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88話 勧誘と利点

「ギルドに? 私が?」


 彼女は一瞬間を置き、驚いた様子でそう尋ねる。

 それに対しリルはしっかりと頷いた。

 彼女を勧誘したい。

 その気持ちに嘘も偽りもなかったからだ。


「ちょっと待って……君達まだ、ギルド作って――」

「一日、です」


 リルが正直に答えると彼女は再び目を点にし……。


「あははははは!」


 正気に戻ると笑い始めた。

 その様子に苛立ちを覚えたのはベールだ。


「ちょっとそんな笑い方はないんじゃないですか!」

「ごめんごめん~、いや、ね……結局さ私をギルドにいれたいって人はいっぱいるんだよねー」


 それはそうだろう。

 生産職がギルドに居るのは利点がある。

 しかもそれが凄腕となればそれだけ有利と言えるのだ。


「だけどさ、どこも断ってきたんだよねー」


 そう口にした彼女はカウンターの向こう側へと良き、身体を預けるように前かがみになると値踏みをするようにリルたちを見つめ。


「それで……どんな利点があるの?」


 根っからの商売人なのだろう。

 彼女はまずそれを訪ねてきた。

 それに対しリルは――。


「分かりません」


 正直にそう答えると彼女は意外そうな表情を浮かべる。


「へぇ」


 それもそうだろう。

 仲間にしたいのなら嘘でも利点を口にした方が有利だ。

 そう思うのが多くの人間が考える事だろう。

 しかし、リルには彼女がギルドに入る利点が分からなかった。

 クロネコは確かに成長をすると感じた。

 トートもまた、彼と一緒であればクロネコの長所もより活かせ、彼自身も役に立ってくれると考えたからだ。

 だが、リルの……ギルド利点はプレイヤー個人個人の利点とは限らない。


 もし彼女たちが利点を感じられないのなら去っても仕方がないとさえリルは考えていた。

 だからこそ、彼女に利点を求められても分からないとしか答えられなかったのだ。


「つまり、君たちは私の装備が欲しい、だけどそこで活躍することによって利点が出てくるかは全く分からないってことだね?」

「……はい」


 でもギルドには利点がある……勝手だな……そう思ってしまうリルではあったが、彼女の目を見てもう一度口にする。


「でも、ギルドに入ってほしいんです」

「……へぇ、でも正直に言うともっとすごい鍛冶師を知ってるよ」


 そう言われてもリルは首を横に振った。

 彼女が良いのだ。

 その理由もはっきりしていた。


「自分が儲かる可能性だってあったのに友達のための条件を提示してきたシィさんが良いんです」


 そう、それが彼女を誘いたいと思った一番の理由だった。

 だからこそリルは――。


「お願いします」


 今度は頭を下げそう口にする。

 すると――。


「お、お願いします」


 ベールは納得はいってない様子ではあったが一緒に頭を下げてくれた。

 そんな彼女に感謝をしつつリルがゆっくりと顔を上げるとそこには笑みを浮かべるシィがおり……。


「いやぁ……そこまでされるとは」


 その笑みを少しぎこちない物に変えると――。


「ごめん、ちょっと意地悪だったかな?」

「え?」

「入るなら君たちのギルドに入らせてもらうよ、快く依頼を受けてくれたからね」


 そう口にした彼女は二ヘラと笑うと――。


「ここ、しばらく好きにして良いよ、ギルドホームないんでしょー」


 自身の店を指さしそう言ってくれるのだった。

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