表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肥満が理由で幼馴染にフラれた俺を「理想の男」に育て上げた女友達が焦っている  作者: タラの芽
新章第一 新生「デ部」のスタート
40/41

2話目 庚申妃紗は色んな面で焦っている

「裏口から家に入ってきて!」



 起床した凜菜に言われ、巳造みつくりの案内で卯月家の自宅へとお邪魔した。


 リビングへ通される前に、恐らく手洗いかと思われるドアが開いてそこから出てきた少女と鉢合わせた。



「おす、邪魔するからな」


 その少女へ巳造みつくりが親しげに声をかけ、気負うことなく少女が「うん」と応じる。以前に妹が1人いると聞いたことがあるので凜菜の妹であるのは間違いなさそうだ。



「お姉ちゃんの友達だよね」


「あぁ」


「どうも、知香ちかといいます。いつも姉がお世話になってます」



 そう言って、妹の知香ちゃんはペコリを頭を下げてから階段を上がっていった。


 ほんわかした雰囲気の凜菜とは違い、スーっと通った鼻筋と切れ目な顔立ち、そして会話の受け答えからは気の強そうな印象を受けた。



 妹と入れ違いで階段からドタドタと下りてきた凜菜が「ごめんねぁ寝坊しちゃって」と気の抜けたコーラみたいな覇気のない声を出すから、やっぱり姉妹でも全然雰囲気が違うなと確信した。



 妃紗ひさ純礼すみれは事前に凜菜と何度か顔を合わせているため、弛緩した様子で「いらっしゃーい」とあくびを噛み殺しながら言う。寝起きのまま髪がボサボサなので余計に締まりがない。



「・・・凜菜は随分とフリーダムなのね」妃紗ひさが苦笑交じりに呟く。


「毎度の事だからな」ため息交じりは巳造みつくりだ。


「り、凜菜ちゃんらしい・・・かも」


 純礼すみれの必死のフォローにあーちゃんが「ズボラ」と一言だけ口にし、凜菜が「え?」と首を傾げる昼下がりの午後です。



◇◆◇



 ニャーニャーと鳴く仔猫に一同は心を奪われた。なんと愛らしい生き物なんだろうか。あ、もちろんい一番はあーちゃんだけどね。


 そのあーちゃんは小さい猫をまん丸のお目めでジッと観察していて、その様子を僕は観察していた。今度猫耳のカチューシャをあーちゃんに着けてもらおうかなぁ。



 生後8ヶ月という仔猫は思ったより俊敏に動き、妃紗ひさ純礼すみれは仲睦まじく猫じゃらしで戯れていた。その微笑まし光景は、まさしく平和を象徴する一枚になるだろう。この間の文化祭までの事を思い出し、つい感慨に耽ってしまう。





 ちなみにだけど、あーちゃんは「巳造」「りんちゃん」と2人を呼ぶようになった。


 初めてあーちゃんを見た人はその愛くるしさからみんな蕩けてしまう。凜菜も例外ではなく、「何この可愛い生き物!?」とさっきまでずっとハグをしていたくらいだ。


 ただし、さりげなく巳造みつくりがあーちゃんの頭に触れようと手をのばすと、「ちっ」と舌打ちみたいな音があーちゃんから聞こえ、そして顔をしかめて手を払いのけるのだ。その「ちっ」という音の出どころは不明だ。だってあーちゃんが舌打ちなんてするはずがないもの。



 まだ昼食を食べていないので、予定通り近所にある2人のオススメのラーメン屋で食事を済ませ、それから少し家でゆっくりして帰ることにした。




 持参したキャリーに新たな家族を入れ、純礼すみれは少し向かいの離れた電車の席にあーちゃんと並んで座っている。あーちゃんがキャリーの中を覗き込んで中の仔猫を戯れていた。



 混雑の都合で離れて座ることになった僕と妃紗ひさは、2人の様子を見守っていた。


 まさか純礼すみれがあーちゃんに忘れられていたという勘違いをしているなんて思わなかったけど、誤解もあっさりと解け久しぶりの顔合わせにも関わらずすっかりと仲良しさんになっている。



「ねぇ、酉水すがい


「はいはい」


「さっき純礼すみれから聞いたんだけど・・・・」



 話題を持ち出し妃紗ひさだが、その先を言い淀んだ。



「・・・うん?」


「いい、なんでもない」


「途中で止められるとなんだか不安になるんだけど」


「別にアンタが考えてることじゃないから気にしなくていいの、わかった?」


「うす!」



 妃紗ひさに凄まれると、すっかり調教済みの僕は条件反射で返事をしてしまう身体になってしまった。ヒササマノイフコトハゼッタイ。



 確かに様子からして心配するような事もなさそうだ。僕と妃紗ひさの身体の間で、周囲から隠すようにこっそりと繋いでいる手の温かみが、そう思わせた。



◇◆◇◆◇◆◇◆



 最寄りで下り、一番駅から自宅が近い純礼すみれを見送った後は酉水すがいと2人で並んで歩く。




 さっき、電車内で途中で話すのを止めたのは、純礼すみれの「気になる人」について。


 犬を公園へ散歩させていたら声をかけてきたという野球少年。


 その人物の特徴は私の知る人物と一致し過ぎていた。その人物はきっと酉水すがいもよく知る人物。


 ただ、あまり人の色恋沙汰についてアレコレと喋るのは憚られたし、そもそも()()()は受験生だしあまり振り回さない方が良いわね。


 しかし、純礼すみれにはつくづく驚かされるわね・・・話を聞いているうちにまさかとは思ったけど、「気になっている人物」がまさか私の幼馴染が気になるなんて。



 暫くは知らないふりをして傍観しましょう。


 私だって人のことばかり気にしていられないもの。



 酉水すがいとその・・・恋人同士になった訳だけど、今までの距離が近すぎたためにこれ以上の距離の縮め方がわからないでいた。



 普通に一緒に登下校をしてトレーニングに付き合って・・・日常に代わり映えが一切ないし、酉水すがいの様子にも変化はあまり見られない。



 それはどれでどうなのよ、と悩んでばかり。


 恋人同士なんだからもっとこう・・・街に出てデートをしたりとか色々とすることがあるじゃない。


 でも今更な気がするし、彼女になったからって途端に態度を変えるのも恥ずかしい。


 恋人なった今、私は付き合う前とは違う意味で焦っていた。

少しの間はのほほんとした平和な日常編にしようと思いますがどうでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ