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講習終了後

「うげぇ……疲れた……」


 休憩が終わったあと、真人と参加者達は教官に指事された訓練メニューを一通りこなした。


 が、その訓練はハードな物が多く、特に最後のメニューは真人が息絶え絶えになるほどのものだった。


(なんだよ最後の『ドキッ! 魔物だらけの逃走マラソン! ポロリもあるよ(命を落とす的な意味で)』って……。死ぬかと思ったわ……)


 もし勝てない魔物に遭遇したらという想定で、全力で魔物から逃げるという訓練だったのだが、命に危険があるため本物の魔物が訓練に投入されたわけではなく、実際に追いかけてきたのは服屋の店主を筆頭としたオカマ集団であった。


『『『『『『遅い人は私達が捕まえちゃうわよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』』』』』』


『『『『『『『『ギャアァァァァァァァァァァァ!!!』』』』』』』』


 真人はそのときの地獄絵図を思い出し、もし捕まっていたらどうなっていたかと想像してブルリと体を震わせた。


「本当に逃げきれて良かった……」


 捕まって犠牲になった2~3人の参加者に黙祷を捧げながらも、真人はギルドの一階へと戻ってきた。


(喉乾いたし、どっかで水分を補給したいな……。確かあっちで料理が食えるってさっき教えてもらったし、そこでなら腹ごなしついでに水分も取れそうだな)


 一直線に目的地へ向かおうとした真人が受付の前を通ったとき、さきほどの受付嬢から声をかけられた。

 

「講習、終わったんですね」


「え? あぁ、はい」


「どうでしたか? 特に最後の訓練についての感想を聞きたいのですが」


 少し口元をにやけさせながら聞いてきた受付嬢に、真人は目をそらして遠い目をすると。


「……地獄以外の何物でもありませんでした」


「クスッ……やはりそうでしたか」


 口元を手で隠しながら小さく笑った受付嬢を見て、真人はため息をついた。


「知ってたなら教えて欲しかったんですが……。 あんなメニューがあるって知ったら俺は――」


「――参加しなかった……ですよね? ですが、私はマサトさんには是非参加してほしかったんです。魔力もなくて何も知らないマサトさんなんて講習を受けなければ、見るからに毒入りのキノコを見て『このキノコ美味そう!』とか言いながら毒キノコを食べて惨めに死んでしまいそうでしたので」


「罵倒してるのか心配してるのかどっちなんですか? ……でも、ありがとうございます」


「ふふっ、わかってくれれば良いです」


 そう言って微笑んだ受付嬢を見て、真人は目をまるくした。


「……どうかしましたか?」


「あ、いや……。やっぱりアイリさんは美人だなと……」


「何故私の名前を知っているんです? まさか私のストーカーなんですか?」


「わざとらしくドン引きしないでくださいよ……。他の人からアイリさんの事を聞いただけです」


「他の人……から?」


 首を傾げてそう言ったアイリに、真人は答えた。


「はい。さっき休憩時間にアイリさんの事が話題に上がりまして、皆が美人だって言ってましたよ」


「さっきから褒めちぎってなんのつもりですか? 口説いているんですか?」


「さっきあったことを説明しただけですが!?」


「ならそうと早く言ってください。もう少しで貴方を危険人物として認識するところでした」


「出会って初日の人に対しての当たりが強すぎやしませんかね!?」


「大丈夫です、私が厳しいのは社会を知らないマサトさんに対してだけです。喜んでください」


「どこに喜ぶ要素があるんですか!?」


「あっ、そういえばまだ仕事が残っていたのを思い出しました。今から仕事を始めるのでもう話しかけないでくださいね」


「スルーされた上に一方的に話を切られた!?」


 真人は驚愕したが、アイリは真人を無視して本当に書類の仕事を始めてしまった。


「……色々とありがとうございました。これからもよろしくお願いします」


 アイリに一言告げて真人が去っていくと、アイリは口元を綻ばせて真人の背中を見た。


「……これから頑張ってね、マサトくん・・


 アイリは少し前まで罵倒していたとは思えないような優しい声で、そう言ったのだった。

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