747話 何年保つかな?
仕事としてモンスターを狩る。それは今と変わらないがそこに仲介業者として挟まる気マンマンか。確かに企業とのマッチングやらも請け負ってるし仕事の依頼はギルドに来るから同じ畑でパイを取り合うとも言える。だが、それも良し悪しでギルドとしての仕事が増え続ければ組織は肥大化して、結局当初の目的を見失いかねない。
渡りに船ではないけれど、この部分寄越せと真っ向から言ってくるからには先も考えた上で動いているのだろう。流石に金儲け優先で無策とは思いたくもないし・・・。
「薄利で働く気ならウチに来ませんか?高額報酬を約束しますよ。」
「それは思い違いをしていますよグプタさん。私は自分の仕事をしているだけで合って、その中でゲートからも報酬を得ている。新しい事業に目玉は必要でしょうが私以外をあたって下さい。」
「なるほど・・・、ならギルドと提携と言う形はどうです?大多数のスィーパーのサポートにもなりますよ?」
「それをしたいなら自国のギルドからでしょう。確かにどこででも仕事が出来ると言うメリットは認めましょう。しかし、それは同時に末端を管理出来ないと言う不信感を抱かせる。逆に問いますがこの経営方法で何年やるつもりですか?」
「当社の計画なら相当年の継続は可能としていますが?」
「なるほど。なら、その継続を見てから考えましょう。」
これが何十年、或いは何百年と続けば一企業からスタンダード大企業へ様変わりし、似たような形で経営を立ち上げる人も出てくるかもしれない。しかし、現時点での解答は見守るだ。そりゃあ、マンパワーに物言わせて社員を爆増させれば一時の信頼や注目は得られるかもしれないが、下手にギルドと言う名を使われると司法介入までしてくるかもしれない。
確かに法律なんてものは大多数の人間が不要と断じれば改正されたり削除されたりするものなのだが、それをするにも工程を踏むのは大事で民意だけで左右されるならゴールポストは動き続ける。世界がまとまり国が集まっているさなかに駆け抜けようと思うなら、こんな方法もあるんだろうな。
どちらにせよインドアフリカ方面はそこそこ気にしながら見ておこう。下手するとEUよりも面倒な爆弾になりかねないし。その後は販売品を見るけどやはりと言うか、おかしな物が多いな。
その中で多くあるのが獣人向け商品。新しい顧客とするなら確かに分かるのだが、獣人と住む家やら獣人同士で住む家を売っている辺り、人のパートナーとしての獣人と独立した獣人と言う方面で商売をする気なのかも。
日本の場合、獣人は飼い主に帰属する所が多いけど、海外だと独立した人種として見ている所もある。後は獣人の生き方と時代の流れ次第としか言えないが、子供問題の観点から言えば独立した人種と見るのが妥当かな?
確かに獣人との子供を望む声は多く、その研究もされているのだがまだ実を結べていない以上、子孫を残すなら獣人同士となってしまうし、他の獣人まで家に入れて家族として過ごせるのか?と言う部分も出てくる。
ただ広い庭は分かるけどキャットウォークの付いた壁やらはいるのかな?いや、フェリエットも屋根の上にいたりするし案外好みなのかも。そんなこんなで1日目は終了。さっさとホテルに帰ってゆっくりしたいのだが・・・。
「販売状況とか見たくありません?」
閉会宣言がされた後に会場がちゃんと空かを橘達と見回っているさなかに松田が話しかけてきた。フットワークが軽いと言うかなんと言うか、フェス中は国会議事堂に詰めて論戦したりフェスの推移を見守ったりしているはずなのだが・・・。入口には橘達もいるし本物で間違いはないんだろうけどさ。
「反発が出ないなら概ね認められたと言う事でしょう?数字がいくら動いたと言われても懐に入るわけじゃないなら政府に任せますよ。寧ろ、今頃企業側は寝る間も惜しんで仕事に取り掛かるんじゃありません?」
「そうなりますね。お陰で国際電話回線は大盛況ですよ。どこもかしこも価格帯が出たならその価格帯で売買する相手を探さないといけませんからね。どうしました?くたびれた様な顔をして。」
「1つ肩の荷が降りたと感じただけですよ。ソーツとの交渉にゲートを世界に知らせると言うモノがありました。職を知りモンスターを見て、生活の一部としてゲートと世界は付き合っている。ようやくここまで来れたのかとね。」
仮に死ぬ事が出来たなら俺は多分、あるかも分からない地獄に行くだろうな。今の状況はそれでも足りないくらいの人をゲートに入れるシステムとして作り上がって行っているし。元々我儘で座右の銘も我儘だから、忘れずにいるにしても背負える人間には限りがある。
「それで1抜けとか許しませんからね?燃え尽き症候群も含めてですけど。」
「燃え尽き症候群?まさか、ゴミ掃除に終わりもなければ底にも行ってないし祭壇も見つかってないんですよ?時間見つけて潜ってますけど、何も手がかりがないからそろそろ騙されたんじゃなないかと考えてます。」
歩みを進めて70階層、まだ下層とも言われないが辺りはかなり明るくなった。バイト曰く下はかなり明るいと言っていたから多分、そろそろ下層も見えてくると思う。その分モンスターは凶悪で誰を連れて行くと言う話も少なくなった。
いやね、体感では上よりモンスターの数は減ってるんだよ。しかし、その減ったモンスターが中々凶悪と言うかほぼ死ねしか言わないし、攻撃してから遅れて声が聞こえるもんだから、下手に連れて行くと誰も彼も死んでしまう。
何度頭を消し飛ばされて何度クリスタルを引っこ抜いてやったか・・・。ただ、歩みを進めるなら早くしないといけない。そうしなければ降り積もったゴミは塊更に醜悪さも増してくる。魔女ではないが確かに虫酸が走るな。
「その祭壇の件ですが大規模調査は有効だと思います?」
「議題に上がったんですか?可能性の話をするなら有効ではあると思いますよ?その代わりどの階層にあってどんな形なのかも分かりませんけどね。」
「それが問題なんですよね・・・。議論をするにあたり目標物の詳細が不明で、それを探してこいと言われても空を掴む様な話でしょう?野党与党で論戦しても本当にプロレスの様で面白くないですよ。」
松田が首をすくめながら話すが、確かに宝があると言われて地図貰ってないし状態なんだよなぁ〜。何かしらの手掛かりは欲しいけど、廃棄ゲートも違ったしその他でコレと言えるものはない。そうなると潜って行って探すしかないんだけど、1つの階層をくまなく探す労力は計り知れない。
「もっとこう・・・、明るいニュースとかないんですか?まぶたでピーナッツ割るとか、鼻からスパゲティ食べるとかでもいいですよ?」
「奇人変人の部類でしょ?それ。と、言うかスィーパーならそれ出来ますよね?」
「やりたくはないでしょうが出来ない事はないですね。ただ、それが本当に鼻なのか?まぶたは本当にまぶたで眼球が無事なのかは知りませんけど。」
「ただ、明るいニュースと言う話なら1つありますよ?」
「ほう?なんです?」
「素材フェス後、大分ギルドを一時的に橘君に任せる気はないですか?」
「時間の捻出と言う話ですか?確かに纏まった時間でゲートを進めるなら帰りを気にしなくていいとも言えますが・・・、政府としても困りません?」
橘は監査役として日本を飛び回りつつ鍛えてくれと言われたから一緒にゲートに潜ったりもしている。はっきり言うと過労状態なのだが、今の世の中本人が休むと言わないと仕事する?と言う方向になっちゃうんだよね・・・。
会場に来ていた企業の人とか発表してた人は睡眠が無駄とは言わないけど、何日かに一回で済むなら継続して事にあたりたいって人も多くいた。日本人が勤勉と言われたのは今は昔、本人のライフスタイル次第ではどこまでも仕事に齧りついてそうだ。
まぁ、企業側は休めと言ってるらしいよ?流石に回復薬飲んで健康だと言われても、その残業分の支払いはしないといけないからね。




