4話 一緒に来ない?
彼女はよろよろと立ち上がり、はぁはぁと息を切らしている。
「きっつぅ……」
いくら、VRMMOはやったことがあると言ってもこのゲームは今日始めたばっかりだ。
流石に本気を出せばまだ慣れていない事からも疲れてくる。
しかし、なんとかなったことに彼女はほっとしつつ、ドロップがストレージに入ったことを知らせるウィンドウを横目に少女の方へと向く。
小さく丸まり、ぎゅっと拳を握り目をつぶっている彼女はどこか小動物のように見える。
装備は杖、見た目は長い金髪を左耳側だけみつあみにされている。
そして、先ほど助けを求められたときに分かったが青い瞳……アニメやゲームであれば正統派ヒロインと言った感じだ。
『どう見たって初心者だよね』
しかもゲームに慣れていない。
何故ならその怯えようから見てもそれは明らかだった。
「大丈夫?」
「……ぴぃ!?」
「あ、ご、ごめんね」
驚かれてしまい、リルもその声に驚きつつもしゃがみ込み彼女の様子をうかがう。
すると彼女はゆっくりと辺りを見渡し……。
「あ、あの化け物は……?」
「倒したよ、ちょっときつかったけど」
いや、正直きつすぎたが、そこは言っても仕方がないだろう。
それに撃破しドロップと大量の経験値を得たのだから、それでいい。
「た、倒した? あの化け物をですか!?」
「化け物って……まぁ、最初にアレ見たらそう思うだろうけど、基本的にしっかりとレベルを上げてステ振ったら倒せるよ?」
目の前の少女は魔法職であることから、攻撃魔法があれば距離さえ間違わなければ問題はない。
もしヒーラーであれば難しいだろうとは思ったが、恐らく無理ではないだろう。
「そ、そうなんですか……」
「そうそう」
リルは彼女を声以上、怯えさせないよう優しい声でそう告げると――。
遠くにゴブリンが沸いたことを見つけてしまった。
「さ、ここから離れよ? ここにはアクティブがいるから、このままだと危ないよ?」
「あくてぃぶ?」
そんな事も知らないとはこれはゲーム初心者で間違いないと確信を得た彼女は「歩きながら説明するから」と告げ、彼女を立たせると街へと向かう。
疲れていることもあって、少し町で休みたかったのだ。
時間の方はまだ余裕があったから、その後町の中を探索しようと考えていた。
そのついでに彼女を町に送るだけだ。
恐らく先ほど粒子になった彼女の仲間も町に居るはずだ。
本当に仲間であるかは分からないが、一緒に居たことからその可能性は高いだろう。
町へと向かう途中、パーティーらしき人達が三人前から向かってくる。
その中の一人は先ほど死に戻りした人だ。
彼らはリルたちに気がつくと目を丸め駆け寄ってくる。
そして――。
「あ、お前!! なんでヒール使わないんだよ!!」
「そうだよ! 魔法使いだって聞いたからPTにいれてやったんだろ!!」
怒鳴りつけられびくりと体を震わせてしまう少女……。
そんな彼女を見て、リルは……いや冬乃は昔の事を思い出していた。
『おんなじだ……』
「なんでファイアボールなんだよ!! ヒール取れって言っただろ!!」
「ご、ごめんなさい、攻撃出来たほうが良いって思って……」
彼女の言葉に顔をゆがめる彼らを見て、リルは一歩前へと踏み出した。
ストレージにある新たな装備を身に着けて……。
緑色とベージュであしらわれた装備に変わった彼女は腕を組み――。
「いるんだよね、ステータスやスキルに口を出す人……何も分からない初心者相手にさ……」
「はぁ? なんだよ、初心者に教えて何が悪いんだよ!!」
「それでゲームが楽しくなくなって辞めちゃう人がいるのにさ……作りたくもないキャラを作らせて、教えて何が悪い? そんなの君たちの都合を押し付けてるだけじゃん」
初心者だからこそ好きにやるべきだ。
失敗したってキャラを作り直せばいい……。
それ嫌なら詳しい人に聞いたり調べたりすればいい。
「そんなの、ただ飽きただけだろ!!」
「ゲームは怖いからもういいって言うぐらいになっても?」
事実彼女は押し付けられてやめてしまった友人を知っていた。
「あ、あの……」
「君も無理に話を聞かなくたっていいんだよ、攻撃魔法使いたいんでしょ? ならそうするべき、分からない事なら教えてあげるから一緒に来ない?」
怯える彼女にそう言うとリルは手を差し出す。
折角、出会ったのだ……そして友人と同じ目に遭っている。
それだけで彼女を放っておく気にはならなかった。
「おい! 俺の仲間だぞ!!」
「押し付けるのを仲間とは言わない、一緒に居て楽しい人達を仲間って言うんだ」
「はぁ? なにかっこつけてるんだよ!!」
男は怒鳴るがリルにとってはどうでもいい事だった。
今重要なのは少女がこの手を取るかどうかだ。
「一緒に居て楽しい……」
その言葉はリルにとって大事なものだった。
もうやめようか……そう思っていたのを繋ぎとめてくれた言葉だったからだ。
しかも、そのおかげで出来た絆もあった。
「わ、私……一緒に行っても良いんですか?」
「勿論!」
おずおずと手を握ってきた彼女にリルは笑みを浮かべるのだった。




