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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
42/116

適性を知る


 母さんに関する事が一気に解決した。

 伯父さんと祖父ちゃんからの話で、母さんがこの家を出た理由と干渉をしなかった理由を聞き、さらには俺自身が内面に隠して抱えていた恐怖心を自覚させてくれた。

 まだまだ肉親に対する壁は壊せないけど、徐々にでも壊して家族らしく交流できたらと思う。王都の元実家にいる肉親は別だけど。

 あっ、そういえば。


「俺との関係を公的に認めてもらって、アトロシアス家の籍に入れたいって言ってたけど、あれは?」

「ああ、それか。なに、アーシェの貴族証が有るから難しい話じゃない」


 伯父さんの説明によると、ベリアス辺境伯家の紋章官って役職の家臣に貴族証の紋章と発光を確認してもらい、その旨を認めた書類と必要書類を王都の関係機関へ送ればいいだけのようだ。わりと簡単なのは助かる。


「ただ、紋章官に協力してもらう以上はお館様に話を通す必要がある。しかし今はダイノレックスの被害に遭った村と集落への対応でお忙しいから、お伝えしてもすぐに対応するのは無理だろうね」


 そりゃそうか。ガルアの町は守り抜いたけど、被害に遭っていた村と集落がある。

 自分の領内で起きた被害への対応と、家臣の個人的な頼み。まともな領主なら、前者をへの対応を優先するのは当然のことだ。

 伯父さんもそれを分かっているからこそ、すぐには無理だって言ったんだ。


「急ぐことでもないから、じっくり待つよ」

「そうだな。時間はまだまだたっぷりあるんだから」


 そういうこと。


「おほん。ところで君達は、随分と仲が良いようだが……」


 含み笑いをした伯父さんが俺の手を指差す。

 目を向けると、両手がロシェリとアリルから手を重ねられたままだった。

 思い返せば、さっき二人から掛けてもらった言葉と、今も重ね続けている手。そして目の前から向けられる生暖かい視線。

 先にアリルが気づいて手を放し、一拍遅れてロシェリも慌てて手を放したけどもう遅い。

 察せられたな、ただの仲間じゃないって。


「期待しているよ、孫の顔を」

「ひ孫の顔を見れるとは、楽しみだな」


 言うな、そういうのを。ああほら、ロシェリとアリルが今朝と同じような状態になってる。

 それから伯父さんにとって俺の子は孫じゃなくて……なんて呼ぶんだろう。甥の子は伯父から見たら、なんて呼ぶんだろうか? 俺の子から見た伯父さんは大伯父だってことは知っているけど、そっちは知らないな。


「ということは、あなた達は私の従妹になるんですね。是非、あなた方も私をお姉ちゃんと呼んでください」


 あんたはもう黙ってろ、真面目な顔して何言ってんだよ本当に。

 リアン従姉さんは無視して、二人とは家族になろうって約束を交わし、そのためにCランクを目指している事と家を購入する資金を集めている事を説明した。

 やっぱりって視線が伯父さんと祖父ちゃんだけでなく、控えている女性使用人とリアン従姉さんからも向けられている。これは確実に、今日中に屋敷内へ伝わっているだろうな。なんだか俺も恥ずかしくなってきた。

 余談だけどアリルが年下を姉呼ばわりしたくないと言うと、年上なのかと驚かれた。見た目は年下か同い年みたいだから、無理もない。


「冒険者で一人前とされるCランクに、家を買うだけの資金か。まだまだ掛かりそうだな」

「実は、金に関してはそうでもないんだ」


 昨日の討伐に参加したお陰で全員Dランクになったし、報酬もたくさん貰った。

 武器の製作費で俺の手持ちは減るけど、それでも三人合わせればかなりの額になる。

 ギルドカードを見せて報酬の事を説明したら、なんか感心された。


「昨日の件は、そんなに報酬が出たのか」

「それだけあれば家ぐらい余裕で買えるな。さすがに屋敷とまではいかないが、普通の家だったら買うことができる」


 そりゃなあ。バロンさんへ武器の代金を支払って、その後で防具を買っても金貨がたくさん余りそうなぐらいあるんだ。

 屋敷なんて大それた物を買う気は無いから、購入資金としては十分だろう。


「年下なのに……。私より年下なのに、もう家を買えるだけのお金を……」


 リアン従姉さんが落ち込んでいるけどスルーしておこう。


「だが忘れないでくれ。我々は君の肉親で、ここは君の母親の実家だ。何か困った事があれば頼ってくれていいし、なんなら家を買うまでの間はここに住んでもいいんだから」


 そう言ってくれるのはありがたいし、俺が求めていた家族らしさを向けられるのは嬉しい。

 これで肉親に対する心の壁が無ければ、素直に申し出に甘えられるのにと。


「今はまだ大丈夫。でも何かあったら頼らせてもらうよ」

「そうか。そう言ってくれるだけでも、一歩前進かな」

「だろうね」


 正直この人達と出会うまでは、家族に頼ろうだなんてこれっぽっちも考えていなかった。

 そんな考えを少しでも変えてくれたんだから、感謝しよう。


「さてと。名残惜しいがここまでにしよう。今日は君と会うために時間を作ったが、明日は朝早くから仕事なんでね」


 ありゃ、そうなのか。わざわざ、ありがとうございます。

 本当なら家族を紹介したかったと言う祖父ちゃんに、また時間ができて呼んでくれた時に紹介してくれればいいと伝えておく。

 ちなみにここに暮らしている家族は、祖父ちゃんの奥さんが三人と伯父さんの奥さんが二人、それとリアン従姉さんの妹と異母兄と異母妹の計十一人。生憎とここにいる三人以外は用事や仕事で出かけているそうだ。


「悪いね。せめて妻だけでも紹介したかったのだが」

「いないんじゃ仕方ないって。また今度の機会にってことで」


 わざわざ見送りにまで来てくれて、なんだか少し心の壁に傷を付けられそうな気がする。

 ところが最後の最後に、何故か上半身裸になった伯父さんと祖父ちゃんが筋肉を隆起させたポーズを決めながら、君達には筋肉が足りないからしっかり鍛えるんだぞと言われ、付こうとしていた心の壁への傷は付かずに終わった。


「申し訳ありません。我が家の男性は何故か代々脳筋気味でして」


 なんだかさっきまで抱いていた、二人に対するイメージが一気に崩れた。

 いや、これも伯父さんと祖父ちゃんなりのコミュニケーションなんだろうけど、筋肉に関してはうちの従魔達だけで十分です。もう筋肉はお腹いっぱいです。

 しかもリアン従姉さんも二人には及ばないものの筋肉質で、腹筋が割れているらしい。

 教えてくれた伯父さんに勝手にバラすなと文句を言っているけど、筋肉があって困ることは無いと一蹴されている。

 そりゃまあ、仕事上鍛えてあって損は無いだろう。でもそれが全てのように言うのは違うと思う。あとポーズは解いてくれ、見ていて暑苦しいから。



 ****



「最後のが余計だったわね」

「余計……だっ、た」

「最後のあれが無ければ、良い感じで終わってたのに」


 夕暮れの中、アトロシアス家からの帰り道で二人と感想を口にする。

 まさか母さんが家を出たのは、あの筋肉主義な点も関係しているんだろうか。


「良い人達なんでしょうけど、最後の最後で台無しだったわね」

「筋肉は……もう、いらない……」


 筋肉な身内でごめんなさい。


「で、どうするの? 家を買うまでは、あそこでお世話になる?」

「いや、いいかな。肉親との同居はまだちょっとな……」


 まだそこまで踏み込めるほど、心の壁は解消できていないからな。

 それに、あそこに住んでいると一緒になって鍛えられそうな気がする。主に筋肉とか筋肉とか筋肉とか。

 仕事上は鍛えてあって損は無いと分かっていても、そこまで筋肉を鍛えるのには固執していないし。

 俺としては、たまに会いに行くぐらいがちょうどいいと思っている。


「同……感。筋肉は……もう、いい」


 ただでさえ、従魔二体が筋肉だからな。


「そういえば……あの子達、今日は、寝て……ばっかり、だね」


 うん? ああ、従魔達か。さすがにそろそろ起きていると思うぞ。

 でもロシェリの言う通り、今日はやたら寝ていたな。昨日の疲れが残っているにしても長い。

 念のため、帰ったら「完全解析」で状態を確認しておくかな。

 そう思いながら宿に戻って厩舎へ寄ったら、マッスルガゼルもコンゴウカンガルーも起きていたけどぐったりしていた。


「ちょっと、これ大丈夫なの?」

「病、気?」


 さすがにこれは疲れどころじゃないかもしれない。

 すぐに「完全解析」を使って確認し、ちょっと呆れた。


「大丈夫だ。単なる二日酔いだ」

「「へっ?」」


 だって、そう表示されてるから。

 新しい情報と一緒に。




 マッスルガゼル 魔物 雄


 状態:二日酔い


 主人:ロシェリ


 体力868 魔力96   俊敏721  知力497

 器用408 筋力1025 耐久1029 耐性572

 抵抗510 運374


 スキル

 突進LV5 跳躍LV3 蹴術LV5 威嚇LV4 屈強LV4

 威圧LV2 不屈LV1


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法




 コンゴウカンガルー 魔物 雄


 状態:二日酔い


 主人:ジルグ・グレイズ


 体力824 魔力72   俊敏698 知力447

 器用489 筋力1006 耐久999 耐性517

 抵抗512 運386


 スキル

 拳術LV5 跳躍LV3 屈強LV4 動体視力LV2

 蹴術LV1 虚撃LV1


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法




 今日はやたら寝ていたのは、これが原因か? まったく、昨日やたら酒飲んだからだぞ。

 水魔法で空の桶を満たしてやったら、喉が渇いていたのかガブガブ飲みだしたよ。

 だけどそれよりも、新しく見れるようになった情報だ。

 閲覧可能ってことは見ても見なくてもいいってことだから、選ばないと表示されないようになっているのかな。

 身体情報は身長とか体重だろうからともかく、適性魔法を見られるのは大きい。試しに適性魔法ってところを選んでみると、無しと表示された。魔法を使える魔物はそうそういないから、これは特に問題じゃない。後で俺達のも確認しておこう。

 そして新しい情報が見えるようになったってことは、「完全解析」のレベルが上がったな。

 昨日の戦いでスキルの入れ替えのため結構使ったから、それが理由だろう。


「どうか……したの?」


 考え事をしていたからロシェリから声を掛けられた。

 一先ず部屋に戻るよう促し、部屋に着いたら「完全解析」のレベルが上がって新しく見れるようになった情報に、適性魔法があったことを教えた。


「ちょっ、それ本当なの?」

「適性魔法……知りたい」


 そうだよな、使えるか使えないか分からない魔法を一つ一つ試して調べる手間が省けるんだから、誰だって知りたいよな。

 早速調べてみることになり、まずは「完全解析」を使用。




 ロシェリ 女 15歳 人間


 職業:冒険者


 状態:健康


 従魔:マッスルガゼル


 体力152 魔力816 俊敏120 知力715

 器用167 筋力112 耐久382 耐性398

 抵抗633 運238


 先天的スキル

 魔飢まうLV6 衝撃緩和LV4 能力成長促進LV2


 後天的スキル

 光魔法LV6 氷魔法LV5 治癒魔法LV6 雷魔法LV6

 整頓LV3 精神的苦痛耐性LV2 回避LV2 騎乗LV2

 闇魔法LV4


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法




 アリル 女 17歳 犬人ハーフのタブーエルフ


 職業:冒険者


 状態:健康


 体力613 魔力749 俊敏725 知力668

 器用762 筋力326 耐久391 耐性417

 抵抗524 運269


 先天的スキル

 活性化LV6 色別LV3 魔力消費軽減LV4

 能力成長促進LV2


 後天的スキル

 弓術LV7 解体LV4  料理LV4 氷魔法LV6

 採取LV3 風魔法LV6 潜伏LV3 付与魔法LV5

 夜目LV2 複射LV2  連射LV2


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法




 しばらく見ていなかったけど、能力の数値もスキルのレベルもしっかり上がっている。

 従魔達の「不屈」とか「虚撃」のように新しいスキルは習得していないものの、数値の上では軒並み上昇しているから問題無いだろう。

 さて、肝心の適性魔法はと……。




 ロシェリ

 適性魔法:闇 光 治癒 雷 氷

 *適性の高い順




 アリル

 適性魔法:風 付与 氷 植物

 *適性の高い順




 へえ、これって適性の高い順で表示されるのか。

 そうなるとロシェリは、一番適性のある闇魔法を最後に習得したのか。ちょっと勿体ない気がするけど、適性については試してみないと分からないから仕方ない。


「どう? 新しい、魔法……何が……ある、の?」


 期待しているのを裏切るようで悪いけど、もう適性のある魔法は無いから、新たな魔法系のスキルを習得することはできない。

 その事を教えると、わくわくしていた様子が一転してがっくりと落ち込んだ。

 一方のアリルは、まだ習得していない植物魔法に適性が有る。

 前に本で見た解説によると攻撃性は低いものの、妨害や補助に秀でている支援向きの魔法らしい。おまけに植物の育成を手助けできるから、開拓地では重宝されるともあった。

 それと、適性の有る人が少ない珍しい魔法だとも書かれていた。


「植物魔法? また珍しいのに適性があるのね、私」


 尻尾を振ってちょっと嬉しそうにしているアリルは、早速練習をしてみると言って両手の間に魔力を集め、植物への変換を試みだした。

 適性は他のに比べて低いから時間は掛かるだろうけど、頑張れ。

 ついでに身体情報はどんな感じで表示されるのか、確認しておくか。

 えっと、身長、体重、胸囲、胴回……。悪い二人とも、体重とスリーサイズという女性が気にする四つの数字を見てしまった。

 体重が軽いのは知っているし、体つきに関しては昨夜に直接見たから分かっちゃいるけど、一応心の中で二人に謝っておきます。ごめんなさい。

 さて、気を取り直して俺の方も見ておこう。




 ジルグ・グレイズ 男 15歳 人間


 職業:冒険者


 状態:健康


 従魔:コンゴウカンガルー


 体力1023 魔力812 俊敏879 知力797

 器用856  筋力821 耐久837 耐性458

 抵抗467  運306


 先天的スキル

 入れ替えLV6 完全解析LV6 灼熱LV8

 能力成長促進LV3 魔力消費軽減LV7 逆境LV5

 剛力LV4 活性化LV3 体力消費軽減LV3


 後天的スキル

 算術LV2 速読LV2 夜目LV1

 飛槍術LV1【槍術LV11】 水魔法LV10

 自己強化魔法LV10 空間魔法LV7 動体視力LV9

 暗記LV3 斧術LV9 槌術LV8 土魔法LV8

 風魔法LV8 火魔法LV8 咆哮LV6 威圧LV5

 強振LV4 料理LV1 解体LV2 刺突LV2

 硬化LV1


 閲覧可能情報

 身体情報 適性魔法



 ああ、そうだ。ブラストレックスから「硬化」スキルを「入れ替え」で入手したんだった。

 こいつは表皮や筋肉の耐久性を上げる防御系スキルだから、使えるっちゃ使える。

 でも「屈強」があれば効果が増幅するから、従魔のどっちかにあげようかな。だとしたら、タンク寄りのマッスルガゼルが適任だろう。そんで向こうからは習得済みの「威圧」を貰ってレベルを上げておこう。

 そんで俺の適性魔法はどうかな。




 ジルグ

 適性魔法:水 火 自己強化 空間 風 土

 *適性の高い順




 残念、俺も適性が有るのは全部習得していた。

 もう一つか二つあったらなと思っていたけど、そう甘くはないか。

 しかし俺達、「能力成長促進」スキルのお陰で数値の方はだいぶ伸びたな。でも、それだけじゃ駄目だってことを何度も痛感させられたのも事実だ。

 今後はスキルのレベルはともかく、能力の数値についてはあくまで基準程度に捉えて鍛えていかないと。

 でもどうやろうか……。そうだ、今度呼ばれた時に肉親慣れも兼ねて伯父さん達を頼ってみよう。

 あの髭熊でも良さそうだけど、今朝の件があるから無しで。

 ……さすがにそれは、筋肉で解決しようとはしないよな?


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