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深い事情があったりする

「それで、どうして全部私の手柄にしたの? あの男の人を倒したのも、研究所を見つけたのも、全部マサトでしょ?」


 黒い笑みのまま聞いてくるミーシェに、真人は視線を逸らしながら口を開いた。


「あー。実はこれには、深い理由があってだな……」


「深い理由? どんな?」


「えっと、それは……」

 

 一度はなんとかはぐらかそうと思っていたが、真人には良い言い訳が思い浮かばなかった。


(こんな状況じゃ、嘘を言っても確実に疑われるだろうな……。アイリさんには言うなって言われてるけど、ミーシェなら口止めしておけば大丈夫……だよな?)


「……マサト?」


「……ミーシェ、今から言うことは他言しないでくれ。下手したら俺の人生に関わるからな」


「へ!? う、うん……わかった……」


 人生に関わるとまで言った真人にミーシェは驚きながらも頷き、それを見た真人は口を開いた。


「実は俺、魔力がないんだ」


「……………………え?」


 何を言ってるんだ。と言いたげな表情になったミーシェは首を傾げた。


「えっと……魔力が極端に少ない人ならたまに居るし、別に人生が狂うってほとじゃないと思うんだけど……」


「違うんだミーシェ。魔力が少ないとかそういう次元の話じゃない。俺の保有する魔力は文字通り"ゼロ"なんだ」


「……………………え?」


「んで、そのせいなのか俺は空気中の魔力を感じとる力に長けてるみたいでさ、さっきの妨害空間(ジャミングフィールド)とか幻術魔法を感じ取れるのはもちろん、空気中の魔力を集めて魔法を使ったり、相手の魔法を消し飛ばしたり出来るんだ」


「……………………え?」


「お前何回その顔やるんだよ」


「いやいやいやいやいや! だって保有してる魔力がゼロの人が居るなんて聞いたこともないし、空気中の魔力を操れるなんてことも聞いたことないもん!」


「声のボリューム下げてくれ……。もしギルドの人達に聞かれたらどうすんだ……」


「あっ……。ごめん」


 ミーシェはようやく落ち着くと、不思議そうな表情になった。


「でも……あれ? どうしてそれが手柄を私に譲ったことに繋がるの?」


「……さっきミーシェが驚いてたように、魔力がゼロの人間なんて異例だから、怪しまれたり差別を受けたりするのはまだ良くて、最悪違法研究者に俺の存在がバレたら……」


「あ……」


 真人が最後まで言わずともミーシェは察したようで、何とも言えない表情を真人に向けた。


「えっと、その……強く生きて?」


「哀れむような表情すんな」


「大丈夫。私は最後までマサトの味方で居るから」


「だからその哀れむような表情やめろ」


「……わかった」


 ようやく理解を示してくれたミーシェに真人が溜め息をついたのも束の間、ミーシェは顔をあげると、


「これで力になれるのかわからないけど、今回のマサトの手柄は私がもらうね!」


「そっちかよ!? いやありがたいんだけどさ!! そして哀れむような表情やめろって言ってるだろ!?」


「だって自分がそんな立場だったら怖いもん」


「善意な分タチが悪いな……」


 言いながら真人は頭を掻いたが、この分ならミーシェは絶対に誰にも言わないだろうと判断し、安堵した。


「んじゃ、そろそろ俺たちも研究所を調査しようぜ。さっきも言ったけど、今の事はギルドの人達はもちろん、他の人にも内密で頼むな」


「わかった。誰にも言わないよ。絶対に」


「よし、じゃあ行くか」


 





 真人が見つけた扉の中は本当に研究所だったようで、過去の研究に使われたであろう大量の書類や、実験道具などが保管されていた。


 そんな中、真人は適当な書類を手にして目を通していた。


「げっ……結構変な研究してんだな……。うわ、この研究もまた酷いな……」


「ねえマサト」


「なんだ?」


 ミーシェは一枚の書類をマサトに渡し、


「この書類。多分人を拐ってたのと関係あるのと思うんだ」


「えっと…………『【実験No:136】人体の合成』……?」


 嫌な予感を感じながらも、真人は書類を読み続けた。


(『魔物と魔物を組み合わせればキメラが生まれ、組み合わせる数が多ければ多いほど強力となる。なら、人間と魔物を組み合わせたり、人間同士を組み合わせたらどうなるのだろうか。楽しみだ。100人ほどの被験体を用意し、実験をすることにしよう』……か)


 真人は書類をミーシェに返し、


「……想像以上にヤバイことしようとしてたみたいだな」


「うん。もしかしたら、既に実験に使われちゃった人達がいるかも……」


「多分だけど、それはないと思うぞ。書類の下に【研究結果】って欄があるだろ? その紙はそこがまだ空白だ」


「あっ……ほんとだ」


「それに、まだ実験の途中だったとしても、他の書類には研究結果のとこに途中経過が書いてあったんだ。中には実験があんまり全然進んでないみたいで1行くらいしか書いてない書類もあった。でも、その紙には何も書かれてない。つーことは……」


「まだ実験は行われてない……ってこと?」


「そういうことなんじゃね? だからミーシェのお兄さんはもちろん。他の人達も大丈夫なはずだ」


「マサト……」


『おーーーい! 皆聞こえるかーーー!? 捕まった人達が居る部屋を見つけたぞーー!! 全員無事みたいだが気を失っていて運ぶのが大変だ!! 手伝ってくれーー!! 地下に降りてすぐの通路を右に曲がってくれればわかるはずだーー!!』


 研究内に響き渡った声を聞いて、真人は笑みを浮かべた。


「よし、俺たちも行くか。ミーシェのお兄さん達を外まで運ばなきゃな」


「うん!」


 二人は書類を置くと、地下に向かって走り出した。

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