69話 騎士戦
「っ!?」
リルはフェンリルで刀を反らす。
彼女の得意技だ。
しかし――。
「そ、反らしきれない!」
リルがそう叫んだ次の瞬間。
彼女の足には深々と刃が刺さり……。
「っぅ!?」
ビリビリとした痛みが彼女を襲う。
更にリルは異変に気がついた。
ぐらりと視線が揺れたのだ。
「……え?」
何が起きたのか? 一瞬分からなかった。
だが、その理由は彼女のステータス上に現れていたのだ。
「出血……」
バッドステータス。
刀による攻撃を受けたからだろうか?
効果を確認すると――。
「出血!? まずいわリル……特性殺しよ!」
リルの言葉を聞くなりカナリアは忠告をした。
そして、その理由をリルも理解したのだ。
「……めまい効果、アバターの行動阻害!?」
そんなバッドステータス聞いたこともない。
リルはそう思いながらも体勢を整えようとする。
しかし、まるで貧血を起こしたかのように視界が揺れ……。
「あ……」
呆けた声を出した彼女は再び体制を崩してしまう。
「貰った!!」
騎士はその隙を逃すことなく、刀を振るい。
それを見ていた一同は息をのむ……。
予想外の事に反応しきれなかったのだ。
「…………!!」
だが、そんな中でリルはゆっくりと深呼吸をすると――。
「高速設置!!」
刀が迫る中、罠を足元に設置し踏み抜く。
すると彼女の考え通り、罠により体は騎士から離れた。
当然騎士の攻撃は空を裂き……。
「…………」
暫く硬直をしていたがすぐにリルの元へと向かってきた。
「カナさん! 魔法で治せない?」
「――っ!! ダメよ、アルケミストの血止めの薬じゃないと!!」
魔法では治せないバッドステータスだと知り思わず舌打ちをするリル。
だが、敵は待ってくれない。
バッドステータス解除まであと1分……長い……それに!!
このままでは1分と持たずに負ける。
何故そう思ったのか? 理由は簡単だ。
HPが減り続けているのだ。
そして、同時にMPまでも減っている。
血液が出ているのだから仕方がない。
そう理解もできたのだが……。
「こんな凶悪なバッドステータスがあるなんて」
リルは思わず愚痴ってしまうが……あるものは仕方がないのだ。
罠を使えばリルは回避をできる。
だが、ターゲットが他に移った場合はどうにもしようがない。
自分を狙っている内に倒さなければと考えた少女は――。
「攻撃される前に!!」
倒しきらなくては! そう答えを出した。
だが、速度は足りない。
このままでは再び刃に襲われるだけだ。
なら、その足りない速度を補うしかない……再び高速設置を使い、騎士へと近づき。
「ビューレイスト!!」
フェンリルのスキルを放つ。
アバターは確かにバッドステータスを受けている。
しかし、リル本人はまだ元気だ。
それならば連撃できる回数も多いだろう。
そう考えていた。
しかし――。
「…………っ!?」
無情にもそのスキルは4回続いた後止まりかけ……リルは目の前に迫る刃を見つめる。
スキルの後に起きる硬直だ。
このままスキルが終わってしまえば彼女のHPはたやすく奪われてしまうだろう。
例え、本当の死が来るわけではないと言ってもそれでも――多少なりとも恐怖はある。
リルは――。
「こ、のぉぉぉぉお!!」
咆哮を上げ、止まりかけたスキルにかける。
まだ、完全には止まっていない、わずかな可能性に賭けることを考えるのだった。




