長居
「……ねぇユキグニ、そろそろ帰ろー」
あたしがそう切り出したのは、このハゲでデブでチビのオッサンの態度が何か嫌だったから。ユキグニはオッサンと話すのが楽しいみたいだけど、オッサンはユキグニのことがそんなに好きじゃないみたい。ユキグニだけじゃなく、私込みで嫌いみたいな雰囲気で、あんまり一緒にいたくない私は、何度も帰ろうと急かす。
「ねぇそろそろ行こ?」
「ちょっと待ってくれ」
ユキグニがそう言った時も、オッサンはイヤーな目付きで私たちを見てた。このオッサンはユキグニが駆け出しホストだった頃にはもう街角に立っていたらしくて、ユキグニがオッサンを慕ってるのは伝わってきたけど、オッサンの方はユキグニのことが何か好きじゃない。絶対そう。だから私は早く帰ろうって何度も声をかけるんだけど、ユキグニはわかってなくて、帰ろうとしない。いつものユキグニなら、こんなにこのお店に長居しないし、人といっぱい話そうとしないんだけど、行きつけのお店に知り合いが来たことで興奮した部分もあるみたいだった。いつもなら、ちょっと飲んだら一緒にアタシのうちに帰るユキグニが、子供みたいにうきうきしてて、帰ろうとしない。そしてオッサンに向かって、しきりに「またこの店で飲みましょうよ」と繰り返すんだけど、その度にオッサンがピキるのがいたたまれなかった。
「ねぇ行こ?」
「待ってよ待ってよ」
ユキグニが私の肩を抱きながら、もう一方の肩に頭を乗せてくる。これをする時のユキグニは、だいぶ酔っている。何度もされてるのに全然慣れないあたしは、普段ユキグニが見せない可愛いとこにときめいちゃって、ズルズル一緒に長居しちゃってた。次第にあたしも酔っちゃって、かなりの時間お店にいたんだけど、気付くとユキグニもオッサンもいなくなってて、本当は今日一緒に過ごしたかったのにーなんて思いながら、私ナギサは、一人、夜明け前の街を歩いて家路についたわけなんデス!もう!




