 ベイルさんとタバサさんも苦戦しているようだ。

 いや、二人だけじゃない。全体的に押されていて反撃に出る切っ掛けすら作れていない。

 これはもう、スキルの入れ替えをするしかない。インテリジェンスマジックデスサイズのスキルを削って、反撃の切っ掛けを作り出す。

 刃を捌きつつ「完全解析」。よし、刃を対象にしてもさっきと同じ情報が見える。これなら刃を防ぎながらでもスキルの入れ替えができる。狙いはどちらもLV3の「火魔法」と「闇魔法」の二つだ。

 まずはレベルの上がっている「速読」と「算術」と「夜目」をLV2分ずつ使って、向こうの「火魔法」と「闇魔法」のスキルを全て俺へ入れ替え。

 続いて目の前の刃を弾き飛ばし、周囲を確認しながらリズの「農耕」と「料理」LV1分ずつを「火魔法」と「闇魔法」LV1分ずつと入れ替え。さらにロシェリの「整頓」LV2分と「闇魔法」LV2を入れ替え。

 二人から貰ったスキルはインテリジェンスマジックデスサイズへ「入れ替え」で渡し、向こうからは「速読」と「算術」をLV1分ずつと「夜目」LV2を返してもらう。

 どうだ、名付けてスキルシャッフル。インテリジェンスマジックデスサイズから魔法系スキルが無くなって魔法攻撃が止んだし、同時に自分と仲間の強化をさせてもらったぞ。


「あれ? 魔法が……」

「魔力切れか?」


 急に魔法が止んだから、ジュリスさんとキキョウさんがちょっと戸惑っている。

 スキルの入れ替えを知っているロシェリ達は原因を察したのか、俺の方を見たから頷いておいた。


「バカな、まだ魔力は充分に――ぶっ!」

「油断大敵、だぞ!」


 驚いたデッドリーメイカーの顔面に、マウロさんの拳が叩き込まれた。

 だいぶ押されていたのか結構ボロボロだけど、殴られて仰け反るデッドリーメイカーにそのまま連打を叩き込んでいる。


「何にせよチャンスだ! 刃は俺達前衛がなんとかする、後衛は魔法を叩きこんでやれ!」


 ベイルさんの指示に士気が上がる。

 残る攻撃手段の刃を、後方で震えているドロンさんを除く俺達前衛陣が防ぎ、後衛陣が刃や柄に向けて魔法を放つ。

 魔法を使えなくなったインテリジェンスマジックデスサイズは、「魔斬」で対抗しているものの全てを防ぎきれていない。


「ええいっ、どうなっている!」

「ぐおっ!」


 突然の状況変化にデッドリーメイカーが怒りを露わにして、相手にしていたマウロさんを蹴り飛ばす。

 両腕で防いだものの、壁に叩きつけられたマウロさんはうつ伏せに倒れた。


「刃と柄が繋がっている以上、魔力はまだ残っているはず。何が原因だ、どうして魔法が使えなくなった!?」


 製作者としては気になるんだろうけど、教えるつもりは無い。

 ついでにデッドリーメイカーの魔法も削っておくか?

 いや、駄目だ。インテリジェンスマジックデスサイズの刃に対処しながら、デッドリーメイカーへ目を向け続けるほどの余裕は無い。

 様子を窺うくらいならともかく、スキルの入れ替えをしている間ずっと凝視するのは無理だ。


「はん! テメェで作った武器を壊したバチが当たったんだろうよ!」


 うん、そういうことにしておこう。


「そんなバカな話があるかっ! くそっ、原因究明のためにさっさと片付けさせてもらうぞ。リボーンコンバイン!」


 デッドリーメイカーが唱えた魔法によるものなのか? 砕かれた骨製武器の破片が全て集まって、一体のゴツくて巨大なスケルトンになった。

 ということは、今のは死霊魔法か。ていうか、邪魔になるからって破壊したくせにそんなのを作るのかよ!


「まだだ。盾以外はこっちへ来い!」


 戦闘命令を実行し続けていたインテリジェンスマジックデスサイズが、新たな命令を受けてデッドリーメイカーの下へ向かい、同じように巨人もデッドリーメイカーの下へ向かう。

 急に戦いから離脱された俺達は攻撃が空振りしたのと、後衛陣の放った魔法が天井に当たって若干崩落したことで反応が遅れ、何かしようとするのを阻止できなかった。


「錬成!」


 一瞬の輝きが視界を埋めつくす。

 思わず腕で隠した目に次に映ったのは、全ての骨が黒く染まっているダイノレックスに似たスケルトンだった。

 ただし両手の部分が一回り小さい頭部になっていて、二十枚以上はある背ビレの全てが刃状。しかもインテリジェンスマジックデスサイズ同様に背骨から分離して、魔力で繋がった状態でこっちに刃先を向けている。


「な、なんだこの化け物はっ!?」


 思わず叫んだキキョウさんに心の中で同意。

 これを化け物と言わず、なんと言えばいいんだろうか。

 外見的にも、そして能力的にも。




 死霊錬成獣ドルドス 魔物 アンデッド型 性別無し


 状態:健康


 体力 ∞   魔力4467 俊敏351  知力3728

 器用3749 筋力 0   耐久3815 耐性3783

 抵抗3179 運417


 スキル

 鍛冶LV9   研磨LV8  精密作業LV7 錬金術LV7

 魔力操作LV5 火魔法LV4 死霊魔法LV4 闇魔法LV4

 槌術LV3   解体LV3  統率LV2   鋭刃LV7

 強振LV6   斬撃LV6  魔斬LV5   速読LV1

 算術LV1   整頓LV2  農耕LV1   料理LV1

 硬化LV2   強打LV1


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法 趣味 三大欲求




 こいつ、体が一つになっただけじゃなく、三体の全てのスキルが集約してる。

 おまけにいくつかの能力まで上がってるって、もう反則だろこれ。


「死霊錬成獣ドルドス、とでも名付けるか。さっさと貴様ら羽虫を始末したら元に戻り、原因究明をさせてもらうぞ! フレアアロー、ダークアロー!」


 そうして両手の頭部の口が開き、口内から唱えた魔法が放たれた。

 右側からは火魔法の矢が、左側からは闇魔法の矢がそれぞれ飛来してくるのを全員が避けるか防ぐ。続けて背ビレ状の刃もさっきより激しく襲い掛かってきた。

 ちゃんとした思考のできるデッドリーメイカーが核になって制御しているからか、魔法や刃の連携がしっかりしている。

 命令通りにしか動かないインテリジェンスマジックデスサイズとは比べ物にならなくて、「完全解析」はできても「入れ替え」を使う余裕が無い。「入れ替え」を使うために視界を固定して、僅かな間とはいえ凝視して集中していたら、その間に攻撃を受けて死にかねない。


「これ、どうしろってんだよ!」


 愚痴を叫びつつ迫って来る刃を避けて防いで、間髪入れず飛来したファイアーボールをディメンジョンウォールで防いで後退し、リズとテレサさんに迫っていた刃を同じく後退していたネルさんと協力して防いだ。


「ぬおぉぉっ!?」


 今のはバロンさんの悲鳴か? 声がした方へ目を向けると、攻撃でも受けたのか盾が壊れたバロンさんが地面を転がっている。

 転がった先にいるジュリスさんに危うくぶつかりそうになるのを、一人でデッドリーメイカーと戦ってボロボロになっているマウロさんが受け止めた。

 そこへ正面からダークアローが、頭上からは刃が迫って来ている。


「危ない、ウィンドカッター!」


 ダークアローをウィンドカッターで相殺して、頭上から襲おうとしていた刃は跳躍してハルバートで弾いて着地する。


「悪い。助かったぞ、坊主、マウロ」

「気にするな。それより大丈夫か?」

「なんとかな。まだいけるぜ!」

「こっちは肋骨が数本やられたかもしれん。動けない事はないが、鈍い痛みが続いている」


 立ち上がって片手斧を手に刃と応戦しているバロンさんはともかく、魔法を避けたマウロさんの動きがさっきまでより鈍い。

 こりゃ本格的に不味いぞ。純粋に手数が多い上に一撃一撃が強い。

 二十枚以上の変幻自在に動かせる刃、魔法、ドルドス自身の格闘戦。それらがちゃんとした思考の下で使われているから、誰もが防御と回避しかできず攻め込めない。


「坊主! 前のブラストレックスの時のように、自分の位置を変えて接近できないか!」


 確かにあれをすれば、不意を突いて痛打を浴びせて隙を作ることもできるだろう。でも……。


「外でならともかく、ここじゃ無理だ!」

「どういう意味だい、そりゃ!」

「説明している余裕は無い。とにかく無理だ! アクアアロー!」


 タバサさんからの疑問にそう返し、アクアアローでファイアーボールを相殺する。

 できない理由はこの空間だ。

 「入れ替え」で自分の位置を入れ替えるには、どうしても空間魔法のホークアイが必要になる。だけどあれは高い場所から見下ろすようになる魔法だから、相応の高さが確保できないと発動すらできない。

 この空間は広いことは広い。だけど縦と横はともかく、ホークアイを使うために求められる高さが足りない。だから自分の位置を入れ替える、あの戦法は使えないんだ。

 というか、そもそも「入れ替え」を使う余裕も隙も無い!


「ちっ。急ぎ原因究明したいというのに、意外と粘るな。こうなれば、こうだ!」


 今度は何を……って、両手の頭部まで魔力で腕と繋がった状態で動きだした。

 待てい、そっちも離れて動けるんかい!


「ダークランス、フレアランス!」


 しかも魔法を放ちながら動けるのかよ!

 後ろで固まっていたロシェリを引っ張って咄嗟に回避したものの、刃と魔法に加えて二つの頭部にも対処って厳しいぞ。

 ただでさえ近づくこともできずにいるのに、これはもう逃げるしかないか?

 でも出口は盾に塞がれたままだ。もう逃げ出したいのかドロンさんが盾で攻撃を防ぎつつ、その辺の石を手に何度も叩いているけど、表面がちょっと傷ついているだけでビクともしていない。


「どう考えてもジリ貧じゃねえか、こんなの」


 何か手は無いか? そうだ、「咆哮」と「威圧」を使って少しでも動きを止められれば。

 そう思って刃を弾き返しながら息を吸い、「咆哮」スキルを使って声を上げた。


「おぉぉぉぉぉ……あぁぁぁぁぁっ!?」


 何だこれ、頭がビリビリして体が動かない。

 俺だけじゃなくて敵も味方も関係無く動きが止まる。

 今ならスキルを入れ替えられるチャンスだけど、体の感覚がおかしくて集中できない。


「おまっ、こんな密閉空間で「咆哮」スキルを使うんじゃねえよ!」

「反響して己にも味方にも効果が及ぶ。決して使うべきではない!」


 ごめんなさい、考えが甘かったです、少し考えれば分かりました、知らなかったじゃ済まされません。

 特に兎人族で聴覚が強いストラさんは、目がグルグルしていてフラフラだ。マジでごめんなさい。


「貴様、ふざけた真似をして!」


 怒ったドルドスの右手頭部が口を開いて迫って来る。

 体の感覚はまだ治りきっていない。それでも俺一人なら避けられるけど、後ろにいるロシェリを引っ張っては無理だ。くそっ!


「あっ!」


 ロシェリを突き飛ばして逃がし、ハルバートを縦に構えて突進を防ぐ。だけど十分に踏ん張れず、押されて後退して、最後は払われるようにして壁へ叩きつけられた。


「ジルグ、君!」

「小僧、ちぃっ! 邪魔だ!」


 いってぇ……。体は……よし、感覚は完全に戻ったし問題無く動く。それどころか「逆境」で力が湧いてきた。

 エフェクトエクステンドを習得してて良かった。ちょうど効果時間は切れたけど、壁に直撃した瞬間まではハードボディが保っていて助かったぜ。

 それにしても、「咆哮」は完全にミスった。向こうにも効いていたから助かったものを、一歩間違えれば誰かが死んでいた。

 だけど後悔している暇は無い。早く強化魔法を掛け直して、向こうへ戻らないと。


「って、何だこの小部屋みたいな場所は。それに閉じ込められたっぽい?」


 目の前には岩や石が積み重なった壁がある。そしてその向こうからは、戦闘音や皆の声が聞こえる。

 これは一体……。あっ、そういえばここには薄い壁を挟んで小さな空間があったんだ。ということは、ここがその小さい方の空間か。

 叩きつけられた時に偶然ここに入って、その時の崩落か何かで壁だった所が塞がったのか。


「ぬおぉぉっ!?」


 おっと、こうしている場合じゃない。早く戻らないと。

 幸い向こう側が見える隙間はあるから、一撃入れて岩を吹き飛ばせば――。


「待て、そこのガキ」


 うん? 誰だ今の声は。


「こっちだ、ガキ」


 声のする方を向くと、そこには一つの水晶が置かれていた。

 中には赤みの強い橙色の目と口のようなものがある黒い何かがいて、俺と目が合うとニンマリと笑った。

 途端に背筋に寒気が走る。なんだ、こいつは。


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