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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
20/116

生きるためなら


 出発直前に駆け込んできた子供達から、昨日会ったハーフエルフの少女アリルが帰って来ないから助けて欲しいと言われた。

 食堂の一角を借りて詳しく話を聞いてみると、今日は依頼を受けずに一緒に遊んでもらう約束をしていたらしい。

 ところがいつも時間を厳守するアリルが来ないので彼女の家を訪ねると、昨日依頼を受けに行ってから帰っていないと聞かされる。

 不安になっていたアリルの家族と共にギルドへ行き、どんな依頼を受けたのか確認すると、半日もあれば終わりそうな薬草採取の仕事だった。しかも彼女は似たような採取依頼をこれまでに何度も受けていて、丸一晩戻らないのはおかしいと判断された。

 生憎とギルドが直接これの対応に動くことはできないが、話を聞いていたエルフの冒険者数名が同じ集落で育った仲間として捜索に名乗りを上げた。さらに子供達は俺達のことを思い出し、急いで駆けつけてきたということだ。


「なるほど。そういうことか」

「頼むよにーちゃん! 俺達の宝物をあげてもいいから、アリルねーちゃん探してくれよ!」


 ダークエルフの少年がそう言うと、子供達は小さな袋やポケットから取り出した物を宝物と言いながらテーブルに広げていく。それは見た目が綺麗なだけの石や玩具のナイフ、数枚の銅貨にゴミともガラクタとも取れるよく分からない品々ばかり。全部に「完全解析」を使っても、本当の意味でお宝は一つも無い。

 だけど子供達からすれば、これは俺達への依頼料のつもりで出したんだろう。

 そうまでされた上、件のアリルにはあんな形とはいえ助言をもらった身。加えてお人好しな俺が、この状況下で断ることなどできようか。無理だ、できないな。

 ロシェリの方はどう思っているかと目配せすると、被ったフードを押さえて顔を隠しつつ呟いた。


「任せる、よ」


 好きにしろって意味なら、もう断る理由は無いな。


「分かった、受けよう。たけどこの宝物はいらないから、自分達で持っていろ」

「えっ? でも冒険者に依頼するには、ほーしゅー必要なんだろ?」

「報酬は必要無い。昨日、俺達の従魔と遊んでくれただろう? その礼だ」


 断っておくが、かっこつけたわけじゃないぞ。子供から報酬をもらうのは、なんとなく気が引けるだけだ。

 だから子供達よ、そんなカッコイイとか素敵とか言いながら目を輝かせて見ないでくれ。そしてロシェリも似たような空気を出して、こっち見ないでくれ。

 とりあえず筋肉の確認をしていた従魔達を連れて集落を出て、子供達が冒険者ギルドで聞いたという薬草の群生地へ向かうことにした。

 いつも通りロシェリはマッスルガゼルの背に乗り、俺はウィンドサーチを展開して山中へ入る。件の群生地とやらは集落から少し離れているものの、決して迷うような道や地理でもない。捜索に名乗りを挙げ、先にここへ来ていた三人のエルフと合流できたから意見を求めたものの、彼らも首を傾げるばかりだ。


「こんな場所で迷うことは無いはずなんだが……」

「それにアリルは冒険者になってから何度もここへ来ているから、この辺りにも慣れているはずだ」

「一体どうしちゃったのかしら?」


 手がかりらしい手がかりは無く、地面を嗅いでいるマッスルガゼルの嗅覚にちょっと期待が集まったけど、草を食べだすと期待は消え去った。

 そんな時に地面を見ていたライトエルフの青年が声を上げた。


「皆、これを見てくれ」


 そこにあったのは、獣の物と思われる複数の足跡だった。


「足跡からすると鹿だな。それも複数」

「この辺りの草が食べられた形跡もあるから、おそらくはここにある薬草を鹿に食べられてしまったんだろう」


 もしもエルフ達の予測通りなら、アリルは別の場所へ採取に向かった可能性が高い。

 とは言っても、この辺りにはここ以外に群生地は無いらしく、行き先が予想できないそうだ。

 一先ずは二手に分かれて捜索範囲を広げようということになり、三人のエルフは茂みを搔き分けて山頂方面へ、俺達は付近にあった道幅の狭い古い山道を行ってみることにした。


「どう? 反応……あった?」

「全然。この辺りに反応は無い」


 捜索に役立つから使っているウィンドサーチに引っかかるのは小動物ばかりで、それ以外の反応は無い。

 山は広いからウィンドサーチじゃ全体は探れないとはいえ、捜索は難儀しそうだ。

 そう思いつつ歩き続けた先で見つけたのは幅の広い川で、その先は渓流のようになっていた。高さが割とあって幅が広くて角度もあるから、近くで見るとなかなか見ごたえがある。

 深そうだし結構な急傾斜だから水の勢いもあり、渓流というよりもちょっとした滝って感じがする。隆起した岩が結構あるから、落ちて流されたら大怪我しそうだ。

 生憎と対面に行く橋が壊れていたから引き返そうとしたら、ウィンドサーチの端の方にエルフの反応が一つあった。


「……えっ?」


 反応があった位置からして、この渓流の下流だ。


「どうか、したの?」

「いや、まさか……」


 垂直とまではいかないものの、渓流も傾斜も結構な急角度。

 しかもその先にエルフの反応が一つ。そして俺達が捜索中のアリルはハーフエルフ。生憎とウィンドサーチじゃハーフエルフなのかまでは分からないけど、これはもう確定的かもしれない。


「……見つけたかもしれない」

「アリル、さんを? どこに……いるの?」

「この先」


 渓流が流れる傾斜を指差すとロシェリは顔を真っ青にした。


「この……先?」

「そう」

「この……急傾斜の?」

「ああ」

「山を……下っている、の?」

「いや、そんな動きは無い。反応が同じ場所から動いていないから」


 せめて動いていれば移動中なんだ、生きているんだって安心できるのに全く動きが無い。

 死んでいる場合は探知に反応が無いから生きてはいるんだろうが、動かないのは不安だ。もしもこの反応がアリルなら、あの軽装のまま山中で一晩を過ごしていたんだから。


「急ぐぞ」

「う、うん」


 どうにか間に合ってほしいと祈りながら、滑り落ちないよう木々に掴まりながら慎重に傾斜を下っていく。

 ただマッスルガゼルの背に乗っていたロシェリは、降りる前にマッスルガゼルが傾斜を降りだしたもんだから、悲鳴を上げてしがみついている。さすがは山育ちの筋肉魔物、このくらいの傾斜は問題無いってか。

 その後を追うように跳ねながら傾斜を下ろうとするコンゴウカンガルーは、転んでしりもちをついてそのまま滑り落ちて股間を木で強打して悶絶している。……うん、見なかったことにしよう。

 一応「完全解析」。あっ、良かった。軽傷で済んでいるし性別も雄のままだ。

 そんな出来事を挟んで慎重に傾斜を下り終えると、先に下りていたマッスルガゼルの背中でロシェリがぐったりしていた。よほどの動きで下ったからか、悲鳴が聞こえっぱなしだったもんな。コンゴウカンガルー? どうにか下りてきて、俺の隣でピョンピョン飛び跳ねている。股間を押さえながら。


「大丈夫か、ロシェリ」

「……駄目。気持ち悪い……」


 こりゃ駄目だな。反応はそんなに遠くないし、ロシェリにはここで休んでもらって俺とマッスルガゼルで探しに行こう。

 マッスルガゼルから降りてもらったロシェリと、その護衛と休息を兼ねてコンゴウカンガルーには待機してもらい、反応のある場所へ向かう。

 川沿いに進んでいく間もアリルらしき反応に動きは無く、同じ場所でじっとしている。これは下手に動かないようにしているのか、それとも動けないほどの怪我をしているからなのか。どっちにしても早く向かうべきだろう。

 早足で移動して到着したそこで見つけたのは、川の側でうつ伏せで倒れている誰かとその傍らに転がっている血まみれの小さい何か。

 倒れているのは服装と髪からしてアリルで違いないだろうけど、何かおかしい。


「大丈――えっ?」


 とにかくまずは安否確認をしようと声を掛けながら近寄ると、違和感の正体に気づいた。肌の色が違うんだ。髪は昨日と同じ金色のままなのに、肌の色が昨日までの白から黒へと変わっている。

 なんとなく嫌な予感を覚えつつ、近寄って再度声を掛けた。


「おい、大丈夫か」

「だ……れ……」


 弱々しい声と動きでこっちを向いた顔は、肌の色の違いはあれど確かに昨日見たアリルの顔だった。

 色々と気になる気持ちを抑え、次元収納から治癒用のポーションを取り出す。


「助けに来た。治癒用のポーションだ、これを」

「あぁっ!」


 飲めと言う前に奪うようにひったくられ、ガブガブ飲んでいく。

 ポーションの効果で傷は消えていき、内出血でもしていたのか赤黒い箇所も治っていく。

 さてと、ちょっと失礼して今のうちに「完全解析」を使ってみよう。嫌な予感と状態を確認するために。




 アリル 女 17歳 犬人ハーフのタブーエルフ


 職業:冒険者


 状態:軽傷 空腹


 体力497 魔力622 俊敏593 知力526

 器用594 筋力238 耐久294 耐性303

 抵抗411 運269


 先天的スキル

 活性化LV3


 後天的スキル

 弓術LV3 解体LV2 料理LV2 氷魔法LV2

 採取LV2 風魔法LV1 潜伏LV1 付与魔法LV1




 あっ、やっぱり。髪の色がライトエルフの金なのに肌が黒いからまさかとは思ったけど、宿の女将さんから聞いたタブーエルフになっている。

 おそらくは空腹に耐えきれず、あそこに転がっている肉を食べたんだろう。なんか強引に皮を剥いで、直接食いついた形跡がいくつもある。何の肉かと「完全解析」を使うと、ただのウサギだった。火を使った形跡は無いから、生で食ったのか?

 というか年上だったんだ。見た目からして、精々同い年くらいだと思っていた。


「ね、ねえ……」


 飲み終えたポーションの瓶を両手で包むように持ったまま、視線を向けたり外したりしながらなんか恥ずかしそうにしている。

 「完全解析」で年上なのは分かったのに、その仕草と真っ平な体つきで同い年どころか年下に見えるな。

 そう思っていたら腹の音が鳴った。俺のじゃない、アリルの腹からだ。

 次の瞬間には互いに沈黙。そしてアリルは顔を真っ赤にして俯き、上目遣いでプルプル震えながら告げた。


「食べ物……ない? スキルのせいで……お腹……空いちゃって……」


 うん? なんかデジャヴっぽいものを感じたぞ。



 ****



「うぐぅ……。悔しいけど、魔物の肉がこんなに美味しいなんて」


 次元収納に入れていたフォレストシープの肉を焼いて提供したら、なんか悔しがりながら尻尾を振って食べている。

 魔物を食べていいのか気になって確認したところ、もうタブーエルフになったから何を食べても問題無いらしい。その際にタブーエルフについての説明が必要か聞かれ、宿の女将さんに聞いたから不要だと伝えた。


「そう、肉は……絶対正義。鶏と、野鳥しか、食べられないのは……不幸」


 さっきまで気分が悪いってぐったりしていたのに、何でしれっと混じって食べてるんだロシェリ。

 状況を説明するため合流してから肉を焼いている俺も俺だけど、肉を出した瞬間に復活するお前もお前だ。

 そりゃあ、そろそろ腹が減ったと訴える頃だろうとは思っていたさ。でも本当に食うか。


「……本当に助かったわ。先天的スキルで致命傷っぽいのはどうにかしたけど、完全には治せなくて動けなかったから」


 一旦食べる手を止めたアリルは、恥ずかしそうにそっぽを向きながらお礼を言う。

 素直じゃないって子供達が言っていた割に、ちゃんとお礼は言えているじゃないか。態度は素直じゃない一端が窺えるけど。

 ただ尻尾は正直だ。さっきから右へ左へ揺れている。


「どういたしまして」


 しかし、先天的スキルでどうにかしたっていうのは、どういうことだろう。

 さっき「完全解析」を使った時に見れたアリルの先天的スキルは、「活性化」っていうスキルだったっけ。名前からしたら身体能力が向上しそうな感じがするのに、体の治癒にも使えるんだろうか。


「どんな……スキル、なの?」

「「活性化」ってスキルよ。食べた物か、体に溜まっているエネルギーを消費して、体を強化したり治癒能力を高めるの」


 へえ、つまりは体に備わっている能力を高めるってことか。それなら確かに治癒の促進もできるな。


「うん? 体に溜まっているエネルギー? それって要するに脂ぼ――だぁっ!」


 なんか無言でアリルから石を投げられた。俺、何か気に障ること言ったか?


「ちょっと! こっちは女の子なんだから、脂肪でぶっくぶくになって、お腹も腕も脚も顎もダルンダルンに弛んだ姿を想像しないでよ!」

「想像してない! 冤罪だ!」

「そりゃ私だってねえ。どうせ脂肪がつくなら、ムッチムチのお色気ムンムンになりたいわよ! おっぱいバインバインのボインになりたいわよ!」


 もしもし? なんか話題逸れてませんか?

 というか仮に理想通りの体型になれたとしても、「活性化」スキルを使ったら結局今の体型になるんじゃないかと思う。


「仕方ないじゃない! 体質なんだから! 理想通りの体型を目指して努力しても、太りにくい体質のせいで体型が変化しないのよ! お腹に脂肪すらつかないの!」


 普通、世の女性はその体質の方を羨むんじゃないのか?

 とりあえず、このままじゃなんだから話を元に戻さないと。


「ところで、なにがどうなって遭難していたんだ?」

「ああ、そういえば教えてなかったわね」


 冷静になったアリルの説明によると、群生地の薬草が食われていたから別の場所へ採取へ向かう途中、上流にあった橋を渡っている途中で橋が崩壊して川へ落下。

 泳げない彼女はそのまま流され、傾斜の所で隆起した岩に何度も体をぶつけながらも運良く川岸へ流れ着いた。ところが何度も岩にぶつかった体は重傷で、せっかく岸へ流れ着いたのに川から上がる事ができなかった。

 そこで僅かな脂肪を消費して「活性化」を使い、どうにか川から這い上がることには成功。

 しかし体は重傷のままで、放っておけば死んでしまう。「活性化」で治そうにも体にあった僅かな脂肪は既に消費してしまっている。だからこそ何かを食べ、そのエネルギーを使って体を治そうと思ったらしいのだが……。


「無かったのよ。道中で狩った、お父さんへのお土産用のウサギ以外は」


 一応エルフ用の保存食も持っていたそうだが、流されてしまったらしい。

 手元にあったのは父親への土産用に狩り、落とさないようにしっかり結び付けておいたウサギだけ。重傷の体では、食べられる物を探す余裕も無い。だから彼女は相当な葛藤な末、決断した。

 死にたくないという気持ちに従い、エルフにとって禁忌である食べ物を口にすることを。


「その結果がこの姿よ」


 神との契約に背いて食べてはいけないものを食べ、黒くなってしまった肌に触れながらアリルが呟く。

 食べたウサギのエネルギーで「活性化」を使い、どうにか致命傷を治したものの、今度はタブーエルフへの変化による脱力で動けなくなった。

 幸いにも脱力感は一晩で治まり、俺達が助けに来るまでは川の水を飲みつつウサギを食べ、「活性化」で重い怪我から順に治していたとのことだ。


「大変……だったんだ……ね」

「ええ。食べても「活性化」を使うとすぐに消化されてお腹が減っちゃうし、脱力感は半端ないし、治していない怪我は痛いし。私が何をしたっていうのよ」


 落ち込むアリルに掛ける言葉が思い浮かばない。

 どう声を掛けても間違いなような気がするし、色々あって大変だったみたいだから、ここはそっとしておいてあげた方がいいだろう。


「……後悔、してる?」


 ロシェリさんや? そっとしておいてあげないかい?


「後悔? そんなのはしてないわ」


 あれ? 話しかけても大丈夫だったっぽいぞ。


「お父さんもお母さんも、それに皆だって。死んだ私より、仮令たとえタブーエルフになっても私が生きて帰った方が嬉しいに決まっているもの。だから私はエルフのまま野垂れ死ぬよりも、タブーエルフになってでも生き延びる道を選んだの。後悔するはずがないわ」


 思っていたよりもしっかりしているのか、それとも強がっているのか。

 まあどちらにせよ、死にたくない、生き延びたいという至極当たり前の気持ちで、そのための最善の手段を実行したんだから納得はしているんだろう。


「さてと。それじゃあ体も動くようになったし、帰りましょうか」

「ん。ちょっと待って、これ……食べてから」

「……さっきから思ってたんだけど、ちょっと食べすぎじゃない?」

「ロシェリにとってはこれが普通なんだ」


 それでいてあの細さなんだから、信じられないよな。

 ついでに言うと、さっきから焼いてばかりで碌に食べてない俺が食う時間もください。



 ****



 あの場での食事を終え、集落への帰路を進む。

 道中での会話でアリルが、何故あそこまで肉に執着するのかマッスルガゼルに乗っているロシェリに尋ねた。そこでロシェリが生い立ちも含めて説明すると、なんか泣きだした。


「うぅぅ。辛かったわね。実の家族がいない上に、周りからそんなに虐めを受けていたなんて」

「でも……ジルグ君に、会えたから」

「何? あいつ、そんなにいい奴なの?」


 お人好しの自覚はある。


「私みたいのでも、受けれてくれたし。虐められても、ないし。それに……お肉、たくさん食べさせて……くれるから」


 最後のそれが一番の理由じゃないのか?


「ふうん。なんかこう、下心からじゃないの?」

「違う、よ! 何も、されてない、から!」


 そうそう。下心なんてありません。

 何度か湧き出そうになったけど、鋼の精神で持ち堪えたんだぞ。


「へえ、そうなんだ」

「それに……ジルグ君だって、家族から、冷たくされてたから」

「なにそれ、気になるから聞かせて」

「大した話じゃないぞ」


 別に隠すようなことでもないから、実家での生活の様子を喋ったらまた泣かれた。


「なんでそんな下らない理由で、実の家族から冷遇されなきゃならないのよ。それでも温かく接するのが家族ってもんでしょう」


 涙ながらにアリルが語るのは、まさしく幼い頃の俺が家族という存在に求めていたものだ。


「俺はロシェリに比べればまだマシだ。周りの人が良い人ばっかりだったから」

「そういう問題じゃないの! 実の家族からそういう扱いをされるのって、赤の他人からされるよりずっと酷いことなの! 血が繋がっているのに、どうしてそんな事ができるのよ!」


 まあな。印象で言えば、家族からの方が悪いのは明らかだよな。

 この後も終始俺達のことで色々喋る様子から、彼女がどれだけ家族や周囲に大事にされてきたのか、彼女自身どれだけ家族や周囲を大事に思っているのかが窺えた。だからこそ、家族から冷遇された俺と周囲から虐められていたロシェリに感情移入しているんだろう。

 そんな事に気づきながら前方を見ると、集落が見えてきた。

 本格的なアリルの捜索隊でも組んでいるのか、十数人のエルフによる集団の姿が見える。


「着いたみたいだぞ」

「あっ、本当だ。良かった、生きて帰って来れて」


 そんなホッとした様子の彼女に向けて、集落のエルフ達が向けたのは予想外の言葉だった。


「集落に入るな! すぐに去って二度と戻って来るな! エルフの裏切り者め!」


 どうやらタブーエルフになるっていうのは、俺達が思っている以上に拙い事だったのかもしれない。


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