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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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未来へ

「やっぱり唐沢は来んのか。」


集合時間のお昼過ぎに、1人で現れた龍介を見て、亀一が言うと、龍介は頷いただけで、多くを語らない。

亀一は、そんな龍介の顔を覗き込んで、龍介の頭を撫でた。


「なんでお前は、そんな憂鬱そうな顔してんだよ。佐々木は余計な事なんかやらかさねえと思うがな。」


「そらそうだろう。あれだけの目に遭って、いい年してまたやったら、真性のバカだ。俺がこの手で全殺しにしてやる。」


龍介の物騒発言に内心震え上がりつつも、悟は平静を装って聞いた。


「唐沢さんはなんで来ないの?あんたが反対だから?」


「いや。瑠璃は自分の頭で考えて、行きたくないと言ったので、無理する事は無いと言っただけ。」


実の所、瑠璃は龍介が無理して行くなら、一緒に行くと言ったのだが、龍介がそれを止めたのだった。

もしも、龍介と瑠璃の予想通り、未来がとんでも無いものだったら、瑠璃にまで要らないショックは受けさせたくなかったのだ。


ともあれ、行く段になったが、龍介は重そうな布製の肩掛け鞄を下ろさない。


「龍。それなんだ?」


「きいっちゃん、装備持ち込みはやっぱ駄目か?」


亀一は、龍介の鞄の様子を見て、驚いた顔になった。


「おい。銃まで持ってんのか?それはいくらなんでもやばいだろ。」


「やっぱ駄目だよな。」


「駄目だろう。万が一あっちの人間傷つけでもしたら、お前、戻って来られねえぞ。」


「うん…。」


「龍、そこまで警戒すんなよ。お前の言う通り、ヤバそうだったら、直ぐ戻るよ。」


「うん…。」


「龍?」


「いや、ごめん。そうだよな。申し訳ない。」


龍介は、丸腰では、万が一の時、誰の事も守れないのではないかと、不安のあまり、銃を持って来てしまっていた。

それ位、今から先の未来は、龍介にとって、嫌な物しか思い描けなかったのだ。

竜朗達は、奮闘している。

龍太郎を陥れる作戦も、今回はどうにか防げた。

だが、現時点では、通称Xという謎の男が率いる、安藤の企みを現実化する勢力の方が一歩リードしてる感が強い。

このままジワジワと裏から魔の手を広げられたら…。

そう考えてしまうと、いい未来など想像出来なかった。


ーでも、これは飽くまでも俺の想像でしかない。考え過ぎは、あまりいい結果を生み出さないのも、事実だ。


龍介は、銃だけ出し、シートが増えた龍太郎が作ったタイムマシンに乗り込んだ。


「行き先設定。一応場所は分かんねえから、ここの林。年月日は?佐々木。」


「え?僕が決めていいの?」


「佐々木君が決めるべきでしょう。佐々木へのお詫びなんですもの。」


鸞がにこやかに言った。

どうも鸞は亀一と悟に並んで、楽しみにしているらしい。

寅彦はというと、龍介が浮かない顔をしている事から、考え出し、段々気が乗らなくなってきたようだ。

でも、鸞が行くので、半ば護衛で仕方なくになってしまっている様だ。


「じゃ、10年後のこの日でお願いします。」


「了解。セッティング完了。出発します。」





気絶する事もなく、無事に到着したが、そこは林ではなかった。

コンクリートの壁のだだっ広い空間に、戦車や銃器が置いてある。

何かの基地の中にしか見えない。


「ヤバイとこ着いちまったな。直ぐ戻ろう。」


加納家の前の林が軍事基地になっているなんて、ただ事ではない。

流石の亀一も、しのごの言わず、龍介の言う通り、元に戻るセッティングを始めたが、いきなり自動ドアの分厚い扉が開き、狙撃銃を持った5人が銃を構えた状態で走ってきてしまった。


「ああもう!両手挙げとけ!」


龍介が半ばヤケの様に言い、全員手を挙げると、一際背の高い、目の美しさが印象的な、俳優とかよりもかっこいい男性が、構えた銃を下ろし、龍介達を見て、笑いだした。


「なんだ、俺かよ。」


思いっきり龍介の声でそう言うと、襟元に着いた無線に言った。


「夏目さん。申し訳ありません。俺でした。……。はい。例の。……。了解。」


亀一がまじまじとその男性を見て叫んだ。


「龍!?こんなかっこいい、いい男になっちまうのか?!ズルくねえか!?」


「きいっちゃん、安心しろ。あんたもいい男になってるよ。

さてと。大体予想は着くと思うが、お前らの今の状態から行ったら、10年後はこういう感じになっちまってる。見る勇気はあるか。」


全員が答えに窮していると、17歳の龍介が逆に聞いた。


「今の報告の口ぶりだと、あんたの過去の俺は、ここに来てるんだよな。それでどうしたんだ。見たのか。見なかったのか。」


「流石俺。いい質問だな。過去の俺は、見ないで帰った。鸞ちゃんが見たくないって泣き出して、俺も見たくないと逃げた。」


「見なかったのが原因でこうなってんのか?」


「ーだと俺は思ってる。勿論俺1人の力じゃ、どうにもならなかったのかもしれないが、あの時見て、分かっていたら、未然に防げる事はいくらでもあったんじゃないかとね。」


「じゃあ俺は見る。」


龍介が言うと、亀一も頷いた。


「俺も見る。佐々木、どうする?」


「言い出しっぺだもん。見るよ。」


寅彦は鸞を見た。

鸞次第で決める様だ。


「見る。私も。」


大人の龍介は、優しい笑顔で鸞に言った。


「無理しなくていいんだぜ?誰か一緒に居させるし、寅も残って構わない。」


「いいえ。行きます。なんか、龍介君が言った通り、凄く怖い世の中になっているみたいだけど、私が泣いたせいで、こんな事になってるなんて、自分が自分を許せません。

ちゃんと泣かないで見ます。こうならない様にする為に。」


だが、17歳の龍介も言った。


「それは鸞ちゃんに便乗して、その時の俺が現実から逃げたからだろ?」


すると亀一も言った。


「いや。龍だけじゃねえ。俺が食い下がらなかったって事は、俺も逃げたんだ。」


そして悟も。


「そうだよ。鸞ちゃんだけでも、加納だけでも無い。みんな逃げたんだ。僕もしっかり見たい。」


すると、大人の龍介は悟を労わる様な、心配そうな目で見つめた。


「佐々木は特にショックだと思うが、大丈夫か。」


「ー大丈夫です…。僕、多分、死んでるんでしょ?家族もみんな…。」


全員がハッとなって、悟を見たが、大人の龍介は、深刻な顔で頷いた。


「そうだ。日本に地上の世界はなくなってしまった。

つまり、一般の人達は全員死んでしまい、たまたま蔵に居た人間だけが生き残ったんだ。

蔵と繋げたこの地下で生活し、防衛しながら生き残った人間を宇宙に逃げさせるか、地球を回復させるか、研究しながら模索中だ。

取り敢えず、ここを案内しながら説明しよう。」

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