79話 砂漠狼と……
砂漠狼の生息地まで来たリルたち。
彼女たちは遠目にモンスターを見つめながらどうしたものかと考える。
「どう考えてもアクティブだよね?」
そう切り出したのはリルだ。
彼女がそれを口にしたのはちゃんとした理由がある。
アクティブが相手では分が悪いのだ。
申し訳なさそうに大きくため息をついたのはクロネコだ。
「ごめん……」
「クロネコさんの所為じゃないですよ!」
ベールはそう言うと狼を見つめる。
そう、普通のアクティブならば特に問題がない。
公平分配の範囲内でリルやベールが狩ればいいだけだ。
しかし……。
「リンク、召喚、そしてPTの場合は一番Lvの低いプレイヤーを狙う……最後のは初耳だったわ」
「最近追加されたみたいなんだよね」
だからこそ、クロネコはこの情報を伝え忘れていたともいえる。
それならばカナリアの支援でトートを守ればいい。
そう思っていたのだが……。
「カナさん、行けそう?」
「流石に無理ね……防御魔法、そして彼の防御力を考えても……囲まれたら終りね」
「つまり囲まれなければ良い……けど」
見つめる先には数多くの砂漠狼。
数えるのも面倒になったリルはげんなりとした表情で――。
「あの数ならベールの魔法でどうにかなるとして――問題は」
「その奥だね……」
トートもがっくりとしている。
そう、砂漠狼の奥。
そこには一回り大きな狼が居たのだ。
どうやらホブと同じようなフィールドボスのようだが……。
「あんなモンスター見たことないよ、あれも追加要素なんじゃないかい?」
あはは……と乾いた笑いを上げながらクロネコはそう言う。
「…………まぁそうでしょうね。でもここまで来て帰るなんて言わないわよね?」
「……うーん、できない事はないとは思うけど……トートさん、危なくなったらすぐに後ろに下がって」
「分かった……」
トートに確認を取った後、リルは仲間達へと目を向ける。
「カナさん、支援を……ベールの火力を強化して」
「なら、クロネコとリルには回避優先かしら?」
リルは首を横に振る。
意外そうな顔をしたカナリアは「違うの?」と尋ねてきた。
「私には支援なしで良いよ、その代わりクロネコとトートの防御に気を使って」
「それはありがたいけど……大丈夫なの?」
なぜ自分への支援は良いといったのか……それは単純な理由だ。
カナリアのキャパオーバーだと考えたのだ。
いくら凄腕のプリーストだと言っても支援する人数が増えれば当然、負担が増えてしまう。
「どうなるか分からないけど……気合で避けて見せるよ」
リルはそう言うと準備を整えるようにカナリアへと伝えると……自身のリソースを確認する。
「……あ」
そこでリルは気がついてしまった。
罠を買い足しておくのを忘れていたのだ。
「リル? 今の……あ、ってなに?」
当然カナリアに聞こえないわけもなく、問い詰められ彼女はゆっくりと首をそちらへと向ける。
そして、しばらく言いづらそうにしていたが……。
「罠、忘れちゃった……」
そう伝えるとカナリアは大きなため息をし、ベールは首を傾げる。
「忘れちゃったって……近くの町で買い足せないの?」
「そうだ! それ!」
リルはベールの言葉にハッとするが――。
「確かテストジョブは首都でしかアイテムが無いって聞いたよ」
クロネコにすぐにそう言われてしまい。
「なんとかする……」
リルはそう言いながらがっくりと項垂れるのだった。




