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越冬  作者: 社 やすみ
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根本的な違い

 部屋に戻ると瑠美架が俺を出迎えてくれた。「お帰りなさい」を言うが早いか嬉しそうに抱きついてきた瑠美架を、俺は強く抱きしめる。


「ただいま」


 そういって瑠美架の頭に口づけし、抱き合ったまま俺たちは、どちらからともなく部屋の奥へと歩き、ベッドに倒れ込む。見ると、瑠美架は新しい部屋着を着ていた。


「可愛いの着てる」


「はい……。 可愛いと思われたくて……。 こういうの、どうですか……?」


 似合っている。とてもよく似合っている。俺はいつでも瑠美架を可愛いと思っているし、この気持ちが変わることはないと思う。そしてそれを伝えたい衝動に駆られる。


「似合ってる。 とても可愛いよ」


 俺の言葉はありきたりで、誰だって言える様なもの。だが瑠美架には格別だった様で、少し(うつむ)き加減ではにかんでいる。白とパステルカラーの柔らかい色彩の部屋着はいかにも女の子らしいもので、少女である瑠美架に本当によく似合っている。しばらく俺が()()れていると、フードを被って視線を遮ろうとした。俺はこの初々しさが愛しくて、瑠美架を抱き寄せようと手を伸ばした。すると瑠美架は素早くフードを取って、俺の腕に抱かれる距離まで来た。


「フード、被らなくていいのか」


「頭、撫でてもらえるかもしれないですから……」


 ということは、頭を撫でてほしいわけだ。俺は左腕で瑠美架を抱きしめながら、右手で頭を撫でた。すると瑠美架も両手を俺の腰に回す。抱き合うだけで幸福感がとてつもなく溢れて、俺は、瑠美架の髪に顔を埋める。少女特有の甘い匂いがして、頭がぼんやりした。その時、瑠美架が言った。


「嬉しいです……」


 嬉しいのはこっちだ。俺は叫びたくなるぐらいに、そう思った。新しい部屋着を見せられて抱きしめ合っただけで、こんなにも満たされるなんて。何て幸せなんだ。瑠美架。瑠美架。瑠美架。


「瑠美架、好きだ」


「私も、大好きです……」


 瑠美架は応えてくれる。いつだって俺への感情を見せてくれる。瑠美架以外の女に満たされたことなんて、これまで一度たりともなかったというのに、瑠美架だけは、俺を満たしてくれる。他の女にどんなに尽くされても、こんな気持ちになったことはない。そう思うと、ふと、亜希子とナギサを思い出した。二人とも、しばしば俺に新しい服を見せることがあったが、瑠美架とは根本的なものが違っていた。


 亜希子は年相応の落ち着いた格好。ナギサは華のある服をよく好んでいた。亜希子には亜希子の、ナギサにはナギサの考える自分のイメージがあって、それを服装で表現していたのだろう。そしてそれを俺に見せていただけに過ぎない。アイツらのやっていることは自己満足だ。だが瑠美架からは、どこまでも俺の好みになりたいという意識を感じる。瑠美架の考える可愛さが、俺に響くかどうかをまず気にしている。亜希子やナギサは自分ありきだったが、瑠美架は、大好きな俺の好みありきなのだ。俺に向き合うところからしか始めないのだ。最初からこうだ。

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