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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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中国へ

龍介が手早く準備を済ませ、出ようとすると、後ろから声を掛けられた。


「龍。」


振り返ると、寅彦がニヤリと笑って、パソコンの入った大きなカバンを斜め掛けに背負って立っている。


「寅!来てくれんの!?」


「アレは4人乗りだそうなんで。真行寺本部長からの要請もあり。」


「うおおお。心強いぜ。」


連れ立って出ようとしながら、龍介は情報管理室をちらっと覗いた。

瑠璃と悟がジッと、若干陰に籠った目で見つめている…。

龍介は寅彦に先に行って貰いながら、瑠璃の所へ走って来た。


「瑠璃。ちょっと行ってくんね。」


「私も行きたかった…。」


「情報官のバイトは規定で、現場には出られねえんだよ。増してお前は銃なんか扱えねえだろ。」


「うー。」


龍介が頭を撫でて笑いかけると、途端に忘れ去った様に、にたあ…。

しかし、悟は納得行かないのも分からなくは無い。

悟だって銃は扱えるし、バイトの身分というのは、寅彦も同じだ。

それに、悟は一回、龍介に連れられて、現場に出ている実績もある。


「あー、佐々木…。」


「分かってますよ。師匠には未だ追い付いてません。僕と師匠とどっちかと言ったら、師匠にお呼びが掛かるのも当たり前。師匠はあの京極組長が絶賛するスピードと的確さだしね。僕は足下にも及びませんので。」


龍介は目を虚ろにして悟を見た。


「あんだよ。分かってんじゃねえか。だったら、んな目で人の事見てんじゃねえよ。」


いつも通り、カッチーンと来る悟。


「そういう問題じゃないだろ!。それでも、悔しいもんは悔しいの!」


「うるせ。悔しがってる暇があったら、精進しとけ。」


「このお坊ちゃんはあ!そういう所が腹立つんだよお!」


しかし龍介は悟の反論を聞く事もなく、瑠璃にちゅっとラブラブ新婚カップルな事をやって、また走って行ってしまった。


うっとりその後ろ姿見つめる瑠璃を、ジト目で見つめる悟。


「唐沢さん…。」


瑠璃はくるっと振り返り、真顔で言った。


「加納ですわ!」


そして、その自分の言葉に酔う様に、またもや、にたあ…。

悟は眉間に皺を寄せ、目を伏せた。


ー駄目だ…。唐沢さんのおかしさは、とうとう堂に入ってしまった…。


悟の苦悩もつゆ知らず、瑠璃は未だうっとりと、龍介の背中を見送っていた。




蔵で合流し、亀一が操縦に座る42SZ、通称、恐怖のアレに乗り込むなり、龍彦は早速計画を話し出した。


「現地には、朱雀君とこの間協力してくれた、川平君が応援で来てくれている。

王の大事なもんは、全て自宅の金庫に隠してあるらしい。

ただ、この金庫。30桁の暗証番号のデジタルロック、及び、指紋認証だそうだ。

指紋に関しては、今、川平君がボーイに化けて入手してくれた物を送ってくれたから、寅はそれを指紋認証にかけられるよう、加工。

出来る?」


「やってみます。」


「その上、30桁だ。金庫はこの型。解除時間はどれ位掛かるだろう。」


寅彦は、龍彦が見せるパソコン画面の金庫を見つめて答えた。


「7分…。最短で行ければ。」


「了解。俺と龍介で王の書斎に寅と共に潜入。

川平君と朱雀君は外で待機。

撤収の際、川平君は車を出してくれ、朱雀君はどこぞに潜んで援護してくれる。一本が太鼓判押す腕前だから安心していいな。

今日は軽いパーティーらしく、来客がある様だから、普段よりは多少潜入し易い所はあるが、流石に首相の影の側近。セキュリティーは凄まじい様だ。

現地情報官が予め調べておいてくれた分は、寅のPCに送ってくれてるはずだ。」


「はい。来てますね。」


「作業が多くて申し訳ないが、宜しく。」


寅彦は既に作業入りながら、ニヤリとして答えた。


「大丈夫です。」


恐らく、これ位の同時作業は、京極組では日常茶飯事なのだろう。


「頼もしいな。宜しくね。そして龍介。」


「はい。」


「警備体制は、首相官邸並みだ。心して行こう。」


「了解。」


「きいっちゃんは、すぐ側の雑木林で待機。脱出後直ぐに乗って飛び立つ。いいかな?」


「了解…。」


龍介達よりは慣れているとはいえ、亀一も余り余裕は無いらしい。

龍彦は労わるように亀一を見つめた後、仕事に取り掛かった寅彦の邪魔にならない様に、龍介を見て、ニヤリと笑った。


「ん?」


「お疲れ。オカマ役。」


「お父さん!」


怒る龍介の隣の、寅彦の肩が笑い過ぎて揺れている。


「伝説ですよ。夏目さんと渋谷さんと龍の三角関係。」


「寅あ!」


「だろうなあ。しかし、渋谷君てのも、色恋沙汰でよく絡むな。夏目君に。」


「え?何それ。」


「青山君から聞いたんだけど、渋谷君は本当は相当、美雨ちゃんが好きだったんだそうだ。2人が付き合い出して、幸せそうな姿を見る度に、陰で号泣してたらしい。」


「えええ…。だから中隊長のあんな不名誉な噂流したのかよ…。彼女に振られた腹いせだけでなく…。」


「そういう事らしい。案外ヤキモチ妬きのウェットなタイプなんだな。そして、今度は龍介と夏目君にまで絡んで来たと。」


「だからお父さん!!!」


「いやいや。よくやった。頑張ったね。」


亀一が幾分、ホッとした顔で龍彦に告げた。


「本部長、後10分で到着します。」


「了解。さあ、頑張ろ。」


龍彦が父親の顔から、一流スパイの顔になった。



























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