741話 開幕 挿絵あり
チャンとリャンは引き上げ松田も急ぐと言って東京ギルドに1人残された。う〜ん・・・、リャンの件で全員動いているのだろうが、動いた所で何をどうするつもりだろう?確かにダブル中位と言うのは初なのだが、ゲート内の出来事であり松田は動いても内容確認出来ないだろうし、チャンはチャンでリャンがどう動くのか?の部分で下手な事は出来ない。
「なんにしても一旦ホテルに引き上げるか。」
色々と注目は集めるが穴開きビジネススーツじゃないからいいだろう。流石にアレはもう着れないな。そのうちゲートに廃棄してしまおう。そんな事を思いつつバイクを指輪から取り出してホテルへ。夜のドライブに惹かれるモノはあるが、さっさと帰らないと不味い気もする。
「ただいま。と、言っても一人部屋か。」
ルームサービスを頼んで夕飯を食べつつ明日以降の事を考える。リャンの件は片付いたとして、チャンはそのままフェスに参加するだろう。残念な事と言えば今日の時点で下見が出来なかった事か。商品の方はいいとして技術発表会の方はちょっと気になる。
新しい理論やらはそれだけで新しいイメージを呼ぶし、それを元に何かを作ったなら更に発展したイメージも持てる。素材価格安定化と言いつつ、そこで技術発表会を行うと言う政府の案はある意味踏み絵的だよなぁ。当然何も発表しないと言うのも手なんだろうが、それで割食うのは発表しなかった国で、国民からも長期間何をやってたんだと不満も出てくれば、技術を発表した国からすれば研究にタスクを割り振らずに何にタスクを割り振ってるんだと疑惑も生まれる。
確かにスタンピード対策としてスィーパーを鍛えるのも必要なんだけど、その鍛えるスィーパーはモンスターぶっ殺して素材を取ってきたり、それを売ったり箱を開けて金貨を手に入れたりしながら生活している。つまり、国が何も発表しないと言う事はその金貨や素材をどこかに放出しているか、或いは国が機能不全に陥っているとも取れる。
なにせ資金も出てくるし研究対象とするべきモノもある。松田が飛行ユニットのデータをばら撒いて、それを貰っただけと言い張る国もないだろう?当然他の物を研究してもいいのだが、それならそれで何も発表しないと言うのもおかしい。と、ここまで考えてみたがそもそも発表に値しない研究と言うものもある訳で・・・。
技術的に元々先進国に追い付いていなかった国はそこを覆すべく地力をまだ上げたいだろうし、逆にある程度技術があった国は逃げ切る勢いで駆け抜けるしかない。地球の中でリーダーになってどうすると言いたくもあるが、意見集約する委員長がいない事にはまとまる話もまとまらないのよね。そんな事を考えながらシャワーを浴びて一服してからベッドで目を閉じる。
「おはようだなぁ〜。」
「おはー。」
「おはようございます。」
「おはよ。今日が本番だけど昨日の視察はどんな感じだった?」
集まって定刻には全員で朝食。昨日のリャンとやり合ったせいで中の状況は分からないが、警備に関わる3人は情報収集していると思う。この場で情報収集しておきたいが、実りあるものかどうか・・・。
「警備網自体は当初の予定通りですね。コレと言った変更もなく不明な点もなかったですよ。フェリエットの方も神志那さんと回ってましたけど、どっちが保護者かは・・・。」
「にゃははは・・・、ついつい気になる所は長居しちゃうよねぇ〜。でも、当日の発表は聞かなくて済むくらいには話したかにぁ?」
「メガネはガメつい奴だなぁ〜。でも、それで気が済むなら安いものだなぁ〜。出来る猫人は人を使って楽するなぁ〜。」
それで楽なのかは別として、人の事をフェリエットはよく見てらっしゃる。神志那の場合引き離してもあの手この手で見ようと聞こうとしてくるから、それを阻むよりは満足させた方が遥かにコントロールしやすい。その満足が何処にあるかは別としてでもだ。
仮にフェリエットと中位の神志那が意見の食い違いから戦うにしても、多分神志那が勝つと思う。と、言うか勝ってもらわないと困る。中位がフェリエットに負けたとあったとしたらケース・バイ・ケースがあるにしても恐怖心は消える。そうなると言う事を聞かなくてもいいと言う層が出始めるんだよな。事実として、人が悪いにしても獣人として主張するべき所は主張するし、ギルドがあれば駆け込んでくる事もある。
エンゾだったか?宮藤の弟子で俺が龍だしたりした時にいたが、母国でギルド立ち上げたら獣人の駆け込み寺状態で不当な業者を二つ名通り鉄拳制裁したらしい。獣人の不満は爆発させるにはデカ過ぎる爆弾で、絶対に反乱は阻止要項だな。はっきり言うと俺は人よりも獣人の反乱の方が怖い。
だって人の反乱なんて物は今までの歴史が示す様に何度でも起こり鎮圧されてきた。だが、行動原理が違い思考回路が根本的に違う獣人は見守るしかないし、行動を起こしてから考えるしかない。それは確実に後手だろう?多分フェリエットを含め獣人は中位や俺と言うかEXTRAを恐れる傾向にあるとは思う。裏を返せば怖くない者と認識してくれば恐怖の対象ではなくなる。
「楽はしてもいいけど真面目にな。今日からが本番だし。交代の獣人もいるし休みなら見て回るといいさ。」
「・・・、見て回っていいのかなぁ〜?」
「拒否はしないし考えるなら考えればいい。知性があるならそれは多分誰にも止められない。なにせそうやって人は人になってきたからな。獣人だからと排斥する気もないさ。」
「なぁ〜。」
フェリエットが1鳴きして朝食を終了して一服。さて、会場では何が発表されて世界はどう動くやら。はっきり言えばこれからは未知の世界だ。それこそもうSFの世界と言ってもいい。
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「現場の東海林です!今内閣総理大臣より素材価格安定化による取り組み、通称素材フェスが開幕しました!開幕には名だたる著名人やファースト氏、他にも中国のチャイナ7のチャン氏やサイラス魔法省長官等々、豪華としか言い様のないメンバーが来られています!」
「北海道テレビの藺草です。東海林さん、素材フェス会場そのものの雰囲気はどうですか?日本政府としては各県の本部長やファースト氏と連携を取ったと聞いていますが、その内容は全て伏せられていましたが。」
「はい!私が肌で感じた感想としては和やかと言えます!何処にどう言ったスィーパーがいるのかは分かりません!それを解説するのは警備上の穴となります!しかし、ファースト氏へのインタビューとして『万全の体制を皆で作り上げた。それを崩す気なら敵対者として裁く。』との発言を貰いました。事実として、会場にいると悪い事は辞めておこうと言う気になります。」
「他の国の状況はどうです?」
「はい。各ブースにはノーベル賞受賞者や各分野の著名人、それ以上に企業人や今まで有名ではなかった研究者と思しき方がいます。とある有識者からは『未来を形作る新たな船出』との発言を貰いました。事実として、今回発表される技術は真新しいものが多いです。それはゲートより出とした設計図を元にした物もあるそうです!」




