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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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危険な理由

帰宅した龍介は心配し過ぎて無言になってしまった真行寺に、強姦される様に制服を脱がされ、パジャマもどきに着替えさせられると、押し倒される様に寝かされ、葉っぱをベタンベタンと乱暴に貼り付けられた。


「全くもお!何してるんだあ!恭彦やしずかちゃんみたいに、死にかけたらどおすんだあ!」


「ご、ごめんなさい…。」


「んじゃ、寅ときいっちゃんも居る事だし、俺の知ってる事は話しておくから、龍介が作戦、指揮。いいな?」


「はい。」


「3年前、きいっちゃんが調べた通り、足立の研究室で、重傷者を出す事件が起きた。

一応、Xファイルとして、俺も調べたが、その時の段階では、足立の研究は、非常に不安定で未完成。

その上、学生に了解も得ないまま、騙し討ちの様に実験した足立も、常軌を逸した倫理観の無い男だったので、その旨、竜朗に報告した。

竜朗は、龍太郎君が否定的なのもあったし、他の学者の反対にもあったので、そんな兵器は作らないという事で、足立が学者としては生きていけない様、裏から手を回し、実質、奴を学界から葬った。

その時、それを兵器化して、アメリカに売りつけたらどうかと言い張った男が居た。

攻撃性が高まるなら、自軍の兵士にも良いんじゃないか。

日本にとっても、要らない国民も、これで自然淘汰されるのではとか言った馬鹿が居た。」


「ー誰、その馬鹿…。」


「もう政界からは引退して、一日中よだれ垂らして日向ぼっこしてる老人になってる。

どうしてそうなったかは、ご想像にお任せするが、他にも政治家として偏り過ぎて、かなりマズイ男だったんでね。

それを機に、完全にご退場願った。

ただ、その男、安藤とは近い。」


「やっぱり、安藤首相が裏で糸引いてんの?」


「それは分からんな。竜朗達も掴めてないだろう。

良いところ、捕まえられても、官房長官の浅水の尻尾位だろうな。

安藤は逃げかくれの上手い男でね。

まあ、側近というか、腕のいい、代々安藤家に仕えてるフィクサーがついてるからな。

そう簡単には、尻尾は捕まえられないだろう。」


亀一が怒った顔のまま聞いた。


「その、要らない国民てなんですか。」


「政権にとって、都合の悪い国民だ。正論を言い、カリスマ性なんかあれば、なおいいね。」


「ー爺ちゃん…?」


「爺ちゃん本人でなくても、竜朗側の公安や内調、図書館で暴動なんか起きたりしてみろ。

簡単に首相の一声で、図書館も何もかも潰せる。

公安や内調は自分の息のかかった人間を上に据えればいいだけの話だからな。

防衛相に前に出させて、竜朗のやってた事やらせれば、自分の思い通りに事が運ぶ。」


「安藤は限りなく黒に近い…。」


「だから危険なんだ。安藤が関わってる証拠を掴んだ途端、奴のフィクサーが出て来て、消しに来る。証拠も人もな。」


龍介が亀一を心配そうに見ると、亀一は怒った顔で、龍介を睨んだ。

それを見た真行寺は何故か笑った。


「それは置いといて、シンプルに考えたらどうだ、龍介。」


「ーシンプルに?」


「龍介達の初心はなんだ?」


「中学生なんてまだ子供をターゲットにした事に対する怒りと、学校は俺たちの手で守るという…。」


「それだ。2度と英をターゲットにしようなんて思わせねえ為だろう?」


「あ…。」


龍介は全て分かった様子で、ニヤリと笑った。


「作戦立てよう。グランパも聞いてくれる?」


「勿論。」




翌朝未明、まだ暗い内に出ようとした龍介達の後ろに、龍太郎が立った。


「龍。」


「父さん…。」


「今回は邪魔しない様に、大人しくしてる。でも、これ持ってけ。」


龍太郎は特殊部隊員が身に付ける様な、ヘルメットと防弾ベストを4組出した。


「これは…?」


「足立が作った電流を完全にシャットダウンする。ちょっと重いけど、脱ぐなよ?」


「もうそんなの作ったの?急いだんじゃないのか…?」


龍太郎は笑うだけで、黙ったまま龍介にヘルメットを被せた。


「ね?おでこの葉っぱも見えないし。」


「分かった…。無理させてごめん。有難う。」


「英は俺の母校でもある。守ってくれ。生徒会長。」


「はい。」


「ーあいつらは、素性がこっち側の子息だからっていうだけで、英の子達を実験台にしたんだ。

足立はそういう男だ。許してやんなくていい。」


「ーうん。」


去り際、真行寺は立ち止まり、ゆっくり振り返って、龍太郎をじっと見つめた。


「ー本当に大人しくしていてくれるんだろうね…。」


「えーと…。」


「えーとって!?」


「うーんと…。」


「うーんとなんだ!?」


「はははは!行ってらっしゃい。気をつけて~。」


気をつけて~と言いながら、奥へ走って行ってしまった。

頗る怪しいが龍介は笑っている。


「まあ、父さんがこの件を把握している以上、その場合の対応も考えてはあるから。行きましょう、グランパ。」


「ああ…。」














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