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VTuberの姉さんを救ったら、甘すぎる毎日が始まりました。  作者: くまたに


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第21話 幼馴染をキレさせてしまった

『今日の1時に駅前集合ね。ちなみに隼人に拒否権はなーい』


 そんなメッセージが送られてきたのは、朝ご飯食べを終えて少し休憩していた時だった。

 何をするのか、そしてなぜいきなり誘われたのかは聞いても返信が来ない。"既読"の文字は着いているのだが……


 どこかに行く用がある訳でも無いので行くか。

 今日こそはアーカイブ配信を見ようと思っていたのだが明日以降にお預けだな。


 ◆


 少し余裕を持って家を出たおかげか、集合時間の5分前には駅前に着くことが出来た。

 夏鈴は……まだ来ていないようだ。女子に待たせるようなマネをしたら男が廃る。


 燦々と輝く太陽に目を細めていると、いきなり視界が暗くなる。

 決して日食などでは無い。これは──このイベントは!


「だぁ~れだ♡」


 普段よりも5割増して可愛らしい声してラブコメでしか見た事のないイベントを始めたのは、他の誰でもなく俺の幼馴染の夏鈴だ。


「おはよ──って言うには遅いか。ちなみに今日は何をするんだ。俺は何も知らないんだが」


「えっとね、隼人にはこれから"償い"をしてもらいます」


 いきなり何を言い出すんだ。償い?俺が何か悪い事をしたって言うのか?


「あーそれだから隼人はダメなんだよ。自分のしでかした事に気づけないのはナンセンスだね」


 一度朧げな過去の記憶まで思い返してみたが心当たりが無かった。


「ごめんなさい、分からないです。俺は何に対して償わないといけないんですか?」


「やれやれ、困ったぼーやだこと。既読無視したじゃん」


「へ?」


「今日既読無視したじゃん!わざわざスマホのストレージを犠牲にしてまでスクショして、可愛い私からのモーニングコールをしてあげたと言うのに……!」


 なんだ。そんな事でキレてんのか?


「たかが写真1枚が占領する容量なんてしてるだろ。せいぜい2メガバイトくらい──多くても4メガバイトだな。それに夏鈴がメッセージを送ってくれていたのは夜だ。モーニングじゃない」


 夏鈴はふざけて言ってると思うが、俺は真面目に返してやった。

 すると夏鈴はむぅ、と膨れっ面をしたかと思えば──


「うわっ、痛いっ!」


 脛を蹴らないで、痛いから。

 そして「あれ、隼人の脛を蹴るの楽し」って顔するのやめろ。


「うふふ」


「い、痛い!そろそろやめてくれ。ズボンに穴あくて」


「ダメージジーンズみたいでいいじゃん」


「今履いてるのジーンズじゃないから良くねぇんだわ」


 ざっと30秒ほど蹴られ続けた。力は抜いていたとはいえ時間が経ってもヒリヒリする。

 今すぐにでも謝意を表さなければ。


「既読無視をしてしまった件についてだが、あれはすまなかった。気が動転していて返信する事まで考えれなかった」


「……うん。わかってるから」


 絶対わかってないだろ。


「と、とにかく!そろそろ今日どこに行くかを教えてくれ」


 暗い空気が消すために話を変えると、夏鈴はきょとんとしてから軽く言う。


「決めてないよ?今日は隼人が償う日だもん。隼人が私をエスコートするんだよ?ちなみにつまらなかったら許さないから」


 だんだん声のトーンを低くしながら言われた。いつもとは違ってマジな雰囲気を帯びているように感じる。

 俺が反応するのを待たずに夏鈴は付け足すように言った。


「テーマは『デート』ね。思わずきゅんきゅんしちゃうのをお願い」


 ハードル高っ。恋愛とは無縁の俺がデートのエスコートだと。

 夏鈴は俺とデートして楽しいのか──?

 チラリと横目に顔色を窺うと楽しみで楽しみで仕方ない、と言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 すっげぇ乗り気じゃん。


 こうして俺、青羽隼人の絶対にやらかしてはいけないデートが始まるのだった──

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