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入れ替えスキルでスキルカスタム  作者: 斗樹 稼多利
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入れ替えようと決意した日


 この世界にはスキルというものがあり、どんなスキルを持っているかでその人がどんな技術を習得しているのかが分かる。

 スキルには二種類あり、一つは日々の積み重ねで習得できる後天的スキル。もう一つは生まれながらに持っている先天的スキル。

 特に先天的スキルはその人の潜在能力や才能を表していると言われ、親とか家柄によっては先天的スキル次第で生まれた子をどうするか判断しているとか。

 ちなみにうちの親と家柄はモロにそれが当てはまり、家柄的にハズレのスキルを持って生まれた俺は物心ついた頃から使用人としての生活を送らされている。


「納得はできないけど、逆らってもどうにもならないしな」


 俺が生まれたのはバーサム王国、住んでいるのは王都ベティット。家は国を守る騎士団へ代々高官を輩出し、武勲に優れた家柄なのが自慢のグレイズ侯爵家。

 幸か不幸か、そんな由緒正しい家柄の次男に生まれた俺ことジルグ・グレイズの先天的スキルは、視界にある対象に選んだ二つの物の位置を入れ替えるだけの「入れ替え」スキルだ。

 せめて人と人の位置を入れ替えられるか、対象物の一部だけに対して「入れ替え」を使って欠損させるようなことができれば良かったんだけど、生憎とどれだけ時間を掛けても魔力を込めてもそんな事はできなかった。

 大きさは小物程度が限界で、対象物は一部じゃなくて全体を指定しなきゃならない。唯一の利点は予備動作や入れ替えをすることを口にする必要が無いことぐらいか。

 そういった事が分かるやいなや、戦いに向いているスキルじゃないからと継承権を与えられず、物心がつくぐらいまで育つと、使用人と同じ部屋に叩き込まれて使用人として働かされるようになった。実の母親が庶民出の側室だったことも、少なからず関係しているんだと思う。

 その母親は難産だったこともあり、俺を産むと同時に亡くなってしまった。実の父であるグレイズ侯爵家の当主と他の妻達、異母兄弟から家族扱いをされたことなんか一回も無い。


「先天的スキルは才能の現れ。即ち戦闘に役立たない先天的スキルの持ち主は、戦う才能が無いということだ。そのような者はうちには必要無い」


 そう言い切った父親の先天的スキルは武器に高熱を宿らせたり、高温の炎を纏わせたりすることができる「灼熱」スキル。どんなに強固な鎧や盾でさえ、これで焼き尽くすか焼き切っていたらしい。

 庭で異母兄弟に披露して自慢していたのを、掃除をしながら屋敷の窓から見ていた記憶がある。

 その父親からは他にも、周囲へ子供を捨てたと言われないよう、成人までは家と籍に置いてやるから感謝しろって言われている。

 要するに成人したら除籍して、この家から追い出すって意味だ。

 追い出されるのが確定しているのに、外で生きていくための知恵も技術も教えてもらえず、どうすればいいのか途方に暮れる俺を助けてくれたのは、グレイズ家の使用人や護衛といった人達だった。


「ジルグ様。我々が出来る限りのことは教えますので、ご安心ください」


 未だに様付けで呼んでくれている彼らには悪いから最初は断ったけど、子供が遠慮するな、あの方から受けた恩を少しでも返させてください、ジルグ様にも大変お世話になっていますからと言われて押しきられてしまった。

 この家の連中は使用人や護衛への当たりがキツく、暴言を浴びせたり暴力を振るったりすることは日常茶飯事。

 そんな時に彼らを庇ったり、怪我の世話をしたりしたのが死んだ実の母親だった。

 亡くなったことで受けてきた恩を返すことができなくなった彼らは、協力して忘れ形見の俺を一人前にするんだと意気込んでいる。

 加えて、俺自身も使用人や護衛に対する家族の言動を反面教師に、彼らにできる限りのフォローをしたり優しく接してあげたり、時には身を挺して守ったりしていた。それもあってか、余計に恩義を感じているようだ。


「ジルグ様、今のうちに少し勉強をしましょうか」

「うん、よろしく」


 彼らは俺がこの家を追い出されても生きていけるようにと、使用人達は勉強や身の回りのことを、護衛の人達は身を守る術を教えてくれている。

 家族には恵まれなかったけど、周囲の人達には恵まれていることは本当に救いだ。

 病気になっても医者を呼ぶどころか薬一つくれない家族に対し、彼らは自腹を切って薬を買ってくれた。

 ミスをしたのを庇った際に暴行を受けた時は、仕事のフォローや傷薬を融通してくれた。

 そうしてくれている彼らの想いに応えて一人立ちできるよう、今日も俺は働きながら勉強と鍛錬に励む。

 こうした日々が成人となる十五歳まで続くんだろう。そう思っていた俺の転機は、ある日の睡眠中に起きた。


「この度は、大変申し訳ありませんでしたあぁぁぁぁぁっ!」


 ここは夢の中なんだと自覚できる白い空間を漂っていると、突然上空から白い布を体に撒いた色っぽい女性が謝罪の言葉を述べながら土下座しながら降ってきたから、思わず固まってしまう。

 正直、こんな光景を目の当たりにして固まらない人は、そうそういないだろう。


「あのあのあの! 本気で真剣に全身全霊で謝りますから、どうかお許しおっ!」


 よしよし、少しずつ冷静になってきたぞ。

 ここで大きく深呼吸……。もう一回。大きく深呼きゅ――。


「この通りですっ! 許してくださいっ!」

「うっさい!」

「あたっ!?」


 冷静になってくると土下座したまま何度も謝罪をする女性が煩くて、思わずの拳骨を落としてしまった。

 俺は悪くないよな? 悪いのは勝手に騒いでいるこの人だよな?


「うぅぅ……。思わず拳骨を落とすほど怒っているんですか?」


 顔を上げた女性はとても美人で、目元には俺の拳骨のせいか涙を浮かべている。

 だけど容赦はしない。


「あれだけ騒がれたら、誰だって怒るって」

「じゃ、じゃあ! 間違った先天的スキルを授けてしまった件については、怒っていないんですか!?」


 なんかこの人、聞き捨てならないこと言った。


「……ちょっとお姉さん。その話、詳しく聞かせて」


 分かりましたと頷いた女性が指を鳴らすと、どこからともなく椅子とテーブルが出現した。

 それに向かい合う形で座り、女性は俯きながら説明を始める。

 自分はスキルの管理を司る女神で、本来俺に与える予定だった先天的スキルを間違えてしまい、別のスキルを与えてしまったこと。

 十年経過した今になってそれが判明し、神々の頂点に立つ創世神様とやらへ報告したら猛烈に怒られて、すぐに謝罪とお詫びをするよう叱責されたこと。

 そのために睡眠中の俺の意識へ干渉して、現状に至るということを。


「なるほど、話は分かりました」

「で、では、許してくれるんですか?」

「許さん」

「えぇぇぇっ!?」


 当たり前だって。そのせいでこの十年、どれだけ苦労したと思っているんだよ。

 幸いにも周りに恵まれたから良かったものを、そうでなかったらどうなっていたことか。

 まあ、仮に家族から冷遇されなくとも、反発はしていただろうな。

 だって使用人や護衛を奴隷のように扱う、あんな家族と同じになんてなりたくないし。


「どうかお許しください! 本来の先天的スキルはちゃんとあげますし、お詫びに間違えて与えた「入れ替え」スキルもそのままあげますから!」

「いや、それは当然のことでしょう。他にお詫びは無いんですか?」


 仮にも女神に向かって言うことじゃないんだろうけど、経緯が経緯だから問題無いだろう。

 なんとなくだけど、創世神様とやらも「構わんじゃろ」と言ってくれている気がするし。


「他にお詫びですか? えっと……。私の現在の権限では、後天的スキルを三つ与えることくらいしかできないんですが……」

「それはどんなスキルでも?」

「人間が得られる物、という制限付きです。参考にこのリストをどうぞ」


 胸の間に手を突っ込んで取り出したリストには、結構な数のスキルが並んでいる。

 制限のことを踏まえると、人間以外でないと得られない後天的スキルはこの中には無いんだろう。


「あっ、その前にあなたが現在習得しているスキルを教えておきますね」

「何故ですか?」

「既に習得しているスキルを選ぶのは損ですから、何のスキルを持っているか知っておいた方がいいと思いまして」


 なるほどね。ミスった上に十年も気づかない、間抜けでポンコツの割に気が利くじゃないか。

 普通なら教会に高い金を支払ってスキルを調べられる水晶を使うか、先天的スキルの一つである「解析」スキルを持っている人に調べてもらうかしないと分からないから、これは貴重な機会だな。

 しかも「お前にそんな金を使う価値は無い」と断言され、生まれた時に「入れ替え」スキルがあることを調べて以降、何のスキルを習得しているのか分からないからな。

 この十年の日々で、どんな後天的スキルを習得したんだろうか。


「どうぞ、こちらになります」」


 女神が軽く右手を振ると半透明の板が浮かび上がった。

 これに俺のスキルが表示されているんだろうか。

 どれどれ……。




 ジルグ・グレイズ 男 10歳


 先天的スキル

 入れ替えLV1


 後天的スキル

 掃除LV2 整頓LV2 料理LV1 算術LV2 速読LV2

 夜目LV2 槍術LV2 水魔法LV1 自己強化魔法LV1




 うん、ちょっと待って。

 周りから色々と教えてもらっている上に、一応は働いているから、これだけの種類のスキルを習得しているのは分かる。

 でもそれとは別に、どうしても気になる点がある。


「このレベルっていうのは?」

「ああ、そうでしたね。あなたの世界では、これのことを知らないんでしたね」


 女神曰く、このレベルっていうのはスキルそのものの成長度を表していて、レベルが上がるに従ってより高度な技術や能力を発揮できるようになるとのこと。


「通常の「解析」スキルや、スキルを調べられる水晶ではこれを知ることができないので、この世界でこれを知ったのはあなたが初ということになりますね」


 俺が初だとかは置いておくとして、こうして見ると本当に使用人達から世話になっているのが分かる。

 身の回りのことや読み書き計算、それといざという時に身を守る術。

 どれも使用人や護衛の人達が教えてくれたことだ。

 おまけに夜間に槍や魔法の手ほどきを受けているから、「夜目」まで習得している。

 やばい。使用人や護衛の人達からの思いやりを改めて振り返ると、なんだか目元が熱くなってくる。


「ど、どうしましたか? 急に泣き出して」

「いえ、俺は本当に周囲に恵まれているんだなって」


 家族を除いて。


「そうですか。ところで、スキルはどうしますか?」


 おっと、そうだった。

 習得していないスキルを貰うため、スキルを見せてもらっていたんだった。

 そうだなぁ……。


「将来どうするかを決めていれば、それに合ったスキルを選ぶといいですよ」


 一理あるな。

 だけど残念なことに、将来どうするかを考えてない。

 色々と教わっていて悪いけど、家を出た後で具体的にどうするかを全く考えていなかった。

 あるとすれば、どこか遠い所へ行ってみたいっていう、漠然とした目的ぐらいだ。


「いっそのこと、直感で決めるのも有りですね」


 直感って。


「いいの? そんなので」

「考えるな! 感じろ! よ」


 意味が分からない。でもまあ、いつまでも考えている訳にもいかないから、それでいいか。

 遠くへ行くってことは長い旅になりそうだから、アレとアレ……それからアレにしようかな。


「あっ、そうそう。今回のような形で新たなスキルを入手しても、それを使いこなせるかは別の話ですよ」

「うん? どういう意味?」

「分かりやすく言えば、感覚的に使い方を分かっているだけで、知識面と技術面が不足した状態ということです。ちゃんと使いこなせるようならないと、スキルに振り回されるだけです」


 要するに、スキルを使いこなせるよう、日々の積み重ねをしっかりやれってことか。

 だったら問題無い。家を追い出されるまで五年もあるし、これまでやってきたように努力すればいいんだから。

 でもそうなると、あそこでの生活中に練習できるようなスキルがいいかな。

 せっかく五年もあるんだから、追い出されるまでスキルを放置しておくのは勿体無い。

 だとしたらアレじゃなくてアレにして、アレはそのまま貰って後は……アレにしよう。


「決まりましたか?」

「はい。これとこれとこれで」

「分かりました。それでは、それらのスキルと本来の先天的スキルを授けます。むん」


 胸の前で両手を合わせた女神が目を閉じて祈ると、上空から四つの光が俺へ降り注いだ。

 その光を浴びていると、今までに無かった何かが体の中に生まれるような感覚がして、それが自分に宿ったのが分かる。これがスキルを授かった感覚なんだろう。

 やがて光が治まると、女神は手を下ろした。


「これで完了です。改めて言いますけど、本来の先天的スキル以外の三つのスキルについては、使いこなせるように頑張ってくださいね」

「分かっています」


 目が覚めたらすぐに練習するくらいの気持ちでいよう。

 五年は長いようで短いから、真面目に取り組まないとな。


「最後に、あなたの本来の先天的スキルについて説明しますね。スキル名は「完全解析」といって、人であろうと物であろうと関係無く、対象の情報が見えるようになるスキルです。さらに、先ほど説明したスキルのレベルも見えるんですよ」


 何それメッチャ便利。


「ではそろそろ、お別れです。何か私に言いたい事があれば、今のうちですが」

「言いたい事はありません。その代わり、あなたへしたいことがあります」

「なんでしょうか?」

「先天的スキルを間違えて十年も放置した恨みがあるので、物理的にお仕置きさせてください」


 両拳を握って構えを取ると、今度は足下へ滑りこみながら土下座してきた。


「勘弁してください! 私、打たれ弱いんです! 物理的にも精神的にも!」

「大丈夫です。女性ですから顔とお腹は勘弁してあげます」

「既にお仕置きするの確定済み!? お願いですからお許しください!」


 自分の方が偉いにも拘わらず、女神は床に額を擦りつけて謝罪と罰の免除を繰り返している。

 参ったな。もう一つか二つくらい、お詫びをもらえないかと思って軽い気持ちで言ってみたのに、想像以上に効いている。精神的に打たれ弱いって言うくらいだし、悪いことしたかな。


「そ、そうだ! 良い事を教えてあげます、「完全解析」スキルと「入れ替え」スキルを組み合わせれば、凄い事ができるんです!」


 凄い事? どんな事だろう。


「何ができるんですか?」

「はい! それはですね」


 説明を聞いていくうちに、最初は懐疑的だった気持ちが関心へと変わっていく。

 理由も納得できるし、これは確かに凄い事と言えるだろう。


「さらにですね、今回手に入れたスキルの一つを使えば、いずれはこういうこともできますよ」


 追加の説明の内容も納得できるもの「入れ替え」スキルは思ったより応用範囲が広かったことが分かった。

 これは家族に黙っておこう。もしも伝わったら、今度は生かさず殺さずの飼い殺し生活が待っていそうだから。


「分かりました。これだけの事を教わったのですから、お仕置きはやめておきます」

「そ、そうですか。良かったです」

(……ごめんなさい)


 胸を撫で下ろす女神に、欲を出したことを心の中で謝る。

 だけど俺だってまだ十歳なんだ。そこらへんの匙加減が分からないから、どうか許してもらいたい。

 とはいえ、今さら正直に言うのもなんだから、心の中での謝罪に留めよう。

 だけど先天的スキルを間違えて十年も放置したことに怒っているのは本当だから、ポンコツ扱いするくらいはいいよな?



 ****



 翌朝。普段よりも少し早く目を覚ますと、早速「完全解析」を自分に使ってみた。




 ジルグ・グレイズ 男 10歳


 先天的スキル

 入れ替えLV1 完全解析LV1


 後天的スキル

 掃除LV2 整頓LV2 料理LV1 算術LV2 速読LV2

 夜目LV2 槍術LV2 水魔法LV1 自己強化魔法LV1

 空間魔法LV1 動体視力LV1 暗記LV1




 うん、ちゃんと俺が望んだスキルも習得している。

 あると便利だって聞いた「空間魔法」、家を出た後で荒事に巻き込まれても役立ちそうな「動体視力」、勉強で役立ちそうな「暗記」。一貫性は無いけれど、将来の目的が定まっていない俺にはちょうどいいだろう。


(問題はあの女神から教わったやり方か……)


 部屋を見渡すと、同じ部屋を使っている使用人達はまだ眠っている。

 彼らが起きる前にそれを試すため、近くにいた一人へこっそり「完全解析」を使う。




 オリバー 男 24歳


 先天的スキル

 害虫探知LV2


 後天的スキル

 清掃LV4 整頓LV4 料理LV2

 礼儀作法LV3 護身術LV2




 この人、やたらゴキブリとかを見つけるのが上手いと思ったら、こういう先天的スキルだったのか。

 まあいいや。すぐに戻すから、ちょっと実験させてもらうよ。


(まずは……)


 オリバーへ「完全解析」をかけたまま、自分にも「完全解析」を使って二人分の情報を表示。

 次いで「夜目」スキルと「護身術」スキルを対象として「入れ替え」を使う。




 ジルグ・グレイズ 男 10歳


 先天的スキル

 入れ替えLV1 完全解析LV1


 後天的スキル

 掃除LV2 整頓LV2 料理LV1 算術LV2 速読LV2

 護身術LV2 槍術LV2 水魔法LV1 自己強化魔法LV1

 空間魔法LV1 動体視力LV1 暗記LV1




 オリバー 男 24歳


 先天的スキル

 害虫探知LV2


 後天的スキル

 清掃LV4 整頓LV4 料理LV2

 礼儀作法LV3 夜目LV2 




「本当にできた……」


 思わず声に出してしまい、慌てて口を塞ぐ。

 幸いにも誰も起きなかった。


(まさか本当にできるなんて……)


 女神に教わった良い事の一つ。それは二人分の解析結果を表示させて見えるようにすれば、目視している二つの位置を入れ替える「入れ替え」の力で、スキルを入れ替えることができるということ。

 スキルには質量が無いとはいえ、実行するまでは半信半疑だったけど、成功したと分かったらちょっと感動する。

 しかも入れ替えた瞬間にも、その後にも全く違和感が無いのも凄い。


(こりゃいいや。じゃあ今度はこれとこれを……)


 時間が無いからやや急ぎ足で検証をして、スキルの入れ替えについていくつか分かった。


 まずは入れ替えるスキルのレベルが違う場合、大きい方から小さい方の分しか入れ替えられない。

 例えば相手のLV2のスキルに対し、こっちのLV1のスキルを入れ替えようとしたら、相手のスキルはLV1分しか手に入れられず、相手には対象にしたスキルがLV1で残った上にこっちのLV1のスキルを入手していた。


 次に、既に持っているスキルを入れ替えで入手した場合、レベルが上昇する。

 オリバーが持っている「料理」LV2を入手してみると、俺の「料理」が一気にLV3へ上がった。


 続いて判明したのは、先天的スキルと後天的スキルの入れ替えもできること。

 オリバーの「害虫探知」LV2と俺の「暗記」LV1を入れ替えてみると、俺の先天的スキルに「害虫探知」LV1が追加され、オリバーの「害虫探知」はLV1へ下がり、後天的スキルに「暗記」LV1が追加されていた。

 ただ、先天的スキルを失うように入れ替えることは出来ず、LV1分は絶対に残ってしまう。


 最後に分かったのは、レベル数を指定して入れ替えられるということ。

 例えば相手のLV2とこっちのLV2を入れ替える際に、LV1分を指定することでその分だけの入れ替えが可能になる。

 これを利用すれば、急にスキルが無くなって騒ぎになることも無いだろう。なにせ俺の「完全解析」以外ではレベルが見えないんだから。


(この二つの組み合わせ、想像以上に使えるぞ)


 感動と驚きと恐ろしさが入り混じった気分に浸りつつ、俺とオリバーのスキルを入れ替えて元通りに戻す。

 でないとオリバーの仕事に影響が出るだろうし、悪感情の湧かない相手からスキルを貰うつもりは無い。

 だってスキルのレベルの高さは、その人が真面目に頑張ってきた証でもあるんだから。


(でも、あいつらには容赦無く使ってやろう)


 あいつらとは、言うまでもなく家族の連中だ。

 ここにいる間に奴らへスキルの入れ替えを使って、個人的かつ小さい復讐をしてやろう。


(これであいつらの戦闘系のスキル、全部入れ替えて貰ってやる)


 どうせ俺以外に、スキルのレベルなんてものは分からない。

 気づかれないようにLV1分だけ残してスキルを入れ替え続け、家を追い出される当日に全てをもらってやる。

 そのスキルは追い出された後、俺が生きていくために有効活用してやるよ。


(となると、入手したスキルに振り回されないように鍛える必要があるな)


 新しいスキルを得ても、ちゃんと扱えるようにならないとスキルに振り回されるって、あの女神も言ってたしな。

 だとしたら、低いレベルから徐々に慣らした方がいいだろう。

 なんにしても、追い出されるまでは五年もある。

 焦らずじっくり、小さい復讐をやってやるか。


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[一言] 主人公がお仕置きするとか、お詫びまでしてるのにこれじゃ親父と同じやん
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