15話 身バレ
「さてと……まずはこれね?」
リルはそう言うとポーションをいくつか手渡す。
「これは?」
「MPポーション、魔法使うと減っていくでしょ?」
「あ、ありがとうございます!」
笑みを浮かべて受け取る彼女にリルは満足そうに頷く。
やはり、魔法使いならば欲しいアイテムの一つだろう。
「じゃ、いこっか?」
そう言い、共に町の外に出るとリルはすぐにもらった位置情報へと目を向ける。
ちゃんと確認しなければとんでもない方に行ってしまうのは分かりきっているからだ。
「えっと、今はここだから……」
地図を確認し、向かうべき方へと目を向けたリル。
対し、ベールは――。
「こっちですね?」
「いや、待って、そっち正反対」
なぜか意気揚々と反対に足を運び始める彼女を慌てて止める。
なんだか、入学当初にもそんな事があったような気がしたリルだったが……。
「私たちが向かうのはこっち」
「…………なんだか似てますね」
なにが?
そう言いかけたところで――。
「顔も同じですし、なんか学校のクラスメイトに似てます。私じつは入学式の時学校に行こうとして迷ってしまったその時その子が助けてくれたんですよ。こっち! って……」
「………………」
彼女の言葉を最後にリルは確信した。
目の前の少女は間違いなくクラスメイトの少女だ。
「その子は名前を――」
「待ってちょっと待って!」
「はい?」
いきなり身バレをするわけにはいかない。
何故ならここにはまだ人が多い。
それだけじゃない、昨日の決闘を見てる人はいるし、そうじゃなくても美少女が二人並んでいるのだ。
興味を持って立ち止まる人たちもいた。
失礼だな……そうは思っても、これはアバター。
そいう言い聞かせればまだ何とかなった。
しかし、本人と同じ姿だとバレればナンパの数が増える。
容姿にはそれほど自信がないわけではないのだから……。
「いい? こういうゲームで本名は名乗っちゃいけないし、相手のを言うのもダメ、身バレなんかしたら大変なんだから」
「……そうなんですか?」
キョトンとする彼女に悪気はないのは分かっている。
だからこそ、優しく言ったつもりだ。
「でも、本当に似てるんですよ?」
「ああ、もうわかったから、それについてはダンジョンについたら話すから」
リルはこれはもう、彼女には教えないと収まりそうもない。
いつかぽろっと言われるよりはましだ。
そう考え、ダンジョンについたら言おうと考えるのだった。
「わ、分かりました」
そう言われては彼女も何も言い返せないのだろう。
すぐに聞き入れてくれたのだった。
「それでこっちですよね?」
すぐに踵を返し歩き始める。
だが、その方向は――。
「だからそっちは逆だって! こっちだよ、こっち! もう目が離せないなぁ!!」
いつもは彼女を守る親衛隊のようなクラスメイトがいるからこそ、特に何も考えていなかった。
しかし、いざ彼女を一人にするとこんなにも心配事が多いのかと思いつつもその手を取り、歩き始める。
「やっぱり、あか……リルちゃんは優しいですね」
危うくリアルネームを口にしかけた彼女は慌てて言いなおし、リルは大きくため息をつく。
これはいつかポロっと口をこぼしてしまうかもしれない。
そう思うと気が気でない。
「どうしたんですか?」
「なんでもない……さ、行くよ?」
目的の洞窟は町からはそこまでは離れていない。
だが、初心者向きではないというそこに果たしてどんなアイテムがあるのだろう?
ただ、カナリアが一緒にいかない時点で恐らく中級車以上には人気のないダンジョンなのだろう。
「今ならなにかいい物が眠ってるかも……」
「ん? そのダンジョンには誰か眠ってるんですか?」
「いや、そうじゃなくてね?」
首を傾げる彼女を見てリルはハッとする。
そう言えば目の前の少女にはある噂を聞いたことを思い出す。
いや、噂というよりかはとんでもないリアルスキル持ちだという事を……だ。
そして、彼女の杖と自分の服を交互に見つめ……。
「まさかね……」
と乾いた笑い声をだすのだった。




