34話 不公平
「んんぅ……」
リルはゆっくりと瞼を持ち上げる。
目を覚ますと頬にはやけに柔らかい感触を感じた。
「あ、起きた?」
聞こえてきたのは昨日今日とよく聞く声だ。
「ん……」
枕なんてアイテムがあったのだろうか?
そんな疑問を感じつつリルはもう少しこの柔らかさを堪能したいと思ってしまった。
何とも心地よい感触だったのだ。
「リ、リルちゃん……恥ずかしいよ?」
だが、妙に恥ずかしそうなベールの声が気になり、辺りを見回そうと顔を動かしてみる。
「ひゃん!?」
変な声を上げないで……とリルは口にしようとし、目を見開く。
それもそうだろう。
そこには枕なんてなかったのだ。
そう、リルはベールの膝の上に頭を乗せていたのだ……。
いくらVRとはいえ肌で感じる風などまで再現されているこのゲームで膝枕をすれば当然、ベールはその感覚を感じるのは当然だろう。
「ご、ごごごごごめん!」
いくら女子同士だとしても、これは恥ずかしい。
そう思い慌ててリルは顔を上げる。
「ひゃぁ!?」
すると頬に何かが当たった気がしたと同時にベールがまた声を上げる。
どうやら胸をかすめてしまったようだ。
「「………………」」
少し涙目になった少女は自身の胸を隠す様に抑え、その様子をリルはじっと見つめる。
そして、ゆっくりと息を吸うと――。
「…………な、なんでそんな目で見るの?」
ベールに警戒されるが、リルは思わず半眼になって眉をひそめてしまったのだ。
何故と言われると困ってしまうが……。
リルは自然と自身の胸へと視線を落とす。
そこには普段と変わらない体があり……。
続けて現実でのベールの姿を思い浮かべ……。
「二物どころじゃない……不公平だ」
そうつぶやくと――。
「何となくわかったけど、困る時だってあるんだよ?」
「ううー!」
ベールは困ったように口元を引きつらせ笑うとため息をつき……。
「男子からの視線は気になるし……」
「それは、嫌だけど……でも……」
リルは何かを言おうとして顔を赤らめるとそっぽを向く。
そして、もじもじとしつつ――。
「それでも、羨ましいんだもん……」
「………」
リルのやけに子供っぽい言い方にベールは思わず顔を赤らめる。
そんな彼女の姿を見たのは初めてだったからだ。
「な、なに?」
「リルちゃんはそのままで良いんだよ!」
なぜかぎゅっと抱きしめられてしまいリルは困惑をするが……。
互いに本人とほぼ同じアバター、そして女同士といってもリルは小柄だ。
だからこそ見る人から見ればリルは妹のようにも見られてしまうだろう。
だが、リルはそんなことはどうでも良く……。
『な、なにこの柔らかいの……』
不公平だと思いつつももう少しこのままでいたいと考えるのだった。
暫くそうしていたが、はっと我に返ったリルは慌てて声を上げる。
「ベ、ベール!?」
声は裏返ってしまったが、若干リルの拘束が緩みほっとしたところ。
「クエストちゃんと終わってるか確認しないと!」
慌ててそう言うとリルはクエスト欄を見てみる。
そこには村長への報告という文字があり……。
「やっぱりきちんと終わってはいなかったんだ」
「むぅ……」
不満そうなベールの腕の中から逃れるときょろきょろと村長を探し……彼へと話しかける。
すると彼は――。
「ぼ、冒険者様、無事でしたか?」
彼の言葉にリルは苦笑いをしながら「ま、まぁね?」と答えるのだった。




