今後について
王都での滞在は十日で終わることになった。
謁見そのものは早めに済んだものの、ゼインさんに王都での用事があったようで、それだけの日数が掛かった。
だけどその間、元実家で世話になった使用人や護衛の人達で、生存している人全員と再会。
彼らは元実家の件で国によって保護されており、既に何人かは紹介された新たな勤め先で働いているとのこと。
さらに町中をうろついている最中、ロシェリを虐めていた連中と遭遇して返り討ちにした一幕を挟み、ハルバートを売ってくれたドワーフと再会。
危うく死にかけたものの辛うじて助かり、今は復興に必要な物を作って生計を立てているそうだ。
そのドワーフへ女性ドワーフとベイルさんのことを伝えたら、震えながら余計な事は伝えないよう懇願された。
一体あのドワーフの過去に、何があったのだろうか。
「という訳で、無事に用事を終えて明日にはガルアへ帰る訳だ」
それに備えての準備も終わり、部屋で最後の一夜を過ごす。
「帰るか……。もうすっかり向こうが故郷って感じだね」
「いいじゃない、帰れる場所があるって言うのは」
「待ってる、人達も……いるし、ね」
確かに。今や故郷は王都じゃなくてガルアで、待っているのは元家族なんかじゃなくて、現家族のアトロシアス家の人達だ。
そういえばその元実家について、ゼインさんが色々と教えてくれっけ。
謁見の後の元義弟達のやらかしにより、元実家の爵位は伯爵じゃなくて男爵まで落とされた。
おまけに罰金を追加され、元々の罰金と慰謝料と合わせると、とても払える額ではなくなってしまったそうだ。
だけど取り立て先は国だから、現金が無いのならと物品の差し押さえを開始。
そうして財産の多くを失った上に、使用人や護衛が全員国で保護されたため働き手がいなくなり、雇おうにも先立つ物が無い。
稼ぎ頭の当主とそれを継ぐ次期当主候補が死亡し、騎士団出身の夫人が復職しようにも今回の罰則でそれも叶わず、三男と四男はまだ未成年で働き口が無い。
落ち目の家を助けるような奇特な貴族がいるはずがなく、元実家では責任のなすりつけ合いや金の工面について、毎日のように醜い言い争いが行われているらしい。
あの家がこの先、どうなるかは分からない。
確実に言えるのは、再び栄誉を手にする可能性は皆無に近いという事だけだ。
正直、ざまぁみやがれだな。
ちなみに俺が受け取る慰謝料は、先日国の使いから届けられた。
「そういえばロシェリも、孤児院の件を国が対応してくれたそうじゃない」
「教会の偉い人が訪ねてきて、謝罪したくらいだしね」
「うん……。約束、守ってくれた……」
そうそう、そんなこともあったよな。
打ち合わせでの約束通り、陛下はロシェリがいた孤児院の件をちゃんと対応してくれた。
ところが、運営元の教会がこの件を把握していなかった。
子供達の中でならともかく、職員まで加担していた上に報告義務を怠り、しかも役所の目を誤魔化すための隠蔽行為までしていたとあって、教会内部は上を下への大騒ぎになったそうだ。
だけど教会はこれを隠そうとはせずに公表し、教会として正式に謝罪。
その上で生存していた職員は全員処分され、被害者のロシェリには謝罪して慰謝料を支払ってくれた。
さらに生存している虐めをしていた子達は全員教会へ引き取られ、一生を掛けて悔い改めさせることにしたらしい。
これに対してロシェリはこう呟いた。いい気味と。
「それにしても、王都の冒険者ギルドの件は参ったね」
「全くだ」
リズが言っているのは、王都の冒険者ギルドからの勧誘だ。
いや、あれは勧誘とは言わない。
ギルドマスターが直々に来たのは驚いたけど、ただそれだけ。
活動拠点を王都にしてほしいと頼みに来たくせに、上から目線で使ってやるみたいな言い方で、俺達を所属させることで得られる名声や評価、利益狙いなのが見え見えだった。
あまりに言い方と態度が悪いから、その場は考える時間が欲しいと伝えて一旦帰ってもらい、その日のうちに冒険者ギルド総本部へ抗議を入れておいた。
俺達が普段利用している冒険者ギルドは、現場に出ている冒険者へ直接対応するのと素材を取り扱う、いわば事業所。
それらを統括しているのが冒険者ギルド総本部で、各地の冒険者ギルドにおける幹部の人事や収益の管理、冒険者のランク精査とかをしている。
総本部も王都にあって大きな被害を受けたそうだけど、デルスが人の命しか狙わずに書類やなんかを無視していたから、代わりの人員と場所を確保してどうにか通常業務へ戻ったそうだ。
聞いた噂だと、あのギルドマスターは本部から厳重注意処分を受け、俺達への接触禁止を言い渡されたらしい。
「さて、帰ったらどうする?」
「どうするもなにも、普通に冒険者業を再開するだけでしょ?」
アリルの言葉にロシェリとリズも頷く。
そうじゃなくてだな。
「Cランクになって、住居を買うだけの資金は十分溜まったぞ」
「それがどうし……あっ……」
「あっ……」
「はぅ……」
気づいたようだな。
「一通り用事が済んで落ち着けそうだし、家族になる約束はどうする?」
冒険者として一人前とされるCランクに、住居の購入資金。
これが俺達の間で交わした、家族になるための条件。
住居については将来的にゼインさんが準備してくれる約束をしたとはいえ、そうでなくとも買えるだけの資金は手に入れた。
わざわざ買うんじゃなくて、いずれライカが独立して、それに付き従う時が来るまでの家を借りることも可能だ。
「え、えぇっと……」
「その……」
「なるべく、早く!」
顔を真っ赤にして言いよどむアリルとリズに対し、珍しくロシェリが強い口調で主張した。
それに驚きの表情を見せる二人も、顔を見合わせて頷き合う。
「ぼ、僕も同じく……」
「こういうのは、早めに済ませた方が、いいものね! うん!」
ソワソワしながら小さく挙手をしてリズが告げたのに続き、尻尾と耳を忙しなく動かし、腕を組んで自分へ言い聞かせるように言うアリル。
要する反対意見は無く、早く家族になろうということか。
自分で言い出しておいてなんだけど、少し恥ずかしくなってきた。
「おうおう、何やってくれてんだよ。若いなぁ、おい」
そこのニヤニヤしながら冷やかすレギアは、こんな時ぐらい黙ってろ。
まっ、無理な話か。だってレギアだし。
「ハッハッハッ。いっそテメェらの所に居ついて、面白そうなガキができたら、そいつを相棒にするのも面白いかもな」
ちょっと待て、今なんかこいつ物騒なこと言わなかったか?
俺達どころかその子供にまで付きまとう気か?
気が早いけど、人格形成に悪影響を与えないか今から心配になる。
それと同時にある光景が浮かぶ。
「その前に、お前が遊び道具にされそうだけどな」
不用意に近づいて尻尾か足を掴まれ、何を言おうとも楽しんで離さない子供によって、遊び道具にされている光景が。
「ハッ。俺様に限ってそんなことがあるかよ。逆に俺様の恐ろしさに、四六時中泣き叫ぶ姿が目に浮かぶぜ」
なんかそれフラグっぽい。
どっちに転ぶか分からないけど、今回は俺の予想が当たる気がする。
子供って好奇心の塊で、怖いもの知らずだから。
「ちょっと、子供とか気が早すぎるわよ!」
「お母さん……お母さん……うへへへぇ……」
「僕、三人は欲しいかな」
「あんた達も気が早いって!」
安定のツッコミ役ありがとう、アリル。
さてと、そうなるとノワール伯父さんには明日伝えるとして、帰ったらアトロシアス家の人達にも伝えて、今後の生活について相談をしよう。
こういう時に相談できる身内がいるのは良い事だよ、本当に。
という訳で翌朝の出発前にノワール伯父さんへ話したら、婚礼の服を作れる服屋を知っているから、帰ったら紹介しようって言われた。
いや待って、まずは今後の生活について相談させて。
住居を購入すべきか、将来ゼインさんから用意されるのを見越して借家にすべきか、今のままアトロシアス家で世話になるか、それだけでも決めさせてくれ。
調子の乗ったノワール伯父さんは、勢いそのままゼインさんにまで報告し、式には呼んでくれと言われた。
そりゃ、色々世話になったから呼ぶけどさ、仲人の経験はあるから任せろと言われても困る。
だけど他に頼めそうな人に心当たりが無いから、お願いするしかないんだけど。
「もう、なんで周りが勝手に話を進めていくのよ」
ガルアへ帰るためベリアス辺境伯の王都宅を後にして、すっかり移動の定番になったギガントアンキロの背に乗り、町中を移動中にアリルが呟く。
「アハハッ、なんでだろうね」
「世の中は不思議だな」
「生きてりゃ色々あるもんだぜ、エルフの小娘」
「アンタらだってそうでしょうが! 子供がどうとか言って!」
レギアも混じってのすっとぼけに突っ込むアリルに、思わず笑いが起きる。
それをマキシマムガゼルの肩に座っているロシェリが、羨ましいような寂しいような、そんな空気を発している。
こればかりは譲らんと筋肉で主張して、自分の肩へ乗せたマキシマムガゼルを恨むかのように、頭をポコポコ殴りながら。生憎、全く効いてないけど。
そうこうしているうちに門へ到着し、手続きを済ませて王都を出る。
町を出たことで自然と速度が速くなる馬車、筋肉従魔達も走る速度を上げて追いかけ、俺達はその背中や肩でゆっくり過ごす。
「いやぁ、楽だな。便利な足があると楽でいいぜ」
「足言うな」
暑苦しくてむさ苦しくて、モフモフの欠片も無いガッチガチでムッキムキな筋肉従魔達だけど、立派な戦力であり仲間だ。
単なる移動の足じゃない。
「というかお前、自力で移動なんてほとんどしてないだろうが」
進化前は氷石のタグに憑依して、今は憑依装備で籠手になっているか、筋肉従魔のどれかに乗って移動している。
自力で浮いて飛べるのに、それをしようって気がまるで感じられない。
「んなもん、テメェらと会うまでは散々やってたっての」
「そういう問題じゃないだろうが、ったく。次元収納」
しょうがない奴だと思いつつ、次元収納を開いて燻製肉を取り出す。
王都へ向かう時の道中で遭遇した、体毛で衝撃を緩和するクッションシープっていう魔物を倒し、野営中にリズが見つけた燻製向けの木でアリルが作った物だ。
どうしてそれを取り出したのかというと、腹が減ったからだ。
「もうお腹が空いたのかい?」
「まあな。「魔飢」を受け取ってから、ロシェリのお腹空いた発言の気持ちが、よく分かるよ」
先天的スキルを成長、進化させる目的で入れ替えた「魔飢」は、たったLV1でも空腹を早めて食欲を刺激するから、こうしてこまめに何かを飲み食いしないと辛い。
空間収納袋から同じ燻製肉を取り出し、次々と食べていくロシェリの「魔飢」は現在LV7だから、どれだけの空腹に襲われているんだろうか。
しかも食事量まで増えるから、魔法に関する良い効果があるとはいえ、難儀なスキルだ。
進化したらどんなスキルになるんだ? 逆に食欲増進が収まったりして。
「私もそうね。「悪意予知」って前触れ無く反応するから、初めて経験した時は驚いたわ」
そうそう、ロシェリを虐めていた連中と遭遇する前に反応して、「うひぃ」とか変な声を出して体をビクッとさせていたんだよな。
「僕とロシェリちゃんは「魔力消費軽減」だから、そういうのは無いね」
「俺様がババアから受け取った「超越」も、任意発動だから普段はなんともねぇな。まあ使ったとしても、痛むのは俺様を装備した奴だがな」
ニヤニヤ笑うレギアが恨めしい。
こいつは戦闘力が皆無だから普段は「超越」を使わず、憑依装備している時にだけ「超越」を使うんだけど、その際の負担は何故か装備者にだけ掛かる。
スキルは共有しているはずなのに、何故だ。
そう思いながら、二本目の燻製肉を食べ進めていった。
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ガルアへの道中はさほど大きな事態は起きなかった。
魔物との遭遇が約十回、盗賊による襲撃が一回あったけど問題無く退け、魔物から得た素材は立ち寄った村や町の冒険者ギルドで売却し、肉は主に俺とロシェリの食事用として回収され、盗賊は生き残りを現地の騎士団に引き渡して謝礼を貰った。
他にあった事といえば、途中立ち寄ったシェインの町で、女性ドワーフへ王都のドワーフの無事を伝えたくらい。
頼まれた通り、余計な事は言わずに無事だと伝えると、無事ならそれでいいんだとサッパリした様子を見せた。
そうして帰って来たガルアでまずやったのは、アトロシアス家にて帰還報告と、俺達についての報告。
リアン従姉さんは目を見開いて硬直し、他の人達からは祝福されたり式場がどうこう言われたりした後、話は本題の生活についてへ移る。
するとシュヴァルツ祖父ちゃんと祖母ちゃん達と伯母さん達、さらに従妹コンビからは激しい引き留めを受けた。
「ここにいていいんだぞ」
「無理に出て行く必要は無いわ」
「いずれここを出るのなら、こっちにいる間は一緒に暮らしましょうよ」
「出て行っちゃ嫌なの~」
「出て行くと言うのなら、思いつく限りの妨害行為で、結婚式と夫婦生活を邪魔します!」
なんかユイが物騒なこと言い出した!
思いつく限りの妨害行為って、何されるんだよ!?
若干の不安を抱きつつ、どう思うかをロシェリ達へ尋ねると、揃って引き続き滞在したいと主張した。
「ここに、いて、いいよ……」
「そうそう。ここがもう、僕達にとって実家みたいなものだしね」
「お金があるからって、無理に出て行く必要は無いでしょ」
「なら、そういうことで」
引き続きアトロシアス家にいると決めたら、シュヴァルツ祖父ちゃんと祖母ちゃん達と伯母さん達は喜び合い、従妹コンビはタックルでもするかのように飛びついて来た。
咄嗟に従妹コンビを受け止め、歓喜の頬ずりをする二人の頭を撫でてやっていると、突然硬直していたリアン従姉さんが崩れ落ちた。
「ど、どうしたのリアン」
「……ました」
「えっ?」
「お姉ちゃんなのに! 弟に、先を越されました!」
心底悔しそうに叫ぶリアン従姉さんに、お祝いムードが一転して呆れムードになった。
「罰として今後、ジルグは私をお姉ちゃんと呼ぶように!」
「意味分からないから」
「ぐはっ。弟からのズバッと鋭い反論で、心の傷を斬り広げられてしまいました」
起き上がって意味不明の主張をしたかと思えば、たった一言の反論で再び崩れ落ちた。
リアン従姉さんって、ここまで精神的に雑魚かったっけ?
母さん直伝の精神強化訓練でも教えてあげようかな。
「辺境伯家の姓持ち家臣で従士長の家系なら、見合い話とかあるんじゃないですか?」
「二回ほど、あったんだけどねぇ……」
アリルの問い掛けに、複雑な表情で伯母さんが溜め息を吐く。
その様子だけで断られたのを察した。
「最初の人は~、こんな筋肉女は~、嫌だって言って~」
「次の人は、貧乳女に用は無い! 巨乳こそ正義! って失礼なこと言って断ったんです!」
酷い男達だ。そして従妹コンビは空気を読め。
確かにリアン従姉さんは、腹筋がバッキバキに鍛えられてるし腕も脚も筋肉質で胸もアレだけど、それだけ判断されたリアン従姉さんの心情を察してやれ。
「どうせ私は筋肉で貧乳で女らしくなくて、行き遅れですよ!」
半泣きのリアン従姉さんは、そう言い残して出て行ってしまった。
やれやれってしている従妹コンビよ、半分ぐらいはお前達が原因だぞ。
あっ、そういえばディラスとの約束を忘れてた。
協力すると言われた後、すぐにデルスと遭遇したり精霊王の下へ行ったりしていたから、すっかり頭から抜け落ちてた。
ちょうどリアン従姉さんもいないし、四ヶ月も遅れちゃったけど根回ししておこう。
ここまでの流れからして、ディラスも何もしていなさそうだし。
「ちょっといいかな、実はあの騒動が起きる前に……」
報告が四ヶ月も遅れたことを謝りつつ、ディラスの件を伝えると、なんで早く言わなかったのかと怒られた。
ただ、辺境伯家からのそういう話やディラス本人からの接触も無かったそうだから、予想通りディラスは何もしていていないようだ。
という訳で、急ぎ辺境伯家へ向かって仕事中だったノワール伯父さんとゴーグ従兄さんへ、アトロシアス家へ残る旨を伝えた後でディラスの件を報告。
ならばすぐに動けと、ゴーグ従兄さんと共にディラスの下へ。
生憎部屋にはいなかったけど、ジョイスさんの部屋にいると聞いて向かうと、そこにはディラスだけでなくライカもいた。
ベリアス辺境伯家の三兄弟そろい踏みである。
「やあ、ゴーグにジルグ君。どうしたんだい?」
「急に来て悪い。ちょっとディラス君に用事があるんだ」
他に人がいないからか、ゴーグ従兄さんの喋り方が砕けてる。
「私に? 何の用だ?」
「ディラス、こんなに遅れて悪かった。現在進行形で、約束を果たすために行動中だ」
「約束……あっ、あぁ、あれか。いや、私もあんな事件が起きたのだからと、自分に言い訳をして伸ばし伸ばししているうちに、こんなに経ってしまっているから、気にするな」
申し訳なさそうに弁明するディラスへ、こっちもあの件ですっかり忘れていた事を謝罪したら、そのまま謝罪合戦に発展。
キリが無いから止めろと、ジョイスさんから言われるまで謝罪合戦は続いた。
「と、とにかく、遅れはしたけど向こうの家族への根回しは良好で、全員から賛同を得られた」
「そうか。ならば今度は私が腹を括る番だな。父上の下へ行ってくる」
「王都から帰って来たばかりなのに、今からか?」
「今を逃せば、また言い訳を見つけて先延ばしそうだからな。今まで迷っていたのを、不在の間に決心したと勢い任せに伝えてくる」
勢い任せって……。
だけどこういうのは勢いが大事でもあるし、あながち悪くないかもしれない。
「父上から許可を得たら、あの子にもその旨を手紙で伝えねば」
あの子? ああ、婚約者か。
そういえば話をした時も、そんなこと言ってたな。
というか、それすらやってなかったのかヘタレめ。
……俺が言えることじゃないか。
「なんにしても、行ってくる!」
「健闘を祈る」
「任せておけ! 行くぞ、うおぉぉぉぉっ!」
まるで戦場へ駆け出す戦士の如く、部屋を飛び出したディラスが駆けて行く。
いや、間違いなく彼は戦地へと赴いたんだ。
どうか許しを得るという生還を果たしてもらいたい。
「……すまないが、状況を説明してくれないか?」
訳が分からずポカンとしていたジョイスさんの質問に、口を半開きにしていたライカも頷く。
場合によっては援軍になってくれるかもと思い説明すると、メッチャ驚かれた。
なお、この件はゼインさんだけでなくディラスの婚約者との間でも無事に話が纏まり、リアン従姉さんはディラスの第二夫人として迎えられることになった。
それをある日突然、ゼインさんとノワール伯父さんから聞かされたリアン従姉さんの絶叫は、辺境伯家の屋敷中に響き渡ったとのこと。




