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越冬  作者: 社 やすみ
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中谷亜希子とナギサと雪匡

 ……私が雪匡(ゆきまさ)と出会ったのは高校生の時だった。雪匡は、顔もよくて話も面白く、そしてちょっと悪そうな雰囲気が漂っていたから、女子からとってもモテた。私は教室の隅で大人しく小説を読んで過ごしていたから、彼と接点が生まれる余地はないはずだった。


 ……とは言うものの、当時の私は雪匡のことを好きになってしまっていた。今となっては一体どこを好きになったのかわからない。好きな気持ちはまだある。だけど彼の何が好きだったのか、もう思い出せない。当時の私は雪匡のどこに惹かれたのだろう。クラスメートの他の男の子に心動かされることはなかったのに、何故、雪匡にはときめいてしまったのだろう。ちょっと悪そうな雰囲気がありながら、私の様な目立たない人間にも気さくで優しい。多分そんなところに惹かれたのではなかったかと思う。


「中谷さんって、暗いよね」


 私、中谷亜希子には、度々突っかかってくる()がいた。彼女は、雪匡といつも一緒にいる細い()。可愛い顔に、明るい金髪のストレートの彼女は、随分あか抜けていて、田舎の高校ではまばゆいばかりに光って見えた。モデルの様に細く、腰の部分を何度も折って短くしたスカートから伸びるすらりとした脚は、折れてしまわないかと思うほどの細さだったけれど、女の私から見ても、妙に色気があって、足を組んでいる姿を何故かよく盗み見した。彼女の名前はナギサ。名字までは覚えていない。


「ダイエットとかもしてなさそうだよねー。 羨ましいわー」


 私は別に太ってるわけじゃなかったし、暗いだの何だのと突っかかられてもどうということはなかったけども、彼女、ナギサがちらちらと雪匡の方を見ていて、反応を気にしているのが明らかで、「ああ、冬木くんのことが好きなのね」とすぐに気付いた。二人は釣り合うとも思ったけれど、彼女が私を引き合いにして、自分のダイエット努力を雪匡に知ってもらおうとするところを見ると、どうにも癪に障るな、嫌な女だな、という気持ちになって、私は彼女に悪態をついた。


「そういうところ、好きな人に嫌われるんじゃない」


 そう言いながら私は、雪匡の方を見た。彼女は雪匡が教室のどこにいるか、常に気にしている様子だったから、私が雪匡を見たことにすぐに気付いて、途端にそわそわし始め、私を牽制してきた。その様子が可愛くもあり、滑稽でもあって、哀れであった。


「今、ちらっと冬木のこと見たよね」


「応援してるよ」


「えっ」


 女子の世界は複雑だけど、単純でもある。だから、不意をつく「応援してるよ」の一言はとにかく響く。ナギサは途端に「中谷さんいい人じゃん!」「友だちになって!」とのたまった。彼女を見ていると、やはり可愛くもあり、滑稽でもあって、哀れだなと思った。今思い出しても、雪匡なんかが好きなんて、彼女はバカだ。今も好きな気持ちが続いてる、私もバカなのだけれど。

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