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謎の距離感

「……見つからないな」


「そうだね。どこにあるんだろう……」


 二人は男が言っていた研究所を探していたのだが、それらしき建物は特に見当たらなかった。


「『ようこそ私の研究所へ』なんて言うくらいだから、近くに研究所があるのかと思ってたんだが……」


 ミーシェはハッとすると、真人の袖をくいくいっと引っ張り、


「まさかこの森自体が研究所だなんてことは……」


「スケールでかすぎだろ。多分だけど巧妙に隠してあるんじゃないのか?」


「うーん……やっぱりそうだよねぇ……。幻術系の魔法でも使ってるのかなぁ」


 ミーシェはそう言いながら、腕を組んで考えていた。


(……まあ、研究所がどこにあるのかは気になるけどさ、それ以前に……なんか、近くね?)


 真人の記憶だと先程まではもう少し距離を空けて歩いていたはずだっだのだが、今はほぼくっついて歩いているような状態であり、真人は違和感を感じていた。


(ミーシェはあんまり気にしてないみたいだし、もしかして気付いてないのか……? だとしたら簡単なことだ。俺が少し距離を空ければ済むことじゃないか)

 

 真人はさりげなく一歩横に出ると、少しだけミーシェとの距離をとった。


(うんうん。やっぱりこれぐらいの距離感が普通ーー)


 安心したのも束の間、ミーシェはスッと横へ移動し、真人との距離を詰めてしまった。


(……んん? おかしいな……)


 疑問を感じた真人がもう一度距離をとると、ミーシェは何食わぬ顔で再び距離を詰めた。


「……なあミーシェ」


「どうしたの?」


「なんかこう……近くないか?」


 真人の言葉にミーシェはきょとんとすると、


「そう? 気のせいじゃないかな?」


「いや、でも……」


「気のせいじゃないかな?」


「……さいですか」


 絶対に気のせいではないと思った真人であったが、これ以上突っ込んでも何一つ変わらないだろうと判断し、結局そのままの状態で捜索をすることにした。


 その後、しばらく探索をしていると絶壁の目の前に辿り着き、真人はそこで足を止めた。


「マサト? どうしたの?」


「あー、いや。何て言うかな……。ここだけ空気が違うように感じるというか……」


「そう? あんまりわからないけど……」


「もしかしたら何か手を加えられてるのかもしれない。試してみるか」


 周囲の魔力を敏感に感じ取れる真人だからこそ気付けた違和感だったのだろう。真人は絶壁に近付くと、妨害空間(ジャミングフィールド)を吹き飛ばしたのと同じ要領で、違和感のある空気だけを吹き飛ばした。


 すると目の前の絶壁に先程までは無かった扉が現れ、それを見たミーシェは目を丸くした。


「お。なんか出てきたな」


「……」


「扉がそれっぽいし、研究所って絶対ココだろ?」


「……ねぇマサト、今何を……?」


「何って言われてもな……。幻術魔法をぶっ飛ばしたとしか……」


「……ごめん、言ってる意味がわからない」


「すまん、俺もこれ以上の言い方が見つからない」


「えぇ……」


 納得していない様子のミーシェにどう説明したものかと真人が悩んでいると、二人の後方から人の声が聞こえてきた。


『ミーシェちゃん! 聞こえてたら返事をしてくれー!』


『おい! 誰か倒れてるぞ!』


『しかも魔法で縛られてる! 何があるかわからない! 周囲の警戒を怠るなよ!』


「今の声って……」


「多分ギルドの人達だと思う。もしかしたら二人で飛び出した私たちの心配をして、追ってきてくれたのかも」


「よし、それならさっきのとこまで戻ってギルドの人達と合流しよう。人数が多いに越したことはないし、俺たちの無事も伝えないとな」


「そうだね!」


 二人が来た道を引き返して男が気絶しているところまで戻ると、二人の姿を見つけたギルドの人達は安堵の表情を浮かべた。


「ミーシェちゃん! 無事だったか! 」


「すみません皆さん! ご心配をおかけしました!」


「気にすんな! それと……マサトだっけか? お前も無事みたいだし、よかったよかった!」


「すみません。ありがとうございます」


「構わねぇさ。ところで、そこで縛られてる男について何か知ってるか? 気絶してるみたいなんだが……」


「それのことならーー」


 真人は、この男が危険な研究をしているらしいということや、研究所を見つけたということ、それと男を倒したことを全てミーシェの手柄ということで説明をした。


 説明中、ミーシェは終始何か言いたげな顔をしていたが、後で真人にこのことについて追及することを決意し、口を開くことはなかった。


「……というわけで、向こうにミーシェが見つけた研究所の入り口らしき扉があるので、調査をしておきたいと思っているのですが……」


「なるほどな! そういうことなら俺たちも協力するぜ!」


「捕まった人達を助けないとな!!」


「よし! そうと決まれば行くぞ!」


 気合い十分なギルドの人達はすぐに扉の方へ移動を始め、出遅れた真人とミーシェの二人だけがポツンと残される形となった。


「ふぅ……。どうにか誤魔化せた……」


 一仕事終えたと言った感じで真人が安堵していると、背後からゆっくり近づいてきたミーシェが、真人の肩にポンと手を置いた。


「説明……してくれるよね?」


「…………はい」


 黒い笑みを浮かべたミーシェに、真人は為すすべなく頷いた。

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