客引きの述懐
俺がこの街に立って客引きを始めて、もう何年になるのかね。髪はどんどん薄くなるし、今や立派なハゲですわ。チビでデブだし、そこにハゲが加わるともう三冠王ってね。何の三冠王なんだって。なぁ、全くよぉ。俺がどんどん歳とると、街もどんどん様変わり。もちろん人も入れ替わる。もう昔からの知り合いも少ないもんね。だけどずっとこの街にいるヤツらもいる。俺はそいつらをここでずっと見続けて歳をとってきた。その中で、一際気にしてきた二人がいるわけよ。まだあどけない少年少女だった2人なんだけどね。
少年の方はユキグニと呼ばれてたね。どこぞのホストで、最初こそ生意気そうな子供の顔して、少女と一緒に姿勢正しく歩いてたけど。礼儀正しくてね、俺なんかにも必ず挨拶してきてね。だけど、鼻につくいけすかない男の顔になってったね。そんで背中を丸めてすり足でさ、のろのろ歩く様になったよ。目付きも悪くなったし、雰囲気も圧力みたいなもんが備わって、何か凄みは増してったね。少女とは一緒に歩かなくなって、子飼いのホストとか派手な女を引き連れる様になってさ、今じゃいっぱしの悪党のツラになったよ。顔を合わせれば今も相変わらず礼儀正しくてさ、最近じゃよく立話程度のことはあるけど、俺はアイツのことがあんまり好きじゃなくなっててさ、愛想笑いが増えてんだよな。
アイツ何年か前からはスーツとか着なくなってさ、いつも全身黒づくめにオレンジ色のサングラスをかける様になったんだよね。ホストの仕事は引退したんだろうね。でもほとんど毎日現れはするからさ、余生を緩やかに過ごしてるんだろうとは思うよ。
こうなるとさ、少女の方も気になるじゃない?アキちゃんってんだけどさ、この街に来た最初の頃はアイツと一緒にいたんだよね。だけどさ、別れたのか何なのか、一緒に歩くのを見なくなってね。アキちゃん今じゃいい女になってさ、小さな店をやってんだけどね。俺結構通ってんだよ。週3ぐらいで行ってるかな。あの娘キャバなんてやってるけどさ、浮わついたとこなくて、落ち着いた雰囲気でね、全然変なとこないんだよ。スレてないし、壊れてないっていうのかな。ユキグニとはどうなんだろうね?アキちゃんの店にさ、たまにアイツ来るんだよ。そんな騒いだりもしないしさ、金をたくさん使うわけでもないしさ、1人ですみっこでちょっと飲んだら帰るからさ、何ってあるわけじゃないんだけどさ、アキちゃんはアイツの接客ぜんぜんしないけど気にはかけてるかんじだし、ただならぬ雰囲気なんだよね。昔付き合ってたのかな?すげぇ気になるんだけど、聞けるもんでもないしさぁ。いやアキちゃんはいい女だよ。いい女になったんだよ、ホントにさ。




