742話 そこを羨む?
「我々の研究として、AI技術の発展及び高度にプログラムされたモノは人と遜色なく、仕事をさせる事が出来ると確信しています!それは既にコアと呼ばれるものが自己修復、自己対話を行った事が明確であり・・・。」
「魔法技術の発展、それはどこまで人の生活に関われるのか?この部分が大事でしょう。確かに個人技能と言う話もあります。しかし、受け渡しや杖と言った物品としての・・・、そこ、危険性の話は後からします!」
「出土した設計図。コレを形にするのには膨大な量のモンスター素材が必要になります。日本が公開した飛行ユニット、コレを作るにしても浮遊しているモンスターを多数狩らなければならない!しかし地球の資源には限りがあり、モンスターと戦うスィーパーにしても負傷や命の危険が付き纏う。それらを解消する為に私達は宇宙へ目を向け・・・。」
「私達の国では新たな技術として鉄に着目しました。今ある鉄素材は確かに安価ですが、スィーパー相手には脆い。一説には核シェルターでさえスィーパーは壊せると言われています。なら、それに対抗するものは?武器として盾等も出ますが、それを鍛冶師に頼み建材とするには余りにも勿体ない。そこで粒子レベルでの分子間結合を・・・。」
「人体工学・・・。今の人間、取り分けスィーパーは既に進化した人類と言っても間違いないでしょう。そんな中で人はどう生きるのか?すべてを戦いに捧げるだけではなく自らのアイディンティティを持ち生活する。獣人を人生のパートナーとするべく我々は研究し・・・。」
素材フェスが開幕したのはいいとして、発表会場と言うか技術の売り込み会場では様々な事が話されている。大きく分けると3点で先ずは宇宙開発。
コレはモンスターと戦わないといけないと分かっていながらも、素材の安定供給先を確保したい所が集まり話しを展開している。確かにゲートはソーツがもたらした。なら、そのモンスターを作る素材は宇宙にあるのではないか?と言う話も分かる。
なのでS・Y・Sを基準とした宇宙生活に置ける新たな生活様式必要品と言う形で売り込みを行っている。主導としてはドイツやらのヨーロッパ方面かな?英国は魔法立国を目指すとして宇宙開発方面には噛まないとしているが、どの道コロニーが増えれば往来もあるだろうし上手い具合に後追いしてるな。
まぁ、その主導国的な立ち位置のドイツにしても宇宙開発よりもパワードスーツやらロボテクスーツに力を入れているのでS・Y・Sの影も形も見えない・・・、なんて思ったら大間違い!
米国に続きEUと言う形で飛行ユニットの試作品を作り上げ、来年までの正式運用を目指すとしている。実際会場ではパワードスーツに飛行ユニットを搭載した物を披露したので量産出来ればS・Y・Sも作れるだろう。
次に盛んなのは人体について。コレが盛んなのはインドとアフリカ方面。元々仲の良かったインドとアフリカだが、人口という面でも最大を誇るインドは昔の日本の様に総中流家計を目指し躍進。元々合ったカースト制度もほぼ形骸化し、優秀な人材は文字通り優秀として扱われる様になり、その人材をアフリカに派遣したりして本格的にマンパワー掌握に乗り出した。
そして、それだけ人がいれば色々出来るよね?ロシアよりもヤバい事をしていないと思いたいが、思いたいだけで何をしているか分からない。まぁ、傭兵国家チックなモノを作るなんて話もあるが、その傭兵の働き口は随時ゲートにあるので、どの国も駄目とは言えない。
実際スタンピード時に出す戦力増強を盾にされるとどの国も口を閉じるし、金で動くスィーパーがいるのは助かると言えば助かる。それでも人間同士の戦いには介入しないとしているあたり、ギルドを立ててくれているとも取れる。
まぁ、今更人と人が争ってなんの得があるのか?と問われればプライドやら面子とか?その傭兵を使うかどうかは別としてどの国でも自軍のスィーパーはいるので需要と言う面では個人単位になるのかな?
チャンやらなら金に物を言わせて不死薬取ってこいと言いそうだけど、難しい品ほど窃盗リスクもあるし先ずはアピールして信頼を得る所からかな?
最後はどの国もコソコソ出て来る獣人関連。主導はマチマチだが医者が多いかな?獣人ベイビーが続々と生まれる中でその生態やら治療、価値観の違いやら基礎的な身体能力等々、職に就けると言う事で議論の幅は広いし、なにより獣人と人の子供が作れないか?と言う話も出て来ている。
世界的に見れば宇宙船地球号はキャパオーバーだったのだが、ゲートが出現してそこに移り住む人もいればS・Y・Sなんかのコロニーを待ち望む人もいる。つまり、生活空間と言う話だけなら来年以後はそこそこ余裕が出て来そうなのである。
そんな中で誰と過ごし誰と結婚し子を残すのか?と言う話しをした時に一定数・・・、本当かは分からないが2割くらいは獣人と子を作り家族と成りたいらしい。高槻と調べた限りではDNA的な違いがあると知っているはずなのだが、それを諦められない人もいるんだよなぁ・・・。
前にどこかの大富豪がテレビに出てたけど、獣人なら一夫多妻制でも問題ないからドンドンパートナーにすると抜かしていた。う〜ん・・・、安定して飯が食えて夫も仕事してれば獣人的にはいいのかな?
なんにしても獣人から卵子やら精子を採取して違いの部分を研究して、人に近づけたり獣人に近づけたりしている様だ。後でフェリエットに話しを聞いてみようかな?お年頃と言うわけではないが、子供が作れない年でもないし。
「次は高槻製薬からの発表です。」
「え〜、うん。会場にお集まりの皆さん。社長の高槻 夏樹です。今回発表させて頂くのは台湾との共同開発となった思考ダイブトレースシステムです。コレは先んじてクロエ氏がS・Y・Sに搭乗した際に使用した遠隔端末操作モジュールですが、本題はそこではありません。本来このシステムは他者の思考を追体験する為にあります!」
「高槻社長、それは他人の思考を読めるシステムであると?」
「ええ。ただし最新のではなくある程度蓄積されたモノとなりますな。まだまだ試作段階の部分も多く、全ての思考を読み取れるとも言いません。しかし、昨今の犯罪を見れば逮捕率は高いもののどうやって実行したのか?の部分で立証するのが難しい。それはスィーパーと言う者がイメージで事をなすからです。我々としてはその部分に着目し、どうやって事をなしたのか?その思考を読み取りトレースし犯罪抑止に繋がればと考えていますな。」
壇上で高槻が話しているが、本気で弁護士殺しに来てるな。台湾のサイ達と佐沼達と高槻達で作り上げた代物なんだろうが、思考をトレースされてそれが高精度なら過去の偉人は偉人のままデータ上では生き続けるのだろうし、証言なんて言うその場限りのデマカセが話せる代物はいらなくなる。
要は記憶のパッケージ化だよな。記憶して体験したから思考出来る。逆を言えば記憶も体験もないなら思考は出来ない。だってそうだろう?湯気の出る水を見たら熱いと思う。それは前に誰かから熱いと教えられてなければ分からないし、触って見なければどれくらい熱いかも分からない。
そこに温度計を使い温度を計ると言う体験があれば、火傷はせずに済むかも知れないし、思考が足りれは臭いや沸騰具合から温泉と判断するかもしれない。思考を読み取るとは、そのまま関連した記憶まで抜かれる事なんだよなぁ〜。
「横いいですか?」
「いいも何も確信したから聞いてるんでしょう?リャンさんの事なら終わった話ですよ。」
「ええ。アレをどう扱おうか悩みましたが、今の所は私兵と言う括りで済ませておきます。他の方達に対してもね。」
会場の壁に寄りかかりつつ発表を聞いていたが、確信する様にチャンが横に来た。本人としてもお偉いさんだろうに、こんな所で油を売っていていいのだろうか?リャンの姿も見えないし。と、言うか他の人にもダンマリって大丈夫?リャンは国で色々やらかしてる風な事を言ってたけど・・・。
周囲に防音と隠蔽魔法、次いでに2人分のスペースを作る様に魔法を施す。周囲から見ればここは壁であり、無意識に近付きたくない場所だろう。
「何にしてもよく見つけましたね。私がここにいるってバラしてないんですよ?」
「リャンに聞きましたよ。絶対に逃れられない者の場所はどこかとね。」
「それはどんなイメージなんでしょうね?私から逃げられないのか、それとも私が逃げられないのか。どちらでもいいですけど、こんな所でわざわざなんです?」
「世間話ですよ、世間話。我々があのシステムを入手している事は?」
「知ってます。台湾から奪取してR・U・Rサーバーに入ろうとしたりしている事もね。初めて合ったサイ大臣は死にそうな顔してましたよ?」
「それほど欲しかったと言う事です。完成は先を越されてしまいましたけどね。今から私と言うか祖国に謝れと文句言いますか?」
「無意味でしょう。形だけの謝罪に意味はなく、返還すると言った所で出がらしを送られて来ても台湾が今度は困る。返す意志があるなら公ではなく秘密裏に申し出た方が賢い。」
「やっぱりそう思います?いやぁ〜、祖国内でも意見が荒れてるんですよね。日本に対する政策の中で台湾から奪取したモノをどう扱うのか?下手に発展させた物を出せば我々は疑われる。それは過去の行いがそう示している。」
「イメージや信頼は積むのに年月がかかりますからね。・・・、え?もしかして解体する気ですか?」
「ダメなイメージを払拭するならイチからのスタートでしょう?解体とまでは行きませんが国土の再区分けは議題に上がっています。そもそもロシアとてあの国土をどうやって維持するかで悩んでいるんですよ?我々だって同じ悩みがある。寧ろ、国土の狭さを羨む日が来るとは思いませんでした。」




