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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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変な機械

龍介は、横浜駅に着いた途端、一目散に、何かを目指して駆け出した。


「龍?」


訳が分からず聞く亀一に、龍介は走りながら背中で答えた。


「駄目かと思ったが、父さんと連絡がついた。このビルの屋上に来る。」


「来る!?来るってまさか…!」


屋上に着いた亀一は、まさかが本当になっている事を知った。


屋上には凄まじい風圧と、以前見た時よりも、更に肉眼でも確認し辛くなっているステルス戦闘機が到着した所だった。


「早くお乗り。五分で着くよん。」


矢張り、龍太郎が操縦し、操縦席から顔を覗かせている。


3人が乗り込み、マスクを着けると、凄まじいGの中、龍太郎がいつもの調子でのほほんと言った。


「でも龍。カラスはどうすんの?流石にこの耳でも、カラスを一羽づつは至難の技よ?」


「み…ミニマムミサイルで撃たなくていいよ…。カラスの方はなんとかするから…。」


「そうなの?大丈夫?」


「うん。きいっちゃん、着いたら、カラスの観察に移れ。なんで大挙して鸞ちゃん達を襲おうとしだしたのか…。」


「了…解…。」


亀一はこれがやっとなのに、このGの中、喋れる龍介は、やっぱりハイクオリティ。

寅彦に至っては、気絶しない様にする為なのか、不安からなのか、何故か亀一の手を痛い程握って来ているが、文句を言いたくても、亀一もろくすっぽ喋れないので、痛いがそのままにしているしかない。

そんな訳で、2人には、永遠の様に長い5分だったが、現場のアパートの近くにあるビルの屋上に無事着いた。


「父さん忙しいのに、ありがとう!」


忙しなく戦闘機から降りながら龍介が言うと、龍太郎は龍介を止め、銃を3丁持たせた。


「一応持ってきな。カラスが本気で攻撃してきたら、結構ヤバいよ。」


「うん。有難う。」


足がふらついている亀一と寅彦はいきなりダッシュする龍介について行こうとすると、素っ転びそうだ。

そして現場に到着。

龍介は早速瑠璃に電話して、詳しい状況を聞いた。


「瑠璃?大丈夫か?怪我は無い?」


「ううう!龍ううう!」


いきなりの涙声に、慌てる龍介。


「ーどしたああ!」


「ご、ごめんなさい。ここに至るまでにも、ちょっと色々苦しい事が…。

それは置いといて、犯人が警察に連行されて、犯人の部屋見たら、なんだか変な装置があったので、持って行こうとしたら、無くなってた玄関からカラスが3羽飛び込んで来て、私達を襲おうとしたのね。」


無くなってた玄関…。

一緒にいる人物から、その謎は大体想像がつくが、あまり考えたくないので、置いておく事にした。


「うん。それで?」


「鸞ちゃんのお爺様が、カラスを素手で叩き落としてくれて、カラス死んじゃったので、無事なんだけど…。」


「……。」


カラスを素手で叩き落とす老人…。

やっぱり鸞の祖父は、人間では無いらしい。

龍介はかぶりを振り、気を取り直した。


「その後、中に居たお巡りさんと一緒に、玄関のドアを元に戻したので、カラスの侵入は防げたんだけど、玄関や窓の前で睨み効かせて待ち構えてるから、出られないって感じなの。

外のお巡りさんが、追い払おうとしたら、お巡りさんも襲われちゃって、お巡りさん達も、距離とってる感じ。」


「成る程な。分かった。とにかく、アクション起こさず、じっとしてる事。いいね?」


「はい。」


「因みに中に居るのは、瑠璃、鸞ちゃん、鸞ちゃんのお爺さん、警察官が2人位?」


「そう。それに、柊木さん。」


「柊木?なんでそんな静かなんだ。」


「ーら…鸞ちゃんが…。」


龍介は皆まで聞かずとも分かった気がした。


「ーお…落としたんだな…。」


「う…うん…。」


「それで、変な装置ってのはなんだろうな。一応写メってくれる?きいっちゃんに見せてみる。」


「了解。」


「必ず助け出すから、そこで動かずに待っててくれ。いいね?」


「はい。」


ハートマーク飛び散る『はい』に苦笑しながら電話を切ると、早速カラスの様子を単眼鏡で観察していた亀一に話しかける。


「今、瑠璃に変な装置とやらの写メは頼んだけど、そっちはどう?」


「ー何かに操られてる感じだな…。

全てのカラスが、あのアパートの一室を見てる。

リボン着けたカラスが命令してんのかとも思ったが、それにしちゃあ、統率が取れすぎてる。

その装置とやらのせいかもしれない。」


「そっか…。装置壊す?」


「装置のせいならな。でも、カラスを操る装置なんて聞いた事ねえけど…。出来てんなら、カラス被害で苦しむ自治体に売りつけて、一儲け出来るのに。」


「寅、犯人どう?話聞ける感じ?」


寅彦は、龍介に指示されるまでもなく、犯人の動向を警察無線や電話を傍受などをして、調べていた。


「顎骨が粉砕骨折だと。話は出来ねえだろうな…。

だが、何故かご機嫌は頗るいいらしい。

凄え痛いくせに、へらへら笑って、治療出来ないだろうって、医者に怒られてるってさ。」


「カラスを操って、何かを企んでると見た方が良さそうだな…。」


龍介のiPhoneに、瑠璃が撮った、変な機械の写真が送られて来た。

早速亀一に見せる。


「んんん…。なんだこれは…。」


その装置は、かなりの大きさがある様だ。

畳半畳位の大きさで、机のパソコンと繋がっているらしい。

赤ランプが何個か点いており、作動している様だが、拡声器の様な物は付いているが、制御系の物は見当たらない。

亀一は瑠璃に電話した。


「唐沢、パソコンと繋がってるようだが、見たか?」


「今見てるんだけど、凄いプログラミングがしてあるわ。こんなアルゴリズムとかは見た事ない。正直、解読はちょっとお手上げ状態。」


「それ、寅の方に送れるか?」


「やってみるわ。5分ちょうだい。」


「おう。宜しく。」


電話が終わると、龍介が言った。


「きいっちゃん、装置とか、そのプログラミングとかぶっ壊したらどうなんだ?ダメなのか、それは。」


「危険な賭けだな。それでカラスの洗脳が解ける可能性も無きにしも非ずだが、逆に、洗脳が2度と解けなくなる可能性もある。ぶっ壊しちまったら、解読も出来ねえしな。」


「そっか…。」


龍介達は念の為、アパートからは距離を取り、アパート周辺が見える寺の境内に居る。

龍介が珍しく、極端な作戦に走ろうとしたので、どうしたのかと見ると、カラスが、待機している警察官達を攻撃し始めていた。


「先生の所は出てくれねえのか?」


「一応爺ちゃんには伝えてあるが、既にマスコミが嗅ぎつけてるから出るに出られない。

機動隊の出動も、カラス如きじゃ厳しい。

グランパと俺たちでやるしかない。」


そして真行寺が到着し、龍介が状況を話している中、亀一は、プログラミングを見始めた。


「龍!」


「ん?なんか分かった?」


亀一の顔が青ざめていた。

嫌な予感が龍介の胸に黒い雲の様に広がった。












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