妹と、女の子たちと、それからよっちゃんで、私はかおるたぎるとろけるしぼるなでるゆさぶるはくかぐはわせるなめる、恍惚と、恍惚と、恍惚と、恍惚と、恍惚と
「うーん、とちったな……」
私は今、人生最大の危機に立たされていた。
「どうしたの紗那、今度は何やらかしたの?」
「────────妹のふんどしを履いて来てしまった」
「うっわ、また次々と面白いことやらかすねぇ」
となりの席のよっちゃんが、うんざりしたような声を上げる。
「あんた頭もよくて美人さんなんだから、黙ってればモテるのに。
まぁ言うてウチ女子校だけど」
「そっか、私喋るの止めようかな」
「始まったよ────」
よっちゃんはそう呟くと、ため息をつきながら私の肩に手を置いた。
「で、今回はどうするの。1時間目の健康診断の時、着替えあるじゃん、それ忘れてたんだね。
ついでにアンタの女の子大好きな性癖も、そこで白日の下にさらされるわけ?」
「止めて、今周りにバレない方法必死に考えてるから────」
そもそもなぜこうなったのか、それは昨晩に遡る────
「おねーちゃん、私のふんどし知らない?」
「なにその尖った質問」
問題は、私の妹がその話題を振ってきたときから始まった。
「友だちに貰ったんだよ誕生日に」
「ねぇ、その友だち大丈夫? 今度うち来たりしない?」
「うちに────?
まぁ、大丈夫だよ、おねーちゃんみたいに頭いい子。
そうじゃなくて、最近流行ってるんだ、そういうジョークプレゼント。
変なショーツやブラ贈って、お互いが楽しむの」
へぇ、それは何とも素晴らしいことだ。
女子中学生が女子中学生に下着を贈る────その事実だけで、私ならご飯三杯分のオカズを平らげられる。
「とにかく、まだ何回かしか履いてないんだから、まだとっときたいんだよ。
一昨日温水プール行った後、洗濯機に入れたはずだから、見つけたら言ってね」
「ふーん、りょーかい」
そう言うと、妹は扉を閉めて下へ降りていった。
多分お父さんお母さんにも聞くつもりだと思う。
年頃の娘からそんな質問される2人には同情するわ────
「さて、と────」
ようやく妹の階段を降りる足音が鳴り止んだところで、私はベッドの下の収納からはみ出た、桃色の紐を引っ張った。
スルスルと取り出すと、その先から長方形の明るい無地柄の帯がついてくる。
もちろん、これは妹のふんどし。
あまりに可愛くて持ってきてしまった。
「まぁ、後で返せばいいよね」
お母さんがたたんだ妹の洗濯かごの中に、これがあったときは驚いた。
興味本位でちょっと拝借したつもりだったんだけど、まぁよくないことをしたかも。
「せっかくだし履いてみよう」
少し強めに握ると、洗剤の香りに混じって、若い女の子の甘酸っぱい香りが私の鼻をくすぐった。
同じ家に暮らしているのに、同じ洗剤使ってるのに、私とは違った、14歳の女の子の匂い────あぁ、ああ、あぁ、なんで、なんでこんなに────
あぁぁ────
もちろん、妹をそう言う眼で見ているわけではないけど。
女子校に入学してからもう少し女の子とのスキンシップが増やせるかと思ってた私は、周りからのアプローチの少なさにがっかりしていた。
せいぜい朝1人2人抱きついてきたり、下着の色や大きさの話題になったり。
私の求めていた女子校という場所にはほど遠い────
そんな生活環境で若い女の子が同じ屋根の下にいるって言うのは、例え妹でも私にとっては結構忍耐力が試される事だった。
最近はこれでも、一緒にお風呂に入るくらいで我慢できていたんだから、まだ健全な方なんだろうけど。
まぁ何はともあれ、多分、スキンシップの多い姉妹なら、下着のシェアくらい普通だと思う。
うん、普通普通。
「なるほど、『越中褌』って言うんだ」
履き方を調べると通販サイトで案外あっさり方法が出て来た。
より簡略化された物は「もっこ褌」て言って、どうやら歌舞伎の女役の人が履いている種類らしい。
それが理由かは知らないけれどそこそこ女性の愛用者もいるみたいだ。
ふんどしを女の子に贈るとしたら、それが一番ベターな選択になるのかな?
でも、妹の友だちが贈ったというこのふんどしは少々履く行程がそれよりも少しだけ複雑なものになる。
一部ではサムライパンツとか、医療用ではT字帯だとか。
どんな言い方をしても女の子が履くって言う事実だけで蕩けそうなひびきになる気がする。
流石に画像だけじゃ分かりにくいと言い訳して、女性用の説明動画を見つけて、タブレットで履き方を見ながら試してみることにした。
ふんどしをマネキンに履かせている女性の動画────なんだか滾る。
「いけない、早く履こう」
越中ふんどしはT字帯と言うだけあって、1mくらいの縦長の布に、ちょうどT字になるように紐がついているまぁ、ポピュラーな形のふんどしだ。
まずお尻に布を合わせて、腰の辺りに紐を這わせる。
「んん────いい感じ────」
どうやら触った感じ、合成繊維を使わない、オトメの肌を守るためのふんどしらしい。
触っただけで分かる、手触り、肌を撫でる心地────
この子はきっと女性の強い味方になるべくデザイナーに作成され、下着工場で他のふんどしたちとともに編まれ、可愛いランジェリーショップのお姉さんにオススメされ、妹の友だちにお小遣いで買われて、誕生日を迎えた妹にようやく着けられたんだろう。
うらやましい、うらやましい、うらやましい────そして今、そのふんどしは、中途半端な状態で私に寄り添っている。
あああぁぁああ─────
「んん、次はこう────?」
動画に沿って、這わせた左右の紐を前で蝶々結びにする。
臀部を締め付ける紐が、まるで私の乾いた渇望をさらに締め上げるように絞って、搾って、封をしてゆく。
まるで巾着のように、ぎゅっと外を包み込んで溢れる渇望をそのまま閉じ込めて、今か今かと外に出るのを待っているのが分かった。
「んん────んん────」
抑えきれるはずもない衝動を一身に引き受けた私の腰は、早く先へ先へとその身を急かしてくる。
動画を進め、指示通りに布部分を股から通して、くぐらせる。
内股を撫でる柔い感触に身体が震えるのを感じながら、長い長いその布を自分の胸元までたぐり寄せる。
トンネルからのぞかせた可愛いデザイン────強烈すぎてあまり直視しないようにしていたけれど、これは何て言うか、よく女の子に密着しそうな色だ。
下着には色々な色があっていいと思う、白、黒、灰色────
でも、よりによってピンクだなんてそんな、そんなの────
たまらない────
私はこれからの人生ピンク色を目にしただけで、今この時のことを思い出して恍惚としてしまうかも知れない────
「くぅ────」
妹のふんどしが私を左右と下から締め付け、得も言われぬ感覚が下半身を支配する。
帯を少し引っ張っただけで、股下から広がる何かが私の中を駆け巡ってグラグラと頭を揺らした。
巾着は紐で縛っても、本体を押せば中身が絞り出されるように────
ふんどしを締め上げることで、妹のふんどしの感触もまた私の中から勢いよく、かつジワジワと溢れ出してきた。
奔放な花園と穏やかな音色が響いて私を離さない────思わず声を上げそうになるのを必死に押さえて、私はそのまま背中からベッドに倒れ込んだ。
「つぅぅう─────────────っっあ、はつぁっ……はっ────あぁぁ…………ふー……」
広がる香り、甘い味、優美さ、甘美な曲調、撫でる感触────と一筋の苦しさ。
息をすることを忘れていたのに気付き、ようやく久方ぶりの呼吸をする。
その空気さえ、妹のふんどしに晒されていたかと思うと後10年は肺を使わなくても大丈夫な気がしてくる。
「これでよし────ぅんん────」
そして先ほど結んだ部分に布を赤ちゃんのまいかけの様に垂らす。
重力によって下ろされた布が、再び私の内股を軽く撫でて刺激を呼び起こした。
内股は特に、このふんどしを感じる部分、私の中の衝動も比例するかのようにグワグワ揺さぶられる。
「は、はふぁう────────」
そして、軽く全体を整えたら装着は完了。
妹の使ったふんどしが────私の中に、ズボンを履いたら私と一つになってそのまま混ざり合ってしまいそうな気さえする────
もう、今の私には、ふんどしを触るだけでも鼓動が跳ね上がってたまらないほど満たされていた。
あぁ、いい────こんな感覚いつぶりだろ────履いてよかった。
これ学校でも流行らないかな────
ああぁ────
ちょうどその時、スマホが鳴った。
「ん────なに?」
よっちゃんからの通話だ。
出ると、もしもし、と彼女の声が耳元で反響して頭の中を駆け巡る。
よっちゃん────今私ね、妹のふんどし履いて電話してるんだよ────
「え、うんそうそう見つかった?
なら夏の水着、スリングショットがいいんじゃないかなーと思って。
え、知らない? スリングショットって言うのは────」
そのままふんどし履いて電話しながら寝落ち。
そして私は、朝そのまま学校に来てしまったのだった。
まぁバレないだろうしなんか新しい世界が開けると思ったんだよ────
体育があれば止めてたんだけど、健康診断というのが迂闊だった────
それが私がとちった原因である。
「て、電話してきたよっちゃんのせいじゃん、責任とってよ」
「止めてよ、言いがかりもいいとこだよ」
今のピンチは貴女のせいだ!
そんな私の名推理を、彼女は悠々とかわしてみせる。
「よっちゃん、これ以上責めないから、せめて知恵を貸してください」
「バーカ、自分で何とかして。私に関わらないで」
冷たい友人だ、小学校の頃からの付き合いとは思えない。
でもかわいい、舐め回したい。
「うーーーーーん……」
悩んでるうちに、タイムリミットは迫っていた。
ついに更衣室への移動した私は、時計を見てあと10分程度で着替えをする必要があると悟る。
ダメだ、ダメだ────着替える時間も含めるとあと僅か、その間に考えないと────
そもそも、今の状況で周りに下着を見られず着替エロというのが難しかった。
トイレで着替える────時間がない。
よっちゃんにカーテンの代わりになって貰う────いやいや布面積が足りない。
ダメだ、どんな方法も思い付かない。
集中すれば答えはすぐいいアイディアは出そうな気もする、でも何分ここは女子更衣室だ。
女の子がいっぱい、しかもだれもがみんな恥じらいもなく下着姿で闊歩していて、色とりどりのブラやショーツに、スポブラ、真っ黒に光るブルマに着替え終えてる子もいて────
目を背けようとしても、脱いだ制服が目に入っただけで、その色、形、たたみ方、汚れ────そして匂い────
あぁ、吉野さん結構活発な子なのに制服ちゃんとたたむんだな偉いな────
鈴木さん最近洗剤変えたんだな、匂いで分かるよ、私だけ気付いてるよ────
涼華ちゃん、見た目に似合わず大胆な下着だね、3組の相川さんとは最近うまくいってるのかな────
集中の妨げにしかならないのに、頭の中にぽんぽん浮かんでくる。
どうにも考えがまとまらず、時間だけが過ぎる────
あ、よっちゃん下着の上下揃ってるの珍しいね、今日が身体測定だから?
「そうだよ、何でもいいから早くしなよ」
「今まで私、なんのために勉強してきたんだろう。
頑張っていい成績を取っても、こんな時に役に立たないんじゃ意味ないじゃん────」
「学生のくせに勉学への動機が歪みすぎてるね」
そもそも学生が勉強しなきゃいけないなんて誰が決めたんだろう?
女の子たちを愛でていられればそれでいいのに────
「はぁ────」
あぁヤバ、ため息つくと、匂いで蕩けそう────
「紗那さーん、時間ないですよー」
「うぐぐぐぐ……」
「もう諦めな……私は妹のふんどしを履いて滾ってた女の子です、周りの女の子にも興味津々で隙あらば狙ってますって。
いい加減正直に周りに白状するんだよ……」
「ま、周りに……!?」
その言葉に、私は雷に撃たれたような衝撃を受けた。
そうか、その手があった────
「うっわ、『そうか、その手があった』みたいな顔しないでよ。
せめて私の何気ない一言からヒントを得ないでよ……」
「助かったよよっちゃん!!
あと、ちょっと手伝って────」
「は? はぁ────?」
その一言だけ言うと、私はおもむろに制服のスカートのホックを外し、ジッパーを下ろす。
外の空気が太ももから股下に流れ込み、女の子たちの甘い風が私の下半身を撫でた。
そして────何とか我慢して、何食わぬ顔で、いつものように、ブルマに着替えるための準備に取りかかる。
もちろん露わになるのは、妹のふんどし────それが今、私の装着物となって、女子更衣室という園の真ん中で女の子たちの吐く息に撫でられている。
ただでさえ甘い空気を吸った妹のふんどしが、女子更衣室の甘い空気をさらに吸って────吸って────啜って────
今私の履く物が、桃色の飽和状態を迎えていることを、肌で感じた。
下着の女の子、ブルマ女の子、ブルマ女の子、下着の女の子、ブルマ女の子、まだ制服の女の子、下着の女の子、ブルマの女の子、ブルマの女の子、ブルマの女の子、下着の女の子、そして妹のふんどしを履いた私。
あぁぁぁぁ M E L T Y ────────
「あれ、紗那ちゃんその下着!」
まず真っ先に声を上げたのは、となりのロッカーを使っていた三好さんだった。
気付いてくれてありがとう三好さん、あとポニテから覗くうなじ素敵だね今度嗅がせてね。
「え? あ、うん、今日ふんどし履いてきたの」
「へ、へぇ────」
少々微妙な顔をする三好さん、あぁそんな顔もむしゃぶりつきたい。
そして、その反応は周りにも聞こえてたらしく、女の子たちが一斉にこっちに注目してきた。
「え、なになにふんどし?」
「紗那ちゃんどうしたのそれ────」
「あ、ごめんあんま恥ずかしいから見ないで……」
うそうそもっと見て?
みんなから見られるならむしろご褒美だから。
お金払ってでも見て欲しいから。
「実はね、最近妹がこれプレゼントしてくれたんだよ」
「妹さんが────?」
「うん、なんか最近、こういうの友だち同士でプレゼントするのが流行ってるんだって」
へぇ~と周りから女子の声が上がる。
この空気、瓶詰めにして部屋に飾っておきたい、やな事あった日とかに少しずつ開けるの。10年くらいかけて。
「最初はちょっと変じゃん、て思ってたけど、案外通気性よくて、今日も履いて来たんだよ。
そういえばこないだよっちゃんにも贈ったんだ、あれどうだった?」
「え、は……? う────うん、そうそう!! 夜とか凄く便利!! 超便利!!」
適当によっちゃんが話を合わせてくれる。
助かるよ────あ、最近ちょっと胸大きくなったね、あ、少し痩せてアンダーバストも細くなってるんだ。
「使ってるの中学生が多いって言うから、ちょっと自信なかったんだけど────変かな?」
「ううん、下着ってどうせ見えないし、便利さとか必要だよね……
よく見たらそう言うの少し可愛くてもアリかも!!」
その声を筆頭に、周りの女の子たちからも、次々に賛同の声が上がる。
「ちょっと私も興味ある」
「今度履いてみようかな────」
「紗那さん使ってるの凄く便利そうだよね」
ありがとう松下さん、桜庭さん、那古ちゃん────
あ、松下さん最近水泳頑張ってるね、日焼け跡、他の子にはあんまり見せちゃダメだからね、その境界国宝だから。
桜庭さん昨日ニーハイ、左右別の履いてきて慌てて脱いでたよね、あんまり生足急に見せられると心臓に悪いんだよ?
それはそうと、那古ちゃん歳下の姉が出来たって話また今度詳しく聞かせてね。
「うーん────まぁ、流行ったら面白そうだね-」
そのよっちゃんのその一言が、多分みんなの引き金になった。
私も今度誕生日に贈ろうかな?
そう言えば服屋さんで売ってるの見た気がする。
へぇ、女性用って案外安いんだ────
そして女子更衣室で、女の子たちがふんどしに話を弾ませて────あぁぁああぁあ────
その後しばらくして、私たちの学校ではふんどしがパンデミック的に流行した。
女子更衣室に入る度に眼福の時を味わったのは言うまでもない。
「紗那、高くつくよ」
「う、うえぇ……」
ふんどし女子たちをちらほらと見かけ始めた数日後の女子更衣室、よっちゃんは私の耳元で少し怒ったように言った。
「な、何か欲しいとかあるの……?
その、私、あんまり、そういう下準備してないんだけど────」
「何考えてんの────そうじゃなくてさ」
よっちゃんが、私のブルマ────の、多分その下を鋭く指差す。
ぁぁぁあ、おお、よっちゃんに、よっちゃんに下半身を指差されてる────
今よっちゃんに下半身指差されてる────
「そうじゃなくて、帰りふんどし買いに行くよ。
私たちだけ流行に乗り遅れちゃうでしょ、アンタにも付き合ってもらうからね」
よっちゃんはそう言うと、不敵に笑いながら更衣室から出て行った。
あぁ────よっちゃん────いつもありがとう────
頼んだらパンツ一枚くらいくれないかな。




