第12話
姉さんの虐めが収まった2日後──ゴールデンウィーク1日目。
正午になる少し前に、俺は目を覚ました。
今日は予定通り『菊月アオイ』の過去のアーカイブ配信を観るとしよう。
朝食を抜いたので、すごくお腹が空いている。配信を観るのは昼食の後にするか。
俺は枕元に落ちていたスマホを手に、ベッドから立ち上がった。その時だった──
こんこんっと部屋の扉が規則的に叩かれる。
「なにー」
「ちょっと、今いい?」
どうやら扉を叩いたのは姉さんだったようだ。「いいよ」と返事すると、扉がゆっくりと開かれ、パジャマ姿の姉さんが姿を現した。
髪は綺麗に整っているので、俺よりも早く起きていたのだろう。
「姉さんおはよ」
「おはよ……う? 」
疑問形なのは俺が起きた時間が遅いのが問題だろう。
姉さんは少し言葉を探すように天井を眺めるたと思えば、意を決したような目をして言った。
「今日暇?暇なら買い物に着いてきてほしいのだけど」
暇かと言われれば、暇では無い。だって俺は大切なゴールデンウィークをアオイと過ごすと決めたから。
今年のゴールデンウィークは5日連続休日だ。だから1日ぐらいいっか。
「いいよ。昼食はどうする?」
「外で食べよ」
「ん。ならすぐに着替えるわ」
「ありがと。じゃあ15分後にリビングに集合ていい?」
「分かった」
「私も着替えてくるわ」
最後にそう言って、姉さんは部屋から消えていった。
服……何にしようかな。てきとーな服装で行ったら後悔する。
悩みつつも急ぐ。黒のワイドパンツに、文字の入った白いTシャツ。春は1日を通して気温差が激しいので、その上に紺色のジップパーカーを羽織った。
俺、なかなかイカしてるのでは?
なんて姿見の前で思い──
「うん、よし」
──と自然と口から漏れた。
ショルダーバッグに必要な物を最低限つめ、肩にかけてから部屋を出た。
リビングに降りると、姉さんの姿はまだ無かった。
2階からは姉さんの足音が振動と共に俺に伝わってくる。その事に苦笑しつつ、俺はポケットからスマホを取り出して画面を開いた。
昨夜は一昨日あったホラーゲーム配信のアーカイブ配信を見返していたのだが、最後まで観たところで寝てしまった。
そのせいでスマホの充電を忘れていた。画面には赤字で『13%』と記されている。
まあスマホを使う事は無いだろうから、いいけど……
そんな事を思っていると、階段の方から足音が聞こえ、姉さんが姿を現した。
黒のオフショルダーに、デニム生地のショートパンツ。肩に着く程度の長さの髪は、ハーフアップにされている。
いつもはクールな印象の姉さんだが、今日は可愛らしい。
化粧をしてるからだろうか。いつもよりも明るい印象がする。
よくこんな短時間で出来たな、とついつい感心してしまうほど姉さんの姿は可憐であった。
「服、凄く似合っているよ。それに化粧したんだね。明るい雰囲気で俺は好きだよ」
言ってたすぐに後悔した。
今の言葉、義弟の俺が言ったところで何も雰囲気出てないじゃないか。なんて恥ずかしい事を言ってしまったんだ……
「えと……ありがと……」
ほら、姉さんだってあまりのキモさに引いちゃってるじゃん。
顔が赤く染っているのはきっと、怒りだろう……何に対する怒りだ。そんなに嫌だった?
「隼人くんも似合ってるよ。いつもよりもかっこいい」
少し上目遣い気味に言われてしまった。なんて破壊力。
この可愛さなら世界征服も夢じゃないだろう。
「ありがとう。遅くなると店が混んじゃうから、もう出ようか」
恥ずかしさのあまり、話を逸らすように言ってしまった。
姉さんは優しく「うん」と頷いてくれた。
こうして俺達のデート(!?)が始まった。
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