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VTuberの姉さんを救ったら、甘すぎる毎日が始まりました。  作者: くまたに


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第29話 連休明け

「うふふ」


 少女──瑠璃は自室に戻るなり気の抜けた声を漏らす。

 ベッドの上で足をバタバタと暴れさせ、枕に自分の顔を埋める。


 さっき……隼人くんが座っていたのってどこだろう。

 ある程度ここら辺でしょ、と思う所を触ってみるが時間が経っていて彼の居た熱は消え失せていた。


「うぎぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」


 隼人くんを感じながら寝れると思ったのに!

 また寂しい夜の始まりだよ……

 ──おっといけない。こうやって考えるから寂しくなるんじゃん。少しでも楽しい事を思い浮かべよう。


 瑠璃はいつも以上に気を強く保てていた。それは紛れもなく隼人のおかげだ。

 今まで母親が1番だった瑠璃の心を、隼人はわずか数日で変えてしまったのだ。

 瑠璃はまだ『隼人くんと居ると落ち着くなぁ』としか思っていないが、その気持ちはこれから変わりつつあるのだった。


 隼人くんって部活入ってなかったよね。それなのに意外と筋肉あったな……

 私が雷に怯えている時、彼は優しく包み込んでくれた。固かった彼の胸板は私を安心させた。

 まるで小さい頃に泣いてる私をお母さんが抱きしめてくれた時と同じ気持ち……彼なら良いお父さんになれそうだな。

 小さい子に優しくお世話する隼人くんかぁー。


「ふふっ」


 凄く似合いそう。私も小さい子と一緒にお世話して貰いたいな〜。

 優しく抱きしめてもらって〜ぇ♪頭ポンポンしてもらうの〜っ♪

 その光景を想像するだけで胸の奥がじわっと熱くなる。隼人くんの事を考えると、いつもこうなる。

 今までに感じた事が無かったから私の体に何が起こっているの、と怖いと思う事もあるけれど、何故かこのままで良いと思ってしまう。


「おやすみ。隼人くん」


 1枚の壁を挟んで向こう側に居る隼人に、瑠璃は小さく呟いた。そして水に沈んでいくように眠りについていった。

 その顔はとても幸せそうで、"寂しさ"なんてものは少しも見当たらないものだった。


 ◆


 ゴールデンウィークの残りは全てアオイの過去のアーカイブ配信に費やした。

 やはり彼女の配信は俺の心を他の何よりも癒してくれる。


 そして迎えた連休明け。

 月曜日の憂鬱なんてものはまるで感じられず、動画配信サイトでよく流れてくる有名な楽曲を口ずさみながら教室の扉を勢い良く開いた。


「おは、よ……う?」


 いつもは慈愛に満ちた顔で迎えてくれるクラスメイトが、獲物の隙を虎視眈々と狙う猛獣のように見えた。

 自分がなぜ睨まれているのか、全く検討がつかない。先週は笑顔で別れたはずなのに。


「おい隼人!この写真について説明してもらおうか」


 そう言ってスマホの画面をこちらに向けてきた彼の名は、クラスで夏鈴の次に仲の良い綾小路敬太(あやのこうじけいた)。(人に順番をつけるのはナンセンスだが)

 野球部の時期ピッチャーとして期待されている敬太は、常に太陽に焼かれているはずなのに誰よりも白い肌で見るからに爽やかイケメンだ。


 そんな100点満点の容姿を持ち合わせているのだがモテない。

 その理由は性格だ。敬太は引くほどの女たらしだ。中学生の頃には5人の人と同時に付き合い、見事にバレて誰にも手をつけられぬほどの修羅場になっていた。


 そして敬太が見せてくる写真に、俺は見覚えがあった。

 それを目にしたのはほんの数日前。夏鈴に教えてもらった姉さんとの写真だ。

 角度的にキスしているように見えるが、決してそんな事をした覚えがない。


「ああ。その写真の事か」


「隼人め……何故余裕そうに居られる」


「だってそれはキスしているように見えるだけであって、実際はしていないからね」


「なんだってー!」


 敬太は分かりやすく驚くポーズをとる。

 そしてすぐに真顔に戻って言った。


「──ってそんな訳ねぇだろ。これはどう見てもキスしてるだろ」


「してない、してない」


 ここでキレたように否定をしたら却って怪しまれるので出来る限り冷静を装う。

 感情をコントロールするのは俺の特技の1つだ。


「ほら、ここをよく見てみろよ」


 俺はその写真からキスをしていない根拠となる点を見つけ出し、すぐさま伝えた。

 すると敬太は嬉しそうににっこり笑う。


「だよなぁー。隼人がキスなんて……ププッ、ありえないもんなぁー」


 わざと俺の逆鱗に触れようとしているのか。そうでなかったらコイツはただのクズでしかないな。

 今はこんな感じだが、実は困っている人を放っておけない心優しい奴だという事を俺は知っている。

 意中の女子に対しても同じように振る舞えていたらモテるだろうに……

 俺は心底呆れた。


「おい敬太……お前調子に乗りすぎじゃないか?先月だけで30回以上振られてるのはどこのどいつだぁーッ?」


 流石の俺でも怒りは抑えられなかった。敬太にならいくらでも強く言える──クズだから。

 どうせ俺の言葉も、この世界の女達の見る目が無かっただけだ、とでも思いながら聞き流しているだろう。

 悔しいがそれが俺達の毎日と化していた。


 敬太以外のクラスメイトは全く納得した表情でないが、とりあえず1人誤解が解けたのだった。(で、いいよな?)

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