105話 新しい出会い
「……はぁ」
リルは離れたところで大きなため息をついた。
その理由は勿論先程の女性だ。
「一体何なの……」
確かにペットを欲しがる人は多いだろう。
テイムシステムがあるゲームではペットを連れていることがステータスになっている場合だってある。
だが……。
「ああ! もう!!」
リルは苛立ちを覚えながらもゆっくりと呼吸をし……。
「考えない! 考えない!」
そう言って歩き始めた。
そして、少し歩き続けたところ。
小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
心地よく歌っているようだ。
「綺麗な声……」
リルは辺りを見回すとそこには一人の少女がいた。
ドレスのような衣装に身を包んだ少女はポニーテールを風にさらわれまるでゆっくりと踊っているように見える。
暫く認めていると――。
彼女はゆっくりと手を差し出し……彼女の手に小鳥が降りたつ。
「あの子のペット?」
リルは思わずつぶやいた。
すると彼女ははっとし小鳥を隠す様に手で覆うと――。
「だ、誰ですか!?」
「あ、ごめん……」
彼女はNPCだろうか? と一瞬思ったがすぐに彼女がプレイヤーだと判断した。
単純にアイコンが出なかったからだ。
「君もペット持ってるんだね」
「……え?」
目を丸めた彼女はリルをまじまじと見つめ――。
「あなたも?」
「うん、ちょっと待ってね」
リルは鷹笛を鳴らし、すると鷹は鳴き声と共に羽ばたいてくる。
手に止まらせようとすると手袋が現れそこに鷹は降り立った。
それを見ていた少女は――。
「ってことはあなたも原石を渡したんですね」
「ああ、やっぱりあれ原石がペットの条件なんだね」
「はい、あのNPCは裏設定で動物好きらしいです」
なるほど……。
リルはだから急にペットが渡されたのかと考えたが、さらに首を傾げ……。
「でもなんで原石限定?」
「んー分からないですね……でも、わたくしはこの事で会えたので満足です」
ころころと笑う少女は妙に品があった。
まるでお嬢様のようにも見える彼女を見つめながらリルは微笑むと――。
「そっか……」
自分の腕に泊まる鷹へと目を向ける。
確かにこのゲームで初めで出会ったペットだ。
大事にしたいとは考えていた。
「……でも、さっき変な人に出会って、この子を売ってくれって言われたんです」
「…………」
どこかで聞いたような話を聞き、リルは大きくため息をつく。
鉱石の交換クエストが期間限定なのかは分からなかった。
しかし――。
「私もだよ」
なぜ自分で集めようとしないのか? そもそも、お金があるなら原石を買えばいいのではないか?
そう考えたのだが……。
「手放さないって言ったら、後悔するぞ! って脅されて……」
しゅんとする彼女を見ると装備は決して特別なものではない。
見た目重視ではあるが、きっと特殊効果などはあまりないのだろう。
武器も持っておらず……冒険向きとは到底思えなかった。
「もしかして、生産職?」
このゲームは生産職でも経験値が入る。
勿論、冒険で手に入るわけではなく、様々なアイテムを生産することでレベルが上がるのだ。
「はい、アルケミスト……錬金術師です」
困ったように笑う彼女。
「……後悔するぞって、なんか悪い噂を?」
「……さっきの事なんで分かりません」
リルの質問に不安そうに答える彼女は抱きしめていた小鳥を見つめ――。
「でも、この子とピィちゃんと別れるのは嫌です」
小鳥に異様なほどの執着を見せた彼女は優しく……大事そうに抱きしめるのだった。




