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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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恐怖のお買い物、再び

寅彦と真行寺は、線路脇では危ないので、真行寺の車に場所を移し、幼い子に言葉を教える様に、パソコンから画像を引っ張り出しながら、女性宇宙人に言葉を教えていた。

女性は、1人で地球に来ただけあって、頭が良いらしく、直ぐに覚えて行く。

真行寺が褒める度に、嬉しそうに頬を赤らめているのが、気になる寅彦。


「そうだ、君、名前は?俺は真行寺龍之介。姓が真行寺で、名前が龍之介。」


名前の仕組みを説明しながら、平仮名で書くと、女性は花の絵を描いた。

百合の花だった。


「この花の名前が君の名前?」


頷く女性。


「リリーちゃんか、百合ちゃんだな。どっちがいい?」


「百合ちゃん。」


「百合ちゃんね。良かった良かった。あ、こいつは、寅彦だよ。寅って呼んでね。」


「はい。寅。」


「はい。百合さん。」


落ち着くと、好戦的な感じはしないのだが、何故、違う種族と見れば、攻撃してしまっていたのか。

それに、スポック達にとっては、敵性宇宙人である。

彼女は大丈夫でも、星全体として見たら、地球にとって脅威となる様な相手とも限らない。

警戒は怠らない事にする。

百合が言葉を覚えたら、探れるかもしれないし、先ずは仲良くなって、こちら側に友好的にさせておくのがいい。




一方、龍介達は結構苦労していた。

ここの商店街には、若い子向けのお店が無い。ちょっと離れた別の商店街には若い人向けな感じのお店があったが、ちょっと予算オーバーで買えなかった。

大きなスーパーがあったので入ってみたが、下着類や作業着はあるものの、若い女性が着てもおかしくなさそうな物は無い。

それでも、どうにか、スパッツの様な物と、小花柄のチュニックの様な物を洋品店で見つけ、さあ戻ろうとした時だった。

真行寺から超難問の電話が入った。


「龍介、この子、ノーブラ、ノーパンだ。ついでに、ブラジャーとパンツも頼む。」


「ーへっ!?」


「今、サイズ測るから。寅…、あ、後ろ向いたな。おお!これは素晴らしい!凄いぞ、龍介!」


「な、何がだ…。」


「うーん、凄い!天然物の巨乳で、こんなに完成度の高いのは初めて見た。ああ、ごめんな、恥ずかしいね。でも、綺麗だよ。」


「ウフフ。」


「ーう、うふふって…。」


龍介、あまりの大人な会話に顔面蒼白。


「言うぞー。アンダーが67の、トップが98だ。」


「は…。なんだそれは…。」


「なんだ、ブラジャーの仕組みも知らんのか。困った孫だな。お店の人に聞けば分かる。」


「聞けるかあ!んな事おおお!」


「じゃ、頼んだよ。」


切れた。


「んもおおおー!」


「どした。」


「ブラジャーとパンツも買って来いって…。」


「ーえっ…!?」


同じ様に顔面蒼白となり、後退る亀一の腕を必死の形相でガシッと掴む龍介。


「逃げてんじゃねえぞ、コラあ…。」


「ブラとパンツなんて、栞と一緒にだって買った事無えぞ…。」


「んな事知るかあ!俺だって買った事無えよ!」


仕方がないので、2人で足元もおぼつかない様なフラフラとした足取りで、また先ほどの大きなスーパーの下着売り場に戻る。


ブラジャーの前に立つのも恥ずかしいが、手に取って、サイズを確認までしなくてはならない。

もう死にそうに辛い。


「どこに書いてあんだよ、そんなもん…。」


仕方が無いので手に取るが、人の気配がする度に、そこからバッと離れるので、ちっともはかどらない。

しかも、女性用下着コーナーに、若くて背のでっかい男2人が深刻な顔で不自然にいるのだから、お客のおばちゃん達に、かなり怪訝な顔で見られてしまう。


「ううう…。これはアレを思い出さねえか、龍…。」


「俺も思い出してた…。朱雀のプレゼント買いにサンリオ行った時のだろ…。」


「そう…。でも、あれより辛えな…。」


「だな…。 よし、今だ!」


人が居なくなったのを見計らい、急いでブラジャーに付いているサイズ表を見て、龍介が怒鳴る。


「ーなんだあ!?ぴったりのが無えぞ!」


「当たり前だろ!オーダーメードじゃねえんだから!近い所で妥協すんだよ!」


「近い所ってどっちだよ!大きい方!?小さい方!?」


「知るかあ!!」


気づかない内に来たおばちゃんに驚かれた後、物凄い軽蔑の眼差しで見つめられる。


「大は小を兼ねる、でかい方買っとけ。」


亀一に小さい声でボソボソ言われ、そそくさブラジャーを取り、適当な3枚お得セットの花柄パンツを買い、レジへ行ったが…。


「えええええー!?」


このスーパー、言わないと袋をくれないらしい。

しかも、野菜とかを入れる、半透明の薄いビニール袋にブラジャーとパンツを入れられただけ…。


「どっ、どおすんだよ、きいっちゃん!これえ!」


「ポケットにでも入れとけよ!さっさとしまえ!」


「それじゃ、本当に変態じゃねえかよ!」


もう十分に変態扱いされている、レジ係を含めたおばちゃん達の視線が突き刺さる…。


「あ、ほ、ほら、さっき買った服の袋に入れとけ…。」


「ああ…そ、そうだね…。」


もう雑色界隈には2度と来れないと思いながら、逃げる様にスーパーを出た。

今日は衝撃と精神的疲労の激しい日の様だ。






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