35話 合流
「ありがとうございました!」
村長に見送られつつリルたちはフールの村を後にする。
「大丈夫、じゃなかったよね?」
「うう……」
リルはベールの言葉に小さな唸り声をあげた。
それもそうだろう。
正直油断していた。
モンスターが武具を狙っていると言っている時点で襲撃を警戒しておくべきだったのだ。
そう思いながら――。
「ごめん……」
と素直に謝る。
思えば彼女と一緒に行動することになって彼女の魔法に頼りっぱなしだったと考え直す。
確かに今まで装備も揃っていなかった。
だが、それだとしても経験者として恥ずかしい。
そう考えた彼女は――。
「ご飯食べたらまた遊ぶ?」
リルは遠慮がちに尋ねる。
いくら今日が休みだと言ってもベールにはベールの予定があるだろう。
「いいけど……リルちゃん、宿題は?」
「お、終わらせたよ!?」
妙に上擦った声にいぶかしんだベールの視線が刺さるが……。
「ほ、ほら私だけ装備を手にいれても、ね?」
しかもユニーク……強力な装備だ。
フェアじゃない。
リルがそう考えるのは当然だった。
「宿題……現国だよ? 渋川先生、怖いよ?」
「…………だ、大丈夫」
その名前を出されると不安にはなったが――。
「本当に?」
「も、問題ないよ! じゃぁ1時から! それならご飯食べてからでも時間あるし宿題終わらせるよ!」
「やっぱりやってなかったんだね」
リルの言葉に呆れたような笑顔を浮かべた少女の笑い声が聞こえ、リルは「うぐぅ」と口にする。
しかし――。
「ま、間に合わなかったら、明日やるし!」
そう意気込むリルは見えてきた町の門をくぐり抜けると鈴の音に気がついた。
一体なんだろうか? 辺りを見回してみるが音の正体らしきものはない。
首を傾げていると視線の端にピコピコと光るアイコンがある。
「どうしたの?」
「メールが来たみたい」
リルはそれを確認してみると差出人はカナリアだ。
そう言えば彼女をベールに紹介していないと気がついたリルは時計を確認する。
まだお昼には時間がある。
「ねぇ、ベール私の友達が近くのお店で休んでるって言ってるんだけど、時間ある?」
「近くのって……私部屋着……」
リルはそれを聞くと手を振りそれは違うと示す。
「この町の中にあるみたいだよ」
「ゲームの中のお店? 昨日行ったところみたいな?」
「それは言ってのお楽しみ!」
リルはそう言うとベールの手を取り歩き始める。
急に手を引かれたことによってベールは驚くが、リルはカナリアのメールの内容を思い出し微笑む。
なぜなら――。
「ここ!」
たどり着いたのは喫茶店のような可愛い店だ。
中に入るとNPCが「いらっしゃいませ」と声をかけてきたが、辺りの席へと目を向ける。
「リル、ここよ!」
名前を呼ばれそちらの方へと向かうとカナリアは目を丸め、すぐに目を細めて困った人を見るように笑った。
どうしたのだろうか? とリルが首を傾げると――。
「お友達、疲れてるわよ」
「へ? ああ!?」
そう言えば手を引っ張って無理やり連れてきたようなものだ。
気がつくとベールは息を切らしていた。
「リ、リルちゃん酷いよ……」
「ごめん……で、でも、ここならベールも気に入ると思うよ?」
リルはベールを席へとつかせ自分も隣へと座り込む。
「ベール、この人が私の友達でカナリアさん」
「よろしくね」
カナリアは微笑みながらそう言うと紅茶らしきものを口へと運ぶ。
「は、はい……すど……ベールです。よろしくおねがいします」
危うくリアルネームを言いそうになった彼女を小突き止めたリルは机の上を見てみる。
ここがカナリアの言った通りならメニューがあるはずだったからだ。
だが、それらしきものはない。
「えっと――」
「机を3回ノックしてみて」
カナリアの言う通り机を三回叩いてみるとメニューが現れ、現実でよく見る表記もあった。
その中でリルは――。
「アップルパイのバニラアイス添えだって、それにこっちはふわふわホットケーキ!」
「食べ物? 食べるの?」
ベールの疑問にリルは頷く。
VRゲームのだいご味と言っても良いだろう。
「味は同じとは限らないけど、ここは現実顔負けだってさっきメールしてくれたんだよ?」
頬を緩めた少女はそう言うとアップルパイとカフェモカを選び――。
「ベールはどうする?」
隣にいるベールへとメニューウィンドウを見せるのだった。




