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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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どうなる、朱雀

前もって寅彦と調べた所、半魚人の洞窟の入り口は、この海側の一つだけだ。

砂浜に面している所は無く、あとは海に面している。


「佐々木、教えた通りにやれば大丈夫だから。」


「はい。」


悟は龍介に訓練を受けた通り、自動小銃が濡れない様に包み、身体にピタリとくっ付けて背負っている。

真行寺は鸞と共に、砂浜にバリケードを築きつつ、龍介をジト目の横目で見ている。


「グランパ、大丈夫ですから…。」


「グランパも行った方がいいんじゃ…。」


「たまには任せて下さい。朱雀。」


朱雀に声を掛けようとしたが、朱雀は既に動いていた。

洞窟から出て来るのを狙い撃ち出来そうなポイントを、言われる前から探し始めている。


ーやるじゃん。結局DNAには柏木さんの血が流れてんのかもな…。


「じゃあ、瑠璃は朱雀の側に居て。そこが1番安全に作業出来る。」


「了解しました。」





全ての準備が終わり、龍介達3人は海に入り、洞窟を目指した。


「潮の流れが複雑だから、気をつけろ。」


龍介に言われ、慎重に泳ぎ、無事洞窟の入り口前に到着。

龍介が小型カメラを投げ入れ、寅彦がカメラ付きの小さなラジコン飛行機を中に飛ばした。


「げっ!」


瑠璃と寅彦は報告前に思わず声漏らした。

寅彦もラジコン飛行機のカメラは、確認の為見ている。


「なんだ。多い?」


「凄い数よ。100近いんじゃないかしら。今数えます…。うん。100です。」


「強奪される魚の数が半端じゃないわけか…。

了解。覚悟して行こう。

佐々木、無理すんな。逃げるのはそのままにしとけ。」


「いや、でも…。」


「あの3人、射撃の名手。」


「3人て、朱雀も頭数に入れて大丈夫なのか…。」


「あの顔つきなら大丈夫だろう。じゃ、作戦開始。」





「マスク装着。銃の準備。ーいいな。入れるぞ。」


3人が発煙筒を投げ入れると、キーとか、ギャーともつかない、耳障りな鳴き声が聞こえ、半魚人が大挙して出てきた所を、3人で撃ちまくるが、今度は四方八方から飛びついて来ようと襲い掛かって来るのも居て、龍介の言う通り、そっちを優先して、ひたすら撃つのだが…。


「龍!頭撃ってもダメだ!」


「目だ!目え狙え!」


この乱戦の中、正確に目を狙うというのは、初心者の悟には結構難しかったが、龍介にフォローして貰いながら、なんとか頑張っている。


一方、真行寺達は大忙しかと思いきや、はっきり言って、暇だった。


高台に陣取った朱雀が、冷静沈着に、龍介の指示通り、的確に、出て来る半魚人の目を、海の波などものともせずに撃ち抜いていたからである。

瑠璃は呆気にとられて、隣で腹這いになって、狙撃銃を百発百中で撃ち続ける朱雀の横顔を見ていた。


ー凄い…。この的確さは、龍よりも凄いのかもしれない…。ていうか、今まで見た人の中で、1番の腕かも…。


しかも、その真剣なハンターの様な鋭い目つきは、いつもの朱雀とは丸で違う。


ーかっこいいかもしれない…。女の子口説くなら、狙撃を見せてからにした方が上手く行くわね…。


そして、我に帰る。


ーああ!お仕事しなきゃ!


「龍、中にはあと20人居ます。固まって動かないわ。」


「武器とかは持ってねえよな。」


「ちょっと待ってね。発煙筒の煙がまだ残ってて…。やだ…。斧みたいなのとか、マグロ切る包丁みたいなの持って、待ち構えてる感じよ。」


半魚人達は身のこなしは猿の様だ。

高い所からいきなり遅いかかって来たりするし、岩場を飛び跳ねて逃げる。

その動き回る奴らの目を撃ち抜かねばならないだけでも、龍介や寅彦と雖も、かなり大変だった。

この上、武器を持ってるとなったら、少々手強い。


「コレ、行くか。瑠璃、ここの地形はどう?」


龍介はランチャーを出した。


「上に住宅が3軒あるわ。この洞窟が崩れちゃったら、地盤が緩んで、土砂崩れ起こすかも。」


「うーん、じゃ、ダメか。グランパ、そっちはどうです?」


「確認した100匹の内、70匹、全部死体で回収だ。朱雀君のお手柄だよ。」


「凄えな。朱雀。」


龍介が褒めると、少しだけニヤリとしたが、直ぐに言った。


「組長、僕もそっち行きます。」


間髪を容れずに、真行寺も言う。


「グランパも行く!」


「グ…グランパはいいからそこに居て下さい…。うーん…。じゃあ、朱雀だけ来て。」


「組長、私はあ〜?」


退屈しきった鸞の声が聞こえた。


「取り逃がしたのをお願いします。」


「ーはい…。」


渋々だが返事が聞こえると、寅彦が苦悶の表情になっている。

程なく、朱雀が泳いで来た。


「じゃ、朱雀は後方からな。気をつけて行こう。逃げたのは、グランパと鸞ちゃんに任せる。深追いは危険という判断で。いい?」


「了解。」


入ると、直ぐに瑠璃から連絡が入った。


「固まってたのが動き出したわ。みんな高い壁にくっ付いて、上から襲う気よ。」


「了解。佐々木、ライト点灯。」


「了解。」


悟が大きめのライトを床に置き、スイッチを足で踏むと、暗い洞窟内は真昼の様な明るさになった。

半魚人が浮かび上がったが、皆、目が眩んでいる様だ。

この隙に先制攻撃を仕掛けるのが、龍介の作戦その1である。


「撃て。」


一斉に撃ち出し、有利かと思われたその時、最後の2匹だか、2人だかが、悟目掛けて、斧を振り上げ、飛び降りて来た。

悟は他の半魚人を撃っていて、出遅れ、寅彦も他の半魚人を撃っていて、それどころではない。

気づいた龍介が一体を撃ったが、目は狙えず、殺せない。

深手を負った半魚人はより凶暴化し、龍介と悟に斧を振り下ろそうとしたその時、2匹が立て続けにバタリと倒れた。


朱雀が立て続けに狙撃していた。

きっちり、目に一発づつ。


龍介が嬉しそうに言った。


「朱雀!有難う!」


朱雀ははにかみながら答えた。


「ー役に立てたかな?」


「勿論。それどころか、居ねえと困る奴だ。」


朱雀は、今日初めて心から嬉しそうに笑った。





「私達の仕事が取られちゃうわ。本と、本気出すと凄いのね、朱雀君て。」


鸞が少し怨みがましそうな笑顔で褒めると、朱雀は照れくさそうに笑っている。


龍介と悟と真行寺は浜に上げた、全て半魚人の死体を観察していた。


「ねえ、加納…。こいつら性別が無いよね…。」


「やっぱそう?どういう事なんだろう。どうやってこんな増えたんだろうな。」


真行寺が深刻な顔で言った。


「竜朗も最近Xファイルが増えていると言ってたろう?それはこれなんだ。変な未知の生物に、単為生殖。」


「単為生殖?1人で子供作って産むって事?」


「そういう事。」


「益々気味が悪いな…。

地球が駄目になってるって、生物はもう分かってるから、なんとか子孫をって事なのか…。」


「そういう事だと思う。

しかし、佐々木君、君は、この短い期間によくここまで頑張ったね。

龍介が殆どフォローする事も無く、Xファイル史上、1番危険な任務を遂行した。

朱雀君と合わせて、本当に素晴らしい。」


「有難うございます。でも、あの時、僕目掛けて来たのは、多分この中で、僕が1番弱いってばれたからだと思うので、もっと頑張ります。」


「うん。でも、焦りは禁物だ。」


「はい。」


悟はちらっと龍介を見た。


「あー、俺が褒めてもいいのか迷ったんだが、褒めてもいいのか。」


「なんで迷うんだよ。」


「だってお前、俺の事嫌いじゃん。」


「まあ、あんま好きじゃないね。」


「好きじゃねえ奴に褒められたって、上からみてえに思うかなとさ。」


「いや、そんな事ないよ。

加納の事は昔みたいに嫌いじゃなくなった。

いい奴だとちゃんと思う様になった。

でも、親友にはなれないだろうなと、まあそんな所だし、こういう事に関しては、尊敬してるし、認めてる。」


「じゃあ、言う。

凄え上達っぷりに正直驚いた。素晴らしい。

情報官兼現場も兼ねられるというのが、寅の他にもう1人とは、大変心強い。

今後も期待してる。宜しく頼む。」


「了解、組長。」


そこに、寅次郎達が半魚人を引き取りにやって来た。


「お疲れ様ー。うわあ、本当凄い数だったね。これは研究のしがいがありそうだ。じゃ、後は引き継ぎます。」


新生メンバーの初仕事は、大成功で幕を閉じた。












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