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VTuberの姉さんを救ったら、甘すぎる毎日が始まりました。  作者: くまたに


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第28話 紅茶のお菓子

「体……拭くから少し脱衣所から出て行ってくれない?」


 姉さんは散々泣いた後、少しだけ世間話をして今に至る。

 なかなか重い話だったので気を使う羽目になった。恥ずかしい思いをしつつも、中学生の頃の黒歴史を暴露していたら自然と笑うようになってくれた。


 脱衣所を出てから、姉さんの部屋にホットココアを置いたままなことを思い出したので取りに行く事にした。

 もうホットココアじゃ無くなっていると思うが。


 俺のは空だったが、姉さんのはまだまだ残っていた。飲んで、彼女の体が冷えると困るのでレンジで温めておいた。

 我ながら気の利く弟だと思う。姉さんは俺が義弟で鼻が高いな。


「色々とわがまま言ってごめんね」


 そう言う姉さんの目の下が、少し赤く腫れているように見えるのは気のせいだろうか。

 そんなことは差し置いてお風呂から上がってすぐの姉さん、色っぽい……髪はしっとりと湿っており、頬は火照っている。

 パジャマはモコモコとした生地のけも耳パーカーにショートパンツ。世の中の男子が求める義妹のパジャマ姿を体現したかのような感じだ。


「大丈夫だよ。それにわがままなんて言ってなかったじゃん」


「えっ、でも……」


「まあまあお堅い話はやめましょうよ。さ、お嬢さんココアとお菓子ですよ」


 先程温めたココアと一緒に、紅茶味のスポンジ生地のお菓子をそっと姉さんの目の前に差し出した。

 先週、お義母さんが「瑠璃には秘密ね」と唇に人差し指を当てながらくれたのを思い出し、用意した。


 楽しみにしていたが我慢だ。たしか紅茶に含まれるテアニンにはリラックス効果があったはず。

 このお菓子に含まれているかどうかは別として今の姉さんにピッタリじゃないか。


「んん〜〜〜っ!おいひぃ〜〜!」


 姉さんは頬に手を当てながら幸せそうな表情を浮かべる。

 そこまで美味しいのなら1口だけでも貰っておけば良かった、と心底後悔する。

 じっ、と姉さんの事を見つめていたら、お互いの視線が虚空で交わる。


「な、なによ」


「そのお菓子美味しいかー?」


 せっかくあげたんだ。感想くらい聞いておきたい。

 紅茶の香りが強く、机を挟んで反対側に座る俺でも匂いがしっかりと分かるくらいだ。夜ご飯をしっかり食べたというのに腹が減ってきた。


「食べる?」


 姉さんが1口かじった方をこちらに向けて言ってくる。

 パフェの時といい今といい、姉さんは何も思わないのか?関節キスだぞ。関・節・キ・ス!

 恋愛における一大イベントじゃないかよ!


「い、いきなりだね」


 2日連続姉さんのDNAを摂取するのはダメだ。俺の細胞が彼女無しじゃ生きられなくなる。

 俺は姉さんの弟。俺は姉さんの弟──

 ひたすら心の中でそう呟く。もはや念仏のようになっているが、こうでもしないと姉さんを1人の女子として意識してしまう。

 姉さんは可愛すぎるんだよ……


「言葉で伝えるよりも食べてみた方がよく分かるでしょ。それにこのお菓子、私貰ってないもん。どうせお義母さんが隼人くんにだけあげたんでしょ。それを私だけ食べるっていうのも良くないでしょ。お菓子の誘惑に負けていたから、今やっと気づけたんだけど」


「あ、あはは……よく分かったね。やっぱり頭が良いだけあるね」


 いや、ここは家族の事をよく分かっているね、の方が良かったか。


「頭が良い……確かにそうだね。『特待生』になれるように頑張ったもん」


 姉さんの言う特待生とは高校の授業料を学校側が負担してもらえる生徒のことで、期末テストの各学年上位5名とスポーツにおいて個人団体どちらにせよ良い結果を残した者に《《数名》》にその資格が与えられる。


 そして姉さんはその特待生の1人。期末テストではいつも決まって1位。

 それは生まれながらの才などでは無く、コツコツと積み重ねられた彼女の多大なる努力の結晶だ。

 姉さんを知る人の中にはそれをよく思わず貶すような事を言う者もいるが、俺としては「死ぬほど勉強してから言え。この怠けきった豚野郎め」と軽く罵ってやりたいくらいだ。


「……って話逸らさないでよ!ほら、あ〜ん。食べてみないと分からないでしょ。百聞は一見にしかずって言うでしょー!」


 どうしてそこまで食べさせたいんだ。それに百聞は一見にしかずとは少し違わないか?


「わ、わかったよ。食べればいいんでしょ」


「なかなか聞き分けがいいじゃん」


 ふん、と鼻を鳴らしながら満足そうな笑顔を浮かべている。

 もしかして姉さんは俺と関節キスしたいのか?彼女の行動を見ているとそう思ってもおかしくないんだよな……


 俺はバクバクと跳ねる心臓の音が姉さんに聞こえないかヒヤヒヤしながら、姉さんの差し出すお菓子をかじった。

 その瞬間口の中に紅茶の風味が広がる。味を楽しむよりも、緊張が勝ってしまう。


「ね?美味しいでしょ」


「美味しいね」


「良かった〜!」


 姉さんは目の端をとろんと下げて幸せそうに微笑んだ。その笑顔に俺は言葉を失った。


「(なんて可愛いすぎなんだよ……反則だろ)」


 俺の呟きは姉さんに届くことなく虚空に消えていったのだった。

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