102話 好きという気持ち
クロネコに連れられて、鉱石のクエストのNPCへと向かう二人。
手にいれたオリハルコンの原石であれば特別な報酬がもらえるとの噂があるという事だ。
「それで、この先にそのNPCがいるんだよね?」
リルはクロネコに尋ねると彼女は振り返りつつうなづいた。
「そう、あそこだよ!」
そして指を差した先にあったのは人混みだ。
「凄い人……」
「いらない鉱石が別のアイテムに変えられるからね、人気なんだよ」
装備に関しては二人は特に急ぐこともなかった。
だからこそ、ここまで人気のイベントだとは気がつかなかったのだ。
「だとしても……」
だが、リルはその人ゴミを見ながら苦笑いを浮かべる。
……単純に人が多いのだ。
「あれって順番待ちだよね?」
「勿論」
あの数では交換するのにも時間がかかるだろう。
今日は諦めようと言いたくても明日以降も同じように人が集まるだろうことは予測できた。
「仕方がない、並ぼうか……」
がっくりと項垂れつつもリルはそう口にする。
ベールの強運が味方に付いているとはいえ、あの人数がいきなりいなくなるという事は無いだろう。
「まぁ、サイクルは早いから……」
それが唯一の救いだ。
そう思いつつ、列へと並んだリルたちは大人しく順番が来るまで待つのだった。
待っている中、他のプレイヤーの様子を確認していると、一喜一憂する様子が見て取れた。
どうやら、装備は装備でも見た目が変わる装備が手に入るようだ。
「リルちゃん、あれ可愛いね!」
「ん? ああ肩に猫が乗ってる!」
見れば様々な装備があるようだが、どれも可愛らしく原石でなにがもらえるのだろう? と楽しみにしていると……。
後ろから念仏のような声が聞こえてきた。
「猫……猫……猫!」
それは聞き覚えのある声だ。
そう、間違いなく仲間であるクロネコの声。
「クロネコってもしかして猫好きなの?」
「名前もクロネコだし、そうなんじゃ?」
二人が恐る恐る尋ねると彼女は目を見開き――。
「あったりまえでしょ! あの、普段はそっけなくしてるのに構ってほしい時だけ甘えてくるあの感じ最高じゃないか! VRでは味わえなくなったけどキーボードに乗ってきたりとか邪魔したりとかもう、可愛くてかわいくて……なんだこの可愛い生物は……ああ、猫しかありえないって自問自答するんだよ!? 分かるでしょ? 分かるよね!」
「あ、うん……動物は可愛いよね?」
リルは思わずベールへと尋ねる。
するとベールも気圧されてしまったのだろうが、なんとか頷いてくれた。
しかし――。
「動物が! じゃなくて猫が! 可愛いの! ちゅるるを上げる時なんてもう……もう!」
「あ、うん、ごめん猫が可愛いね……最強だね」
「分かればよろしい」
「でもね、クロネコ……」
リルは周りを見つつ少し遠慮がちに彼女へと伝える。
「オープンで興奮するのはちょっと控えたほうが良いかも?」
「…………っ!?」
ようやく彼女は自分が人前で興奮していることに気がつき、その顔を真っ赤に染め上げていく……。
「もう、リルちゃん……クロネコちゃん顔真赤になっちゃってるよ?」
ベールは少したしなめるようにリルへとそう伝えるが、それもオープンだ。
周りの人間たちは彼女たちの話がしっかりと聞こえており……。
「あの子、確かクロネコ……」
「でも見てみなよ、顔真赤になってるぞ……ちょっとかわいいかも」
「お前ロリコンだったのかよ!?」
などという会話が聞こえてきてしまい。
ロリコンという言葉に反応したクロネコは目を見開き息を大きく吸ったためリルは慌ててその口をふさぎ――。
「私はだ――もご!?」
「リアルの事、ばらしちゃダメだって!?」
何とか間に合った事にほっとしつつも――。
「もしかして今大学生とか言おうとした?」
「ないだろ、クロネコだぞ」
発せられた言葉から簡単に予想されてしまい。
リルはひきつった表情で乾いた笑い声を発するのだった。




