19話 約束
「分かれ道、だね?」
目の前にある分かれ道を見てベールが首を傾げながらそう言った。
リルはランタンで奥を照らすが、暗闇ばかりで何もない。
「んー……」
リルは少し考えこみ右の方へと目を向ける。
だが、進もうとし……やはり立ち止まった。
「どうしたの?」
「あ、うん……」
進みたいが一つ気がかりだったことがあったのだ。
それは単純な事だ。
「ベール、大丈夫? 疲れてない?」
このゲームは……いやVRゲームというのは慣れるまでかなり疲れるのだ。
リルも少しゲームをやったらその日はリアルで寝込むほど疲れてしまった経験があった。
「あ、うん……大丈夫」
そうは言うが、少しふらついているベールを見てリルはため息をつく。
無理をしているのが分かったからだ。
「少し休もうか……」
「でも、またゴブリンが出るかも」
そう言われるとそうなのだ。
道中魔物が一匹も居ないなんてことはなかった。
しかも血を浴びてしまえば装備破壊をされる事からリルはまともに攻撃が出来ない状況だ。
弓を使おうにも射線がうまく通らず使い物にならないのだ。
ましてや敵はハイゴブリン、雑魚とはいえそれなりの速さはあった。
悠長に弓をひいている時間なんてなかった。
「そう、だよね」
これ以上の戦闘はベールの負担になる。
そう思いつつも先に進めばまた戦いになるだろう。
『だけど引き返すにしても、もう魔物が沸いてるはず……』
せめてベールがVRに慣れてから来るべきだったか……そう小さくつぶやいたリルだったが……。
「あ、そか……」
一つ良い案を思いついたのだ。
「ん?」
笑みを浮かべて見つめられたベールは可愛らしくその顔をキョトンとさせている。
綺麗な金髪と青い瞳は黒くすれば本人そのものと言って良いだろう。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
「ベールが選んでよ、道」
「え、ええ!? そんな無理だよ、だってゲーム詳しくないんだよ!?」
ぶんぶんと首を振る彼女にリルはクスリと笑う。
それを見てだろう両頬を膨らませたベールは訴えるようにしたからリルを見上げるような姿勢を取ってきた。
「ぅぅ、ごめんって……でも道を選ぶぐらい詳しくなくても大丈夫、第一このダンジョン私も初めてだし正解がどっちかなんてわからないよ」
そもそも突破をした人物が少ないであろうこのダンジョンに情報があるかも怪しいのだ。
「……わ、分かった」
納得はしてくれ様子の彼女にリルは「ありがとう」というと――。
「で、でも笑ったのは許さないからね?」
「ごめんって……」
リルが頭を下げるとベールはぷいっとそっぽを向いてしまい。
「今度学校で会ったら、ゲームの事一杯教えてね……」
「今度って月曜日絶対に会うし、何もリアルじゃなくても……」
ゲームの事を話すなら、別にリアルである必要はないのだ。
だからこそ、思わずそう言ったのだが……。
「だって、外でもちゃんと話したいんだもん……」
しゅんとした後、何かを求めるように上目遣いで見つめてくる彼女を見てリルは思わず慌ててしまう。
なぜか彼女が泣きそうになってたからだ。
VRゲームでは現実と同じように泣くこともできるのだ。
「ちょ、ちょっとまって! 分かったから!」
「本当? 絶対だよ!」
今度はパァっと表情を明るくして喜ぶ彼女にリルは思わず顔を赤らめる。
『なんか、子犬みたいって言うか……妹みたいっていうか……これはずるいなぁ……』
恐らく彼女の周りに集まる人間はきっと保護良くか何かを刺激されているのだろう。
そう理解するリルだった。




