入れ替えて気づかれる
ようやくエルフの集落が見えてきた。
集落の手前には、今から出発しそうな捜索隊の姿がある。
それを見たアリルは無事に帰ってこられたことを喜びながら駆け出し、両親の姿が見えたのか手を振りながら両親を呼ぶ。声が届いた捜索隊のエルフ達はアリルが帰って来たって笑顔を向けたけど、それは僅かな時間だけだった。
全員の表情が嫌悪や軽蔑、憤怒を感じさせるものへ変化していく。
「ジルグ……君。なんか、不味いような……」
さすがはロシェリ。表情や雰囲気の変化に敏感だ。
念のため注意を向けながら様子を見ていると、睨むような目つきをした一人が数歩進み出て、怒気を込めた声で叫んだ。
「こっちへ来るな! そこで止まれ!」
「へっ?」
明らかな拒絶の言葉にアリルの足が止まる。
「なんだ、その姿は! 貴様、エルフが神より施してもらった恩恵を忘れ、禁忌を犯したな!」
「えっ、で、でもそうしないと」
「言い訳は聞かん! 貴様のような背信者は、二度と集落に入る事は許さん! すぐに去って、二度とここへ来るな!」
後ろに控えているエルフ達もそうだそうだと同意の声を上げ、敵意を向けながら武器を掲げた。
まさかそんな反応をされるとは思っていなかったアリルはよろめき、呆然としながら立ち尽くす。
「お父さん……お母さん……」
消えそうなほど弱々しい声で両親を呼ぶと、集団の中にいるライトエルフの女性と犬人族の男性が進み出て来た。あれが両親なんだろうが、どちらの目にも氷のような冷たさを感じる。
何で娘が生きて帰って来たのに、そんな目をしているんだ。
「アリル。あなたはもう、私達の子ではないわ」
「えっ……」
「神への恩を忘れ背信行為を犯した者は永久追放。それが掟なのは知っているだろう」
エルフでない父親からも拒絶の意思を伝えられたアリルは、見るからに困惑しだした。
現状を受け入れられずオロオロしながら、早口に理由を喋りだす。
「で、でも、そうしないと私、死んじゃってたんだよ? 大怪我しちゃって、それを治すための「活性化」を使うために何かを食べなくちゃいけなくて。でも、手元にはお父さんへのお土産のウサギしかなくて」
必死に理由を説明しているアリルだけど、彼らはそれを聞いても表情も雰囲気も変えない。
聞く耳は持っていても、過程がなんであれ結果を受け入れないってか。どうやらタブーエルフになるっていうのは、俺達が思っていた以上に厄介な事だったようだ。
そんな空気をアリルも察したのか、縋るような表情で両親に問いかけた。
「お父さん、お母さん。確かに私、タブーエルフになっちゃったけど、生きて帰って来たんだよ?」
「それがどうしたのかしら?」
「っ! こうしなきゃ、生きて帰って来られなかったんだよ! お母さんは、私が死んでも良かったの!?」
「タブーエルフになって戻って来るより、死んでいた方が何倍も良かったわ」
ちょっと待てよ。それが実の親の言う事か?
エルフにとってタブーエルフがどういう存在なのかは分からなくとも、親として今のは言っちゃいけないってことくらいは分かる。
苦渋の決断をして生きて帰ってきたのに、死んでいた方が何倍も良いってなんだよ。それでも親かよ。
アリルがショックを受けて顔を真っ青にして、今にも崩れ落ちそうになっているのを見ても何の反応も示さない。なんだか余計に苛立ってきた。
いくらそれがエルフにとっての常識とはいえ、生きて帰って来た娘に対する言い方じゃないだろ。せめてもうちょっと申し訳なさを見せるとか、生きて帰って来たことを喜びつつも掟だからと仕方なさそうに追放するとか、もっとやり方があると思う。
どうやらロシェリも思う所があるようで、杖を握る手に力が入っている。
「お、お父さん……」
「俺に期待するな。我が犬人族は何より掟を順守する。俺はエルフ族が神との契約を守り続けているその心に感銘し、エルフ族の生活を受け入れこの集落に来た。だから、それを破ったお前は許せぬ」
「そんな……」
「掟を破って無様にしがみつく生に意味は無い。まだ死体で帰ってきた方が、誇りある死として受け入れたぞ」
……「完全解析」。アリルのスキルから……「採取」と「料理」と「解体」をそれぞれLV1分なら問題無いかな。対象は……両親の先天的スキルをLV1分ずつと、最初に拒絶の声を上げた奴の「付与魔法」スキルをLV1分だけにしよう。そんじゃ、「入れ替え」スキル発動。
ここへ来るまでの間に俺の「速読」と「暗記」がLV3になっていたから、LV2分ずつをエルフ達が持っている「風魔法」と「土魔法」と「動体視力」の各スキル。それと「水魔法」もLV1分ずつもらっておこう。ロシェリは……入れ替えに使うスキルのレベルが足りないから、次の機会に優先するってことで今回は無しにしよう。代わりにあそこにいる奴らだけでも、適当にスキルを入れ替えてぐちゃぐちゃにしておくか。
さっきまで心配していたくせに、タブーエルフになったと分かった途端にこれなんだ。入れ替えたって問題無いだろう。ちょっと痛い目に遭いやがれ。
「あっ……うっ……」
父親からも拒絶されたアリルがよろめき、崩れ落ちて俯く。これ以上アリルを放っておくのは不味いな。
連れて下がろうと思って歩み寄ろうとしたら、ダークエルフの一人がさっさと出て行けと叫びながら石を拾って投げた。しかも直撃コースで、アリルは避けられる状態じゃない。
「ちっ!」
助けに入るのは無理だから、咄嗟に「入れ替え」スキルで投げられた石と視界にあった落ち葉の位置を入れ替える。
投げられた訳ではない落ち葉は宙を揺れながら地面に落ち、石は投げられた勢いのまま地面を数回転がって止まった。
石が一瞬で落ち葉に変わったもんだから、エルフ達は呆気に取られている。
「えっ?」
「なんだ、今のは……」
今のうちにアリルに肩を貸して立たせ、コンゴウカンガルーとロシェリの手も借りてマッスルガゼルに乗せて下がらせる。
護衛の意味も兼ねてコンゴウカンガルーを傍に付かせ、俺が前に出てアリルの両親へ尋ねる。
「いいんですか、実の娘へあんな事を言って」
「当然です。どんな理由があろうと禁忌を犯したのですから、手心を与える余地はありません。それと、あの子はもう私の娘ではありません」
……言葉だけじゃなくて表情まで冷たいままかよ、この女は。しかもエルフじゃない父親の方まで同じ表情だし。
うん、やっぱりスキルを入れ替えておいて正解だな。八つ当たり? やることが小悪党? 何とでも言え。
アリルの様子はとても放っておけなかったし、エルフ達の反応と対応にもムカついたから。大体、俺がスキルを入れ替えた奴らだってそんな感じで入れ替えてたんだし、問題無いだろう。
「一応聞きますが、あなた方があの子をタブーエルフにした訳ではないですよね?」
「そうする理由がありません」
「でしょうね。あなたからは動揺の色が見えませんから」
色? あっ、そうか。さっき「完全解析」を使った時に見たアリルの母親の先天的スキルは、「色別」っていう感情を色で見抜くスキルだったか。使えそうだからLV1分だけ「入れ替え」でアリルに渡したから、よく覚えている。
「タブーエルフになってでも生きたいと思うのは、間違いなんですか」
「間違いも間違い、大間違いよ。エルフにとって神からの恩恵に背くことは、仮令生きる為でも大間違いなのよ。神への恩返しは、エルフとして生きてエルフとして死ぬ事で成し遂げられるのよ」
今やっと分かった。こいつらは狂信者なんだ。だから神に逆らうこと、歯向かうこと、背くことは全て否定してそれをした奴を拒絶する。
おそらくはここに住んでいるエルフ以外の種族もその影響を受けているからこそ、犬人族の父親も同じ反応を見せている。掟がどうとか言っていたけど、結局はそういうことだ。
この様子だと、集落の大人は全員そんな感じっぽいな。
「せめてもの情けで、彼女の私物ぐらい渡してくれませんか?」
「できません。汚れた者の私物を焼き払って浄化しなくては、背信者を出してしまったことへの謝罪になりませんから」
今すぐにでもハルバートを抜いて斬りかかりたい。
別に金を寄越せとか言っている訳でもないのに、私物すら渡さないのか。しかも浄化のため、全部焼き払うとか。
駄目だ、これ以上はどれだけ話しても無駄だ。むしろこっちが不愉快になるだけだ。
「そうですか。では、失礼します」
さっさとここから離れよう。
怒りの感情を押し殺して背を向け、俯いたままのアリルを慰めているロシェリに行くぞとだけ声を掛けて、俺達はエルフの集落を後にした。
もしも他のエルフ達も同じようなものなら、二度とエルフの集落や村になんか立ち寄るかと思いながら。
****
エルフの集落を後にしてしばらく経った。
アリルはマッスルガゼルの背に乗ったまま、ずっと黙ったまま俯いている。
途中でマッスルガゼルの隣を並んで歩いて顔を覗き見たら、呆然自失としていて声を掛けられる雰囲気じゃなかった。
そのまま俺もロシェリも声を掛けられず時間だけが経過して、沈黙が段々と重くなっていく。
いつものお人好しで放っておけなくて、ついそのまま連れて来ちゃったけど、これどうすればいいんだろう。
「ねえ。ちょっと……休まない?」
おっと、ナイスタイミングだロシェリ。一息入れればアリルも少しは気分が変わるかな。
「お腹も……空いてきたし……」
結局それかい! というかフォレストシープ食っただろ。
アリルのために用意したからさほど量がなかったとはいえ、ちゃんと食ってたのにどうしてもう腹が減るんだ。中途半端に食ったから、胃が刺激されたのか?
まあいい。空気を変える意味でも休息を取って、ロシェリには飯を食わせておこう。
そういう訳で休息に入った訳だけど、アリルは膝を抱えて座ったまま俯いて落ち込み続けている。
無理もないか、仮令タブーエルフになっても生きて帰れば暖かく迎えてくれると思っていたのに、実際はあんな冷たい対応をされたんだから。
尻尾は微動だにしないし、尖った長い耳もダランと下を向いている。というかその耳、曲がるのか。犬人族の血が混じっている影響かな。
ともかく、ここはどんな形ででも気持ちを持ち直すまでは放っておいて、自分の中で整理するのを待つのがいいかな。
「……一緒に、食べる?」
そこで放っておいてあげるって選択肢はないんですか、ロシェリさんや。事前に言わない俺も俺だけど、少しは空気を読んで察してやりなよ。
ところが焚き火で調理した鱗狸の串焼きを差し出されたアリルは顔は上げず、少しそっちを向くと手を伸ばして受け取った。
あれ? 反応有り? なんかアリルに対する俺の気遣い、全部杞憂に終わってないか?
「……」
脇目でじっと肉を眺め、ゆっくり顔を上げたアリルは小さく肉を齧った。
「……こんな時でも、お腹は空くのね」
生理現象だから仕方ないな、こればっかりは。
ただ死んだような目でそう言うのはやめてほしい。最後の晩餐じゃないんだから。
「ねえ……。私、どうすれば正解だったのかな」
「どうすればって?」
「どうすれば、タブーエルフにならずに生きて帰れたのかなってこと」
「……今さら何を言っても、現状は変わらないぞ」
「分かってる。でも、生きて帰りたくてした判断が、間違いだったのかなって思っちゃって」
自信満々に後悔していないって言っていたのに、いざタブーエルフへの現実を突きつけられたら後悔しているってところか。
俺もまさかあんなだとは思わなかった。タブーエルフになった理由を聞いても表情一つ変えず、全てを否定して拒否して拒絶して私物すら渡されずに追い出すなんて。
そんな目に遭えば、誰だってこうなるか。だけどこれは、どう答えるべきか……。
「えっと……ね。間違いだけど、正解でもある……と、思うよ」
おお、ここでロシェリが意見を言うなんて。
人見知りのはずなのに、一緒に飯を食って少しは心を開いたのか?
「どういう意味よ……」
「エルフ的には、間違いで……アリルさん的には……正解」
エルフの観点からすればタブーエルフになるから、生存のためとはいえ間違い。でも命の危機にあったアリルが生きて帰りたいと思ってやったことは、生きるための行為として正解っていうことかな。
「完璧な正解、完全な間違いは無いってこと?」
アリルのまとめにロシェリが数回頷いている。
これをアリルがどう思うかはともかく、俺はロシェリの意見に同意する。
人生なんてそんなもんだって。実家での生活で俺的には正解だと思っての行動も、あの家族にとっては間違いだったから暴力を受けて暴言を浴びせられた経験は何度もある。でも守ってあげた使用人にとっては、それが正解だった。
正解や間違いなんて、結局は自分や受け取る側の問題っていうことだな。
「あんたも、そういうことあったの?」
「うん。虐められないよう、黙ってたら……なんとか言えよ、とか、余計に……虐められて……」
なんか変なトラウマでも思い出したか? でも肉を食べる手と口は止まらない。
「そうだったわね。あんたはそういう人生歩んでたのよね。悪いわね、嫌なこと思い出させて」
「大……丈夫」
本当に大丈夫か?
食べるのは止まらないから多分大丈夫だとは思うけど、一応フォローは入れておこう。
「そうだな。お互いあんな所には帰らないんだから、安心してやっていけるよな」
俺も実家に帰るつもりはこれっぽっちも無い。
世話になった使用人達は気になるけど、ああして送り出してくれたんだから大丈夫だって信じている。
「そう……だね。帰らないん、だもんね」
ふう、どうやらなんとかなりそうだ。
悪い思い出の場所からは逃げて、二度と戻らないに限る。
スキルの入れ替えっていう、ちっこくてみみっちい感じの復讐もしたしな。
「あんた達、帰るつもりは無いの?」
「無い……よ」
「誰があんな実家に帰るかって」
俺達の返答を聞くとアリルは食べる手を止め、しばし考えるような素振りを見せた。
今ので何か思うことでもできたか?
「そう……よね。帰る必要なんて、無いのよね。あんな場所に……」
……うん? なんか様子が。
「タブーエルフになってまで生き延びて帰ったのに、慰めの言葉一つくれない家族やあいつらのいる集落になんて、帰る必要なんかこれっぽっちも無いのよね」
これはひょっとすると怒りが爆発する五秒前か?
一応耳は塞いでおこう。
「こっちからお断りよ、あんな場所! 二度と帰るか! 二度と親子と思うか! 二度と故郷と思うか!」
やっぱり叫んだか。突然の大声にロシェリだけでなく、マッスルガゼルとコンゴウカンガルーも驚いてビクビク怯えている。
「私がどんな思いで生き抜いたと思ってんの! どんな思いでタブーエルフになる決意をしたと思ってんの! どんな思いで帰ったと思ってんの、あいつら!」
今度は立ち上がって怒りを口にしながら地団駄を踏みだした。
だけど目には薄っすら涙が浮かんでいるのが見えるから、ただの怒りじゃないのが分かる。
昨日まで共に送ってきた日々を思い出して、悲しんでいるんだろう。生憎と俺は家族に対してそういう感情が湧かなかったけど、それぐらい察することはできる。
「私が……私が……うぅぅぅ」
とうとう本格的に泣きだした。
怒りを解放したのにつられて湧きだした悲しみを、押さえつけられなくなったんだろう。
耳を塞いでいた両手を放した俺は、今度こそ放っておいてやろうとロシェリにも目配せをした。頷いたから伝わったと思いきや、ロシェリは串焼きを地面に刺して立ち上がった。
「分かってる。私達は、分かってるから……大丈夫……だよ」
いやいやいや、今の目配せは慰めてやれって意味じゃないんだけど?
以心伝心とまでは言わないけどさ、せめてそれぐらいは察してほしかった。そして今までの流れからして、ロシェリの行動の方が正しいんだろうな。
「ぐすっ……本当に?」
「でなかったら……ここで、こうして、一緒にいない、よ?」
「うあぁぁんっ!」
ほらやっぱり。構ってもらえる相手ができたから、抱きついて泣いてるし。
しかし、ここまで俺の読みが外れるとは。俺、女心分かってないのかな?
とか思っていると。アリルの泣き声に混じってなんか苦しそうな声が聞こえてきた。
「はな……苦し……体……折れちゃ、う」
あっ、ヤバい。抱きつかれて強く締め付けられているせいで、体力が低いロシェリが苦しそうだ。
さすがにこれは放っておけず、止めに入ってどうにかロシェリを救出した。
「ごめん。色々あったから、つい力が入っちゃった」
「大……丈……夫……だよ……」
真っ青な顔で息を切らして言われても、説得力なんて無いぞ。
まあこっちは自然に回復するだろう。アリルも落ち着いたみたいだし、ちょっと話をしよう。
「じゃあ落ち着いたところで、これからどうするつもりなんだ?」
「……むしろ、どうすればいい?」
分からんのかい。
「身寄りは無いし、他のエルフの集落や村も頼れなさそうだし、何より……」
「何より?」
「着の身着のままの無一文だから」
あっ、そうか。薬草採取に行っていたから金なんて無いし、食料も持っていないんだったな。私物も渡してもらえなかったから、手元にあるのは背中にある弓と腰に差してある解体用のナイフだけみたいだ。矢はおそらく、川に落ちた時に流されたんだろう。
するとロシェリがこっちを向いた。さっきまでトレーニングっぽいことをしていたマッスルガゼルとコンゴウカンガルーも、いつの間にかこっちをじっと見ている。
はいはい、分かりましたよ。俺がいつものお人好しをすればいいんだろ。
「だったら俺達と行くか? 形は違えど、実家や孤児院を追い出された身だ。あんな形で追放された奴を、放ってはおけない」
手を差し伸べながら同行の提案をすると、目を見開いてきょとんとした。
「……いいの?」
「こちとら自覚有りのお人好しだ。気にすんな」
「私、タブーエルフよ? この先に出会ったエルフからも、何を言われるか分からないわよ」
「勝手に言わせとけ。俺達は気にしない。なあ?」
話を振られたロシェリは小さく何回も頷いた。
「本当に、いいの?」
「無理にとは言わない。嫌なら断ってくれて構わないぞ」
「行く! というか連れて行って! 助けてもらった恩返しもしたいし、一人で知らない場所に行って生活するのも怖い!」
差し伸べた手を両手で強く握ったアリルは、叫ぶようにそう言った。
前半はともかく、後半は意外な理由だな。
ひょっとしてさっきの集落の出来事で、ちょっと対人恐怖症になりかけているのか?
他のエルフからの目や言葉も気にしていたし。
「だったら俺達は今から仲間だ。よろしくな」
「よろ……しく」
「うん、よろしくね!」
おおっ、今日一番のいい笑顔もらいました。
こうして俺達に新たな仲間が増えた……まではいいんだけど、一つ失念していた。
「あら? なんか二人の体に薄っすら発光が見えるような……」
発光? そんなもの無いぞ。
「なんか薄く青い光が見えてるし、感情っぽいのが読み取れる。えっ? これってひょっとして、あの女の「色別」?」
あの女って母親のことか。
って、しまった! 使えそうだからつい入れ替えたけど、「色別」は目に見えるスキルだから持っている母親はともかく、持っていなかったアリルには気づかれるじゃないか!
「どうして、私に「色別」が?」
これは駄目だ、誤魔化しようが無い。
仕方ない。ロシェリへ説明する機会も窺っていたし、正直に白状するか。
「それ……俺が原因だ」
「へっ?」
「えっ?」
軽蔑、されないといいな。
下手したらここで別れることになるかも。アリルとは仲間になったばかりなのに。




