従魔可の住宅事情と新装備
母さん側の家族と出会い、少しずつ肉親慣れをしていこうと決めた翌日。
この日も休みに当てた俺達の予定は、いずれは買う家の下見のために不動産屋へ行くことだ。
でもとりあえず、まず先にやるべきことは……。
「よう、髭熊」
「おはよう髭熊」
「髭……熊……」
恨みを込めて髭熊を髭熊と呼んでやることだ。
「ちょっと待て、なんで急にそんな呼び方をするんだ! 俺、お前達に何かしたか!?」
「昨日あんたが言い触らしたせいで、ギルドで大変だったんだぞ!」
「ぐっ!」
テーブルに手を叩きつけて怒鳴ると髭熊が言葉に詰まった。
この隙を逃すものかとアリルと一緒に昨日の事を言ってたたみかけ、一切の文句も反論も言い訳も許さず一方的に昨日の件を抗議する。
喋るのが苦手なロシェリは抗議の嵐には参加せず、両手でテーブルをバンバン叩いて怒りを表現している。
睨む手もあるけど前髪で目が見えないから、テーブルを叩くという手段を取っているんだろう。
「悪かった……。謝るから勘弁してくれ……」
大柄な髭熊が体を縮こまらせて、額をテーブルに擦りつけている。体のわりに精神的に打たれ弱いな、この髭熊。
一旦抗議を止めて二人へ視線を送ると、二人とも頷いた。よし、勘弁してやるか。
「許すことは許すけど、髭熊呼びは継続させてもらう」
「ぐぅ……。だが身から出た錆だ、受け入れよう」
ちゃんと自覚しているのならよろしい。
ついでに冒険者向けの家を扱っている不動産屋に心当たりがないか尋ねると、冒険者ギルドと提携している不動産屋を紹介された。
「冒険者ギルドが不動産屋と提携しているの?」
「珍しい話じゃないぞ。冒険者の大半は宿暮らしだが、引退や結婚を機に家を買ったり借りたいって奴はいるし、お前達みたいに金が貯まったから家を買う奴だっているんだからな」
ギルドはそういった人達のために提携した不動産屋を紹介し、不動産屋はやって来た冒険者へ住居を紹介しているようだ。
引退者には、これまでの活躍ご苦労様ですという労いを込めて。家を手に入れたい現役の人には、今後の更なる活躍を期待していますという意味を込めて。
さらに、大人数のパーティーが拠点として家を購入することもあるようで、一般的な家から大きめの家まで広く取り扱っているらしい。
「さすがに小さな村とか集落のような場所ではやっていないが、ある程度の町ならギルドと不動産屋は手を結んでいるぜ」
不動産屋としても冒険者からの不興を買ってギルドから切られたら評判に関わるし、客を紹介してもらえる相手は欲しいからということで、そうそう変な家は紹介しないそうだ。
「分かった。そこへ行ってみるよ」
「おう。だが家ねえ……俺はそこまで欲しいって気にはならねぇな」
「どうし……て?」
「維持費は掛かるし、一人暮らしよりも仲間と騒いで暮らす方が気楽だし、何よりも掃除とか洗濯とかそういう身の回りの事を自分でやらなきゃならねぇのが面倒だ!」
宿なら留守中に部屋を掃除してくれるし、金を払えば洗濯もしてくれるし、飯も作ってくれるし、多少仲間と騒いでも大丈夫だもんな。
でもそれ、最後の理由は胸を張って言えることじゃないぞ。
「よく見なさいロシェリ。あれが仕事はできても、私生活は自堕落な駄目男の姿よ」
「分かっ……た」
「お前ら、今日は俺に辛辣すぎないかっ!?」
自業自得だ。
****
朝食を済ませたら従魔達の下へ向かい、二日酔いから回復しているのを確認。
普段通り筋肉を隆起させる姿に苦笑いを浮かべつつ、俺の「硬化」とマッスルガゼルの「威圧」を入れ替えたら従魔達を連れ、冒険者ギルドと提携しているっていう不動産屋へ向かう。
教えてもらった不動産屋は宿からしばし歩いた所にあり、年季の入った小さな店構えをしていた。
従魔達を外で待たせて中へ入ると、店員は奥の方にいる眼鏡を掛けた白髪の男が一人だけ。書類仕事をしていたようだけど、扉を開けた時の鈴の音を聞いてこっちに気づいた。
「おや、いらっしゃい。どうぞこちらへ」
眼鏡の位置を直しながら促され、受付の所にある椅子に腰を下ろす。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「今日はちょっと、家についてのお話を聞きたくて」
若いからって侮っている様子は見えないから、従魔も一緒に住める物件について調べに来たことを正直に伝える。
男は相槌を打ちながら話を聞くと席を立ち、いくつかの物件の資料を持ってきた。
「従魔と一緒に住める家は、いくつか取り扱っています。生憎と新築で従魔も暮らせるというのは無いので、基本的に中古物件になります」
そりゃあ、従魔も一緒に生活できる家なんて注文しない限り建てないからな。中古ばかりになるのは仕方ない。
「家に問題が無いのなら、それぐらい気にしませんよ」
「そこはご安心を。うちは冒険者ギルド御用達ですからね、信用を損なう真似はしませんよ」
自信満々に言い切るからには期待しよう。
「従魔も一緒に住める家となると、やはり町から少し離れた場所になりがちですね」
例として見せてくれた資料は、元兼業農家が住んでいた家。
農業の他に乳牛を扱っていたようで、当時の厩舎や放牧地の囲いが残っているとある。
もう一つ見せてくれた資料は、元養鶏業者の家。
厩舎でなく鶏舎だけど従魔が住める上に、こちらも囲いが残っている。
この二つに共通しているのは、町の隅の方だったり少し離れた立地だということだ。
「どうして、町から、離れる……の?」
「一番の理由はやはり鳴き声とか、匂いですね。それでご近所とトラブルになりかねませんから」
なるほどね。町中に鶏舎があったら朝は鳴き声が煩いだろうし、家畜を飼えば少なからず匂いの問題も出てくる。
そうした事で近隣住人とトラブルになるのを避けるため、町外れとかに家と厩舎を建てているのか。
「他にも放す場所を確保するためです。狭い厩舎や鶏舎の中で育てるのは、育成に良くないと聞きますから」
放すためにはある程度の広さが必要だから、立地は地価の安い町外れになるってことか。
「ですので、従魔を置いておける厩舎のような場所がある物件は、大抵が町の外れになります」
「従魔と一緒に泊まれる宿とかは?」
「そういう宿は設計や土地の購入の段階から、それを考慮して準備していますから。さらに言えば、所詮は一時的な置き場です」
言われてみれば、俺達が泊まっている宿は建物以外の場所が広めに取ってあったし、厩舎と近隣との間には植物で垣根を作っていたっけ。
それに目の前の男が言う通り、家畜と違って常にそこで飼育しているんじゃない。あくまで客が泊まっている間だけの置き場所だ。
おまけに客が全員馬や従魔を連れて来ているとは限らないから、必ず厩舎に何かがいるわけじゃない。
そういう所があるから、町中でも大丈夫なんだろう。
「町中で従魔が住める物件もあるにはあるんですが、別途費用が掛かってしまいますね」
資料での説明によると、従魔を置けるほどの庭があるか、二階建ての一階が元工房とか元店舗の建物が該当する。
どちらも厩舎が無いから、庭に厩舎を作るか一階部分の改装が必要なんだと教わる。
金に余裕があればそういうのも有りらしいけど、そんな人は稀有だろう。
「おまけに町中ですからね、値段も方もそれなりにするんです」
資料にある値段に目を通すと、当たり前だけど町外れの方が値段は抑えられている。
敷地や間取りは町を外れた方が広いけど地価が安いから値段が低く、町中は狭くとも地価が高いから値段も上がってしまう。
立地条件も含めての値段なのは分かる。でも俺達が買うのなら、遠くともしっかり厩舎が有る方が良い気がする。
町中でないなら自主的な鍛錬もしやすいし、拡張が必要になっても元の敷地が広いから手を加えやすい。
それとあれだ、うん。この前みたいに夜中の音とか声を聞かれる心配が無い。
「どうでしょう。参考になりましたか?」
「とてもなりました。家を購入する時が来たら、是非お世話になります」
「そうですか。その日が早く訪れるのをお待ちしています」
今は買う気の無い客に丁寧な説明をしてくれたんだから、この店は信用できる。
ギルド御用達の立場に胡坐を掻いている様子も無いし、その時が来たらここを頼ろう。
……本当に、肉親より他人の方が受け入れやすいんだな、俺って。
改めてそれを実感しつつ、今になって店主だと明かした男と握手をして店を出た。
「やっぱり従魔も一緒となると、色々あるものなのね」
そう呟いたアリルが合流した従魔達へ視線を向ける。
だけど、どちらも自分達がどうかしたのかと首を傾げる素振りを見せた。
「犬や猫を飼うのとは訳が違うからな」
スライム程度ならともかく、普通は家の中で魔物を飼うなんて考えないだろう。
考えているとしたら、それが可能なくらいの家を建てられるほどの物好きな金持ちか、単なる考え足らずか。
どっちでもない俺達は、普通に厩舎で従魔達を飼わせてもらう。
「で、これから……どう、する?」
どうしようか。実は不動産屋で話を聞く以外、何の予定も立てていないんだよな。
バロンさんの所に行くのは明日になるし、仕事をするならその後になる。
町中でできる依頼を受けるって手もあるけど、今日は休みって決めてるから仕事を提案するのは無粋だ。
「とりあえず、適当に歩きながら、明日に備えての買い出しでもしておくか」
これといった用も無いから二人も承諾してくれて、早速行動開始。
顔馴染みになったパン屋で新作の試食をして、裏通りで露出の多い服装をしたお姉さんの誘いを二人から睨まれながら断り、ちょっと高いけど質の良い香辛料を扱っている店を見つけ、いつもポーションを買っている薬屋へ立ち寄ったら香水を勧められた。
「香水って。俺、男なんだけど」
「ひゃっひゃっひゃっ。香水をただの化粧品の一部と思ってるなんざ、物の捉え方が浅いねぇ」
独特な笑い方をする店主の婆さんだけど、腕は良いから冒険者がよくポーションを買いに来ている。
俺達も髭熊に教えてもらって以来、この店のポーションを利用している。
「香水はその名の通り、香りを扱う物なんだよ。調合一つでどんな香りにもなる。例えば、今勧めたこれは魔物が嫌がる香りがする香水だ」
魔物が嫌がる香りって、それ野営に便利じゃないか。
「こいつを野営地の周囲にばら撒けば、魔物が香りを嫌って近づかないから安心して眠れるよ。尤も、盗賊まではどうにもできないけどね」
そりゃそうだ。魔物が嫌がる香りで盗賊までどうにかできるのなら、夜の見張りの苦労は無い。
というより、盗賊が嫌がる香りってどんな匂いだ。そしてそれを撒いたら、野営をしている側も寝るどころじゃないと思う。悪臭で悶えながら野営をする様子が容易に浮かぶ。
「一応、魔物にも盗賊にも効く悪臭がする香水を作ってみたけど、いるかい? この前泥棒にぶっ掛けたら、顔から出る体液全部流しながら、この世のものとは思えない絶叫をして悶えて仰け反って痙攣して嘔吐した挙句に気絶したけどね」
「「いらん!」」
「いら、ない!」
俺だけでなくロシェリとアリルも一緒になって受け取りを拒否する。
当然だ。そんな物を貰っても使い道に困る。相手を撃退できるけど、空気の流れ次第で自分達も被害を受けるかもしれないんだから。
ただ、婆さんが説明した泥棒の様子はちょっと気になるから、それは見てみたい気がする。
いや待てよ。風魔法と併用するか、「入れ替え」で遠方の相手にぶつければ使えなくもないか?
「魔物避けだけ買うわ。いくら?」
「まいどあり、銀貨八枚だよ。ひゃっひゃっひゃっ」
婆さん、買う時にその笑い声はやめろ。なんか紛い物を掴まされた気になるから。
購入の度に毎回聞いているけど、未だにそんな感じがする。
その事に溜め息を吐きつつ、先日の戦いで消費したポーションを息子さんに頼んで買い足しておく。
奥の方で別の香水を手にした婆さんが、二人とヒソヒソ話しているけど何を勧めているんだろうか。妙に二人の様子が落ち着かないし、こっちをチラチラ見ているんだが。
変な物でないことを祈りながら、息子さんが持って来てくれたポーションの代金を支払う。
どうやら二人も追加で香水を買ったようで、婆さんに代金を支払っていた。
帰りに何の香水を買ったのか聞いたら、少し慌てた様子で秘密だという返事が揃って返ってきた。
なんだろう。良いような悪いような、よく分からない妙な予感がする。気のせいか?
この後は明日、バロンさんの所で防具を融通してもらえなかった時の保険として防具屋へ立ち寄って下見をしたり、アリルが気に入っている甘味屋で休憩したり、古本屋で読み物を探したりして過ごした。
明日はとうとう、バロンさん作の新しいハルバートが手に入る。
この日の夜は、楽しみでちょっと寝付けなかった。両隣に密着して眠る薄着姿のロシェリとアリルは関係……なくはないか。
****
どうしてこう、楽しみな時が訪れるまでの時間は遅く感じるんだろうか。
そう何度も思いながらそわそわして過ごし、遂にその時がきた。
高鳴る胸に何度も落ち着けと自分に言い聞かせ、先に昼食を済ませてからバロンさんの工房へ顔を出した。
「おう、来たか小僧。その顔は待ちきれないって感じだな」
「はい! だから早く!」
「分かってるって。ほらよ、ここ最近じゃ会心の出来だ」
ニンマリとした笑みで取り出したのは、前に使っていた物よりも少し長い赤みの強い橙色のハルバード(ハルバート)。
思わず見とれるそれを受け取り、気づけば「完全解析」を使っていた。
豪魔槍槌斧・ハルバード(ハルバート) 最高品質
製作者:バロン
素材:金剛石 魔心石 ストロングレックスの牙
ハードトータスの甲羅 ガーディアンシェルの殻
スキル:不欠損LV5【固定】
鋭刃LV5【固定】
麻痺LV3【固定】
物理無効無効
全ての素材が適正かつ最高の融解状態で混ざり合って完成した物
魔力がとても通しやすく、魔法も纏わせやすい
魔力を通すことで強度と切れ味が向上し、重みも増す
纏った魔法の効果を増幅させる
不欠損:刃こぼれや亀裂などといった欠損がし辛い
鋭刃:刃の切れ味が落ちにくい
物理無効無効:幽体系の魔物の「物理無効」スキルを無効化する
凄いの一言しか出ない。
最高品質なのは言わずもがな、欠損し辛くて切れ味が落ちにくい上、近接戦の天敵と言われる「物理無効」スキルを持つ幽体の魔物へ対抗するスキルまである。「物理無効無効」にレベルと【固定】が無いのは、ブラストレックスの「ブラストショット」のように、存在しているだけでスキルの効果が発揮されるからだろう。
前のハルバートより魔力や魔法に関する効果も向上しているし、初めて握るのにとても馴染む感じがして重さもちょうどいい。前のは手に馴染むって感じだったのに対して、これは体全体に馴染むって感じがする。
そういえば重さも変わるんだよな。自己強化魔法やスキルで強化した力で重みの増したこれを振れば、どれだけ威力が上がるんだろう。
少し落ち着いてくると、ロシェリとアリルもハルバートに見とれているのと、「完全解析」のレベルが上がったことで製作者の名前が見えるようになったのに気づいた。
「はっはっはっ。思わず声も出ないか」
「ああ……。なんだかよく分からないけど、凄い物なのは分かる」
「当然だ。俺にしか出来ない、とっておきの技術を使って作ったからな!」
腕を組んで自慢気に語るのは、「完全解析」にもあった融解状態にしての混合。
融解に必要な温度や時間の違う素材を、一つの窯で火との距離や時間差に注意しながら別々に配置し加熱して、全てが同時に最高の融解状態になるよう調整。それに達したら手早く全てを合わせ、絶妙な温度管理と経験を基にした目で観察しながら混ぜ合わせ、温度も混ざり具合も最高の状態になった僅かな瞬間を見抜いて火から下ろし、一度インゴット状にしてから武器として鍛える。
嬉々として語っているけど、鍛冶の素人の俺にでも分かるぐらいとんでもない作業だ。
配置した場所の温度が高くても低くても駄目、時間差を誤って熱を通し過ぎても通さな過ぎても駄目。それらを複数の素材を同時に扱いながら絶妙な瞬間を見抜いて完成させたなんて、本当にバロンさんは凄腕だ。
実際に鍛えてもらった武器を持ち、作業内容を聞いたから余計にそれを実感できる。
「複数の鉱石だけじゃなくて、魔物の素材も混ぜ合わせたインゴット? そんなの聞いた事もないわよ」
「言っただろう、小娘。わしにしかできない技術だと。名付けて魔鉱混精じゃ。認めた弟子には教えているが、誰一人としてできたものはおらん」
ということは、ハルバートをくれた王都のドワーフにも、強化してくれた女性ドワーフにもできない技術か。
「無茶を言わないでよ父さん。同じ素材でも一つ一つで必要な温度も時間も違うんだ、素材からそれを見抜くだけでも大変なんだよ。おまけにその日の火の具合とか、気温とか湿度でも微妙な変化があるし」
「ドワーフなら、それぐらいやってみせんとドワーフの恥だ!」
いやそれ、バロンさん以外のドワーフができないならドワーフの恥じゃないと思う。
口を挟んだ息子さんのドワーフも、困ったなって呟きながら苦笑して頬を掻いている。
「預かったハルバートからして、小僧は魔法も使う前衛と分かったから魔法と相性の悪いミスリルは使わず、相性の良い金剛石と魔心石をベースにした。切れ味を増すために先日の討伐でギルドから売り出されたストロングレックスの牙を、強度を増すためにハードトータスの甲羅とガーディアンシェルの殻を使った。久々に良い仕事をしたわい」
良い仕事どころか、受け取った俺としてはとんでもない仕事をしてもらいました、ありがとうございます。
でもそうなると、これっていくらぐらいするんだ?
金板一枚でも余裕とは言ったものの、ちょっと不安だ。
「あの、代金は……」
「金なら金板一枚でいいぞ」
「えっ!? でも、これならもっと高くても」
「言っただろう、今回は特別だと。だから料金も特別だ。素材の仕入れ値の合計はそれぐらいだし、技術料として今夜の晩酌代ぐらいは込みだから気にすんな」
バロンさん……いや、おやっさんと呼ばせてください。おやっさん、あんた漢だよ。
「分かった。じゃあこれ、金板一枚」
「あいよ、まいどあり。それと小僧、この前は防具の事を忘れていただろ?」
はい、忘れてました。
仮令特別でもおやっさんに武器を作ってもらえるのが嬉しくて、つい忘れてました。
「さすがにそっちは特別とはいかんから、息子が作ったこっちの防具を売ってやろう」
そう言って見せてくれたの、紺色をした革製の革鎧と脛当てと籠手。
革鎧の胸元には同じく紺色の金属とは違う何かが装着されているけど、こっちは見るからに硬そうで鈍い光沢がある。
「こいつらにはメタルアリゲーターの数倍の強度がある、ハンティングシャークという鮫の魔物の皮を使っている。胸元の部分は剥ぎ取った鱗を融解加工した物で、革部分よりも遥かに硬い。物理だけでなく、あらゆる魔法への耐久性も高い。その割には軽くて動きやすいから、攻撃重視の小僧向きだぞ」
鮫って確か、海にいる生物だよな。生憎と海とは無縁だからどんな外見かは分からないけど、強度がメタルアリゲーターの数倍で鱗はそれ以上って凄いな。
そんじゃ、いつもの「完全解析」っと。
ハンティングシャークの革鎧 高品質
製作者:ロイド
素材:ハンティングシャークの皮 ハンティングシャークの鱗
スキル:防刃LV3【固定】
衝撃緩和LV3【固定】
革製だが強度は高く、物理攻撃にも魔法攻撃にも高い耐久性がある
胸元の鱗を加工した部分は、革を遥かに超える強度と耐久性がある
水中で身に着けていても重みを感じず、沈まないため自由に泳げる
防刃:刃で傷つきにくい
ハンティングシャークの革籠手 高品質
製作者:ロイド
素材:ハンティングシャークの皮
スキル:防刃LV3【固定】
衝撃緩和LV3【固定】
革製だが強度は高く、物理攻撃にも魔法攻撃にも高い耐久性がある
水中で身に着けていても重みを感じず、沈まないため自由に泳げる
ハンティングシャークの革脛当て 高品質
製作者:ロイド
素材:ハンティングシャークの皮
スキル:防刃LV3【固定】
衝撃緩和LV3【固定】
革製だが強度は高く、物理攻撃にも魔法攻撃にも高い耐久性がある
水中で身に着けていても重みを感じず、沈まないため自由に泳げる
いいよこれ。水中に落ちても影響を受けないなんて、この防具は欲しい。
「ちなみに値段は?」
「一つ金貨三枚だが、全部買うならセット割引で金貨八枚にしてやる」
「買った!」
この品が金貨八枚なら買いだろう。なんか女性ドワーフと同じこと言ってるのは、この際だから気にしない。
代金を支払って早速装備してみると、メタルアリゲーターの防具よりも軽くて動きやすい。これで防御力が上回っているのなら、文句なんてあるはずがない。
「頑張れよ。俺が生きているうちに、お前の武器や防具を作れるようにな」
「作らせてやるよ、最高の武器と防具をな」
バロンさんと互いに笑いあって拳をぶつけ合い、改めてお礼を言って工房を出る。
「さてと。装備も整えたし、今日からまた張り切っていくぞ」
「オッケイ。私達の未来のため、頑張りましょう!」
「おー」
だからロシェリ、もうちょっと気合い入れて声出してくれ。
それと従魔達は筋肉を隆起させるな、暑苦しい。




