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39話 追いかけっこ

「はぁ……はぁ……」

「ふぅふぅ……」

「は、あっ……は、ぁ……」


 3人の少女は息も絶え絶えと言った感じでその場に座り込む。

 VRではあるが汗が流れる不快感は感じているし実際に汗も出ている。

 その中でもベールのやけに高揚した顔とどこか艶っぽい呼吸に目を奪われるのは何も男性だけではなかった。


「じょ、じょーほー……」

「し、しつ、こい……」


 だが、驚くべきは少女の体力だ。

 リルはベールがいたから本気では走ってはいなかったとはいえ、長時間ついてこられるほどの実力があったのだ。

 実際に身体を動かすのが得意かどうかは問題ではない。


「けほっ……ふぅ……ふぅ、も、もう走れ、ないよ……」

「だめ、わ、私も……無理ぃ……」


 このまま逃げ切るのは不可能だ。

 そう判断して情報屋の少女を見つめる。


「……じょ、じょうほうを……」


 なぜそこまで必死なのか?

 少し興味が出てきた……だから彼女へとカマをかけてみることにしたのだ。


「君、情報屋って……嘘、でしょ……」

「――っ!?」


 反応があった。

 だが、少しおかしい……そう思い、リルは次の言葉を告げる。


「ごめん、嘘じゃなくてなったばかり……とか」


 リルの言葉に今度は顔を下に向け地面を見つめる少女。

 彼女はその小さな手を握り締め――。

 ゆっくりと顔を上げる。

 だが、髪が足れ表情はうかがえなかった。

 唇を噛み、なにかに耐えるかのようにすると――。

 立ち上がり、リルたちに背を向けてしまう。

 なったばかりというのは本当だろう。 

 だが、その態度は理解できなかった。


「どう……したの?」


 ベールもそんな彼女を見て心配になったのだろう……。

 優しく声をかけると彼女は走り出してしまう。


「あ!?」


 それは追いかけられている時よりも速く彼女もまた、本気ではなかったことが分かった。

 何故本気で追いかけなかったのか? そんな疑問を感じる前に――。


「ごめんベール! ここで待ってて!!」


 リルは彼女を追いかける。


「え? ちょ、ちょっと!」


 一人置いてかれたベールはぽつんとしながら辺りを見回してみると、様々な人たちに見つめられていることに気がつき――。

 その顔を耳まで真っ赤にすると慌てたように立ち上がり、リルたちが走って行った方へと走り始め。


「まって、まってよー!」


 悲鳴に近い声を上げながら追いかけ始めるのだった。






 リルがクロネコという少女を追いかけ始めてからいっこうに距離は縮まらなかった。

 自前のプレイヤースキルのお陰もあって何とか追いかけられているという状況だ。


「あれ……絶対、AGI極振り(きょくぶり)だ……」


 先ほどまで追いかけられていたのに、何故追いかけなければならないのかは分からなかった。

 しかし、このまま放っておくのも気が引けたのだ。

 だが、このままでは追いつくことはできない。

 とはいえ可能性がないわけではなかった。

 その可能性は彼女が全力追いかけてこなかった理由にも繋がっていたのだ。

 リルが人や障害物を避けて走るのに対し、彼女はすべて避け切れずにあたっている。

 前を見ていないわけではない、一応避けようとしているそぶりは見せていた。

 だが、避け切れないのだ……。

 つまり、プレイヤーの反応速度がキャラクターに追いついていない。


「あれなら……」


 追いつける!

 リルがそう確信した瞬間、彼女は角を曲がり――。


「きゃあああああ!?」


 悲鳴と共に大きな鳴り響く。

 リルはその悲鳴に慌てて曲がるが――。


「ひゃ!?」


 小さな悲鳴を上げ、ギリギリのところを樽を飛び越え……。

 着地と同時に後ろへと振り返った。

 そこには倒れて目を回している少女が一人……。


「……大丈夫?」


 追いかけまわしてしまった結果こうなってしまった事に申し訳なさを感じつつリルは彼女へと話しかけるのだった。

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