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VTuberの姉さんを救ったら、甘すぎる毎日が始まりました。  作者: くまたに


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第26話 鳴り響く雷鳴

 雷鳴が鳴り響くとともに部屋の電気が消えた。


「きゃっ……!」


 姉さんは無意識のうちに俺の腕にしがみつく。その肩は酷く震えているのが振動で伝わってくる。


「姉さん?」


「うぅ……怖いよぉ……」


 俺の胸の中で必死に小さくなっているからか、声は届かない。

 とにかくホットココアをこぼしたら火傷をするので、姉さんの手に持つのと一緒に近くにあった机の上に置く。

 そして優しく姉さんの肩を揺らしてから言った。


「もう大丈夫だよ」


 先程の大きい雷鳴が聞こえてからは、一度もそれらしき音が聞こえない。落ちたのはあの1回だけだろう。


「ほ、ほんと……?」


「うん。ほら、何も聞こえないでし──」


 フラグ回収とはこういう事を言うのか。この時初めて心から思った。


「きゃぁあぁぁああぁぁぁぁ……ッ!!!!!!!!!!」


 窓の外を閃光が走り、先程のよりも幾分か音を増した雷鳴が鼓膜を震わせる。

 胸に強い衝撃が加わったので見てみれば、一度顔を上げた姉さんが再び顔を埋めたからだった。


「ばかばかッ!雷が聞こえないなんて嘘じゃん!そうやって私のビビる様子を見て楽しんでるんでしょ!?」


 胸板を軽い力でボコスカと叩きながら言われ、すぐさま俺は「ちげぇよ!?」と否定するが聞く耳を持ってくれない。

「もうっ!」と怒る姉さんの声は震えていて、本気で怖がっているんだ、と思い知らされた。


 そんな胸の中で泣く姉さんを前にしているといてもたってもいられず、姉さんを安心させるために彼女の背中に腕を回した。


「え……」


 姉さんはビクッと肩を揺らすがすぐに俺に体重をかけてきた。そして俺と同じように背中に腕を回す。

 うぉーッ!!なんだと!?

 姉さんは気づいてないと思うが、俺の体に柔らかくて大きい果実が押し付けられている。


 これはわざとなのか?大抵の男子高校生は瞬殺されるほどの破壊力。俺が辛うじて意識を保てているのは、窓の外からうるさいくらいに雷が鳴り続いているからだろう。

 意識が持っていかれそうになる度に地面を伝って来る振動をひしひしと感じ、正気に戻される。


 クソッ……!家族相手に興奮してしまった自分が憎い。可能ならば今すぐにでも雷に打たれて記憶をリセットしたい。

 それが無理だとしても、とにかくこの状況をどうにか打開しないとダメだ。何かないのか、と策を立てようとしたその時だった──停電が終わった。


「やった……」


 思わずそんな言葉が口から零れる。

 何とか一線を越えずに事なきを得た──少なくとも俺はそう思っていた。しかし現実はそう甘くなかった。


「今のうちにお風呂に入るから着いて来て」


 終わった……青羽隼人は今日、大人になるのか。黙って生唾を飲み込む。

 じっと見つめていると、その視線に気づいた姉さんは自分の体を腕で包み込み、怪訝そうな顔をしてから言った。


「お風呂の中には入れないよ──まさか私と一緒に入ると思ったの?隼人くんってやっぱり変態だね……」


 ガチトーンで言われてしまい、言われた言葉も強かったからか全身が少し身震いしてしまった。


「ごめんなさい」


 否定しようにも事実なので、無駄に嘘をついて姉さんの気分を悪化させるとビンタがとんできてもおかしくないだろう。


「ま、いいわ。とにかく雷が鳴り止んでいる今のうちにお風呂に入りたいの。でも怖いから脱衣場で待っていてくれない?」


 それはそれでアウトな気がするが俺が一歩引けば実行可能だ。それでもアウトな事には変わりないのだが──

 姉さんがお風呂の中で出す音を全て耳を塞いで聞こえないようにする必要がある。

 仕方ないな。先程驚かせてしまった事に対する謝意を伝える必要があるので、二つ返事で意思表示をした。

 まだまだ夜は長そうだな、と俺は心からそう思った──

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