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越冬  作者: 社 やすみ
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角瓶と亜希子

 どうしてこうなったのだろう。そう思いながら、俺は店を後にする。俺の女、亜希子の視線をかんじながら。俺は角瓶を入口に置き、ドアを開ける。ポケットには、せしめたばかりの二万円。これで今夜の酒代は確保した。だから角瓶は置いていく。邪魔だからな。


 角瓶にはまだ多少の酒が入っている。まるで、亜希子を象徴している様だ。俺は亜希子をある程度は飲み終わったと言っていい。だが、最後の一滴まで飲み尽くそうとはしない。


 俺たちはもう32歳だ。そう、とっくに結婚していい歳だ。だがしない。俺は亜希子と結婚する気はない。俺は度胸もないし度量もない。アイツを幸せにする自信なんてないし、アイツと結婚して幸せになる未来が思い浮かばない。


 俺たちはもう32歳だ。出会ってから10年以上が経っている。その間俺は、好きに振る舞い、好きに生きて来て、亜希子を省みたことがない。それを亜希子は、笑いながら受け入れて来た。俺はアイツが何を考えているのかわからない。意思ある人間と思えない。


 俺たちはもう32歳だ。俺はホストとして一応上まで行ったし、亜希子もああ見えてキャバ嬢としてトップまで行った女だ。俺は夜の街に毒され、すっかりクズになったが、アイツは高校の頃から変わらない。俺の後をついてきて、俺が置いて行ったらそこで待っている。だが、自分の力でトップまで行った女だからバカじゃないし、行動力もあるはずだ。なのに俺が知る亜希子は俺に引っ張られるのを待っている。アイツを引っ張るのに俺はもうウンザリなんだ。


 俺の周りにはいつだって女がいた。アイツらが何を考えているかある程度わかったが、亜希子だけは分からない。社会に出てからは、俺の周りには客の女がいた。アイツらの考えることも手に取る様にわかったが、やはり亜希子だけは分からない。亜希子は取り巻きの女たちとも、客の女たちとも違う。ただ無感情に俺を受け入れるだけだ。気味が悪いったらありゃしない。俺は、亜希子のことを考えると気分が悪くなる。だから他の女に会う。

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