113話 ハルの思考
ハルをおびき出すのは簡単だ。
そう口にする兄さんの言葉にリルは首を傾げる。
そんな方法があるのであれば、リルに思い浮かばないはずがないと思ったからだ。
確かに彼女には今まで様々な事されてきた。
だが、それはほぼ笑える程度のものだ。
だからこそ仲が良かったとも言える彼女。
しかし、アスカレイドで出会ってからは彼女の考えていることが分からなくなってしまった。
確かに助けては貰っていた。
しかし――。
「どうした?」
「いや、なんか怪しいって思って……」
リルはそう言うも兄さんは笑うだけだ。
なにがおかしいというのだろうか?
「怪しむな、あいつはいつだって行動原理を変えたことはないぞ?」
「はぁ?」
何を言っているのだろうか?
何故そんな事が言えるのだろうか?
リルはじとっと兄さんを見る。
「レッドなんですよね? 悪いことしてるんですよね?」
ベールもいぶかしむように尋ねる。
すると彼はうむっと頷き――。
「確かにレッドだ。だが、ハルが悪い事をしているところは見たことないぞ?」
「何を言って……」
そこまで口にしてリルはハッとする。
確かに彼女がしてきたことはストーカーをバンにする。
そして、その素性を明かす……それはやりすぎだとは思っていたが……。
「後やってたのは勧誘と……掲示板を覗き込んでいただけ……」
確かにレッドの一員だというのは知っている人がいた。
しかし、具体的に彼女が何をしたというのは聞いた覚えがない。
「あ、あれ?」
そう思うと疑問だった。
やり過ぎではあるが彼女は守ってくれたのだから……。
「ハルちゃんって……」
「ああ、ギルドに入っているし、レッド行為を目の前で見てはいるし、やり方も少々過激にはなっているが具体的にどんな悪さをした、というのは掲示板にもないぞ」
唖然とするリルを兄さんは見て笑い声をあげる。
「あいつがからかって面白いと感じるのはリルだけだ」
「ひどくない!?」
そうでもないぞ!
そう言う兄さんの方へと目を向けたリルは――。
「それで、そのおびき出す方法って?」
「すぐには無理だな……だが、必ず二、三日たつまでにはお前の前に顔を見せるさ」
自信満々に言い切る彼を見て――。
「なんか嫌な予感がする」
リルはそう答える。
だが、すぐにその答えは出ないようだ。
仕方がないとリルは思ったのだが……。
「なんか変なことをするつもりじゃないですよね?」
ベールにとって兄さんはいきなり現れた怪しい人にしか見えなかった。
だからこそ、そう突っ込んで聞くのだが……。
「ふむ……君は噂の新人だな?」
兄さんは特に気にすることもなくそう尋ねてきた。
対しベールは――。
「質問に質問で返さないでください!」
と当然のように怒るのだが、それでも兄さんは笑い。
「なに、気にすることはない。大丈夫だリルに危害が及ぶことはないよ。むしろそんな事があったらハルが怒り狂う」
自信満々にそう答えるのだった。




