閑話 144 とあるテレビ局での会話
映像作成に関わる者として今の時代は相当頭が痛い。アニメ制作会社は黄金期到来かと言う程に潤い、異世界転生に超能力バトルに戦記物も何を志のかと言う面では重宝される。
バラエティも実験系を主軸に大学教授やスィーパーを呼べば番組は成立し、ロケと言っても現地集合さえ可能なら日本中どこへでも行って撮影を行い映像も集めやすい。食べ歩き系?今は地方が熱いな。
行動範囲が広がると言う事は一極集中する必要がなくなると言う事で、スィーパーと言う仕事を考えるなら東京にいる必要もない。確かに東京は便利なんだろうが、遊ぶと住むは違い近郊に住んだ方が家賃も安い。この場合の近郊は2県くらい隣までだ。その程度なら走って間に合う。
実際満員電車に乗るか走るかのアンケートでは、身体能力が高まる職に就く人は走るを選ぶ人が多い。確かに疲れるのだろうが会社やネカフェでシャワーを浴びれば済む話だ。と、話がそれた。
ともかく、色々と世界は変わっていい事も増えている。増えているがそんな中で頭を抱える分野がある。推理系の分野だ。刑事モノ、探偵モノ、事件に事故等々・・・、トリックのトの時点で批判が飛んでくる・・・。
「それで、この時期に探偵モノ作るとか正気ですか?それも現代基準で。」
「どうにかならない?最近時代設定作ってからの探偵モノやら刑事モノは作るけど、上から現代探偵モノなら数字取れるんじゃないかって言われてさぁ〜。」
「あのですね、はっきり言って自殺行為ですよ?死体が出たなら鑑定師呼んで犯人分突き止めてスピード解決ってご時世ですよ?そうでなくとも身代金目的でも人質の場所はすぐに割れるし、捕物劇だって私人逮捕ですぐに収まる事がほとんどですし。」
上司の発言はバカげている。リアリティを重視した作品やファンタジーに振り切った特撮が数は取れるのに、その中で探偵モノとか・・・。作る方も大変なら演者も大変だろうし。昔ならトリックを考えるのはそこまで難しいものじゃなかった。
例えば中世設定でワインに毒を盛って犯人を探す。コレなら3人いれば話は作れる。死体役割、毒を盛る役、それを指示する役でトリックとしてもグラスの内側半分に毒を塗って渡し、毒見と称して毒の塗ってない所からワインを飲み、一回しして差し出せばいい。
必要な肉付けは人間関係を入れればいいし、毒見役が先に飲んだのになんで毒が!とモブに騒がせて事件を引っ掻き回せばいい。スマホやら携帯電話がで出した当初の構成作家は新しいトリックが作れると喜んだのだろうが、職と言うモノを考えたらトリックを潰す要素しかない。
人間関係は分からなくとも犯人が捕まれば本人に聞けばいい。それだけで事件は解決するし、余罪があるなら更に追求される。そもそも犯罪犯すリスクが高過ぎるんだよ・・・。流石に10円ネコババして余罪として裁かれる事はないけど、万引きしていれば余罪として裁かれる。
はっきり言って警察24時を制作して取り締まりの内容を見ていれば、どうやって逃げおおせるのか考えるだけで頭が痛くなってくる。いや・・・、コレはネタとして使える・・・、のか?
「探偵モノならいいんですよね?」
「ん?最近推理するって過程をすっ飛ばして、犯罪だ!捕まえた!って言う話が多いから、その間業を作れる話ならいいけど?」
「なるほど・・・、なら探偵を鑑定師にします。」
「はぁ?それで1時間保たんだろう?死体が出て鑑定して犯人指差しておしまい。それだけだ。」
「違います。確かに最後は犯人を捕まえるんですけど、それはオチであって探偵が出るのは冒頭とラスト。或いは最後の10分くらいです。」
「残りの時間何させるのよ?」
「犯人による完全犯罪シミュレーションです。そもそも探偵がトリックを解くのが探偵モノと思われがちですけど、見る側としては誰が何を解こうが関係ないんですよ。それなら顔のいい俳優が恋愛入れたりしながらチャラチャラ演技するよりも、ひたすら犯人側の視点で犯罪をどうやって隠すのか?って方に焦点を当てて作りませんか?」
「なるほど・・・。確かにそれなら最近の傾向と言うか、警察や国から犯人が捕まらない話はやめろと言う部分も大丈夫だな。」
「ええ。それにトリックを考えるにしても突発的な犯行なら短絡的なトリックでも不自然じゃないですし、逆に念密な計画犯でもバレると言う部分や予期せぬ事態が発生するとすればいいですよね?」
「その予期せぬ部分を探偵にすれば登場回数も増やせるな。全体として連続性は持たせるのか?」
「いや、探偵は同じでも他は全部変えても構いませんよ。都内在住にしてもそんなに頻繁に犯罪に巻き込まれないだろうって話も出てきますからね。1話完結オムニバス形式でたまに前編後編を入れるとか、ギルドに依頼して助っ人借りるとか。」
「確かに鑑定師なら身体能力的には他のスィーパーには劣るから、助っ人を依頼しにギルドに行っても不自然じゃないな。そこで脳筋と組ませるか?」
「脳筋は死語ですよ。身体が筋肉ダルマでもスィーパーは大体インテリ傾向が強いですからね。そもそも犯罪率の低下は知能指数が上がったからって言う見方もあります。事実として、バイトに来たADと有名大学教授がコーヒー飲みつつ宇宙理論の話ししたりするんですから。」
「それはもう興味の方向性って話だろ?俺だって小難しい数学は勉強してないから分からないけど、クイズ番組作ってたから知識総量はなかなかのもんだ。と、そう言えばその探偵の背景はどうする?」
「探偵の背景・・・、あらきたりなら元刑事とかですけど・・・。元弁護士にでもしましょうか。それなら法律に詳しいって話も出せますし、弁護士自体が仕事にあぶれてる所もあるから不自然じゃないでしょう?」
「探偵権弁護士か。自分で犯人捕まえてその犯人の弁護士引き受けるパターンもやれるな。そして、法廷闘争やらAI裁判に対して弁護士の有用性を・・・。」
「あっ、その辺りの法廷闘争は面倒なんでAI裁判入ったらそっちにお任せで。」
「シリーズ化狙わないのか?」
「主軸がブレたら困りますからね。あくまで作成側はトリックをどうやって成立させるのか?そこを視聴者と共に考えつつ結局は無理だったで終わらせるんですからね。じゃないと結構文句言われるでしょう?更にゲートの中とか入れだすと話が訳わからなくなりますし。」
「ゲート内ロケは賛否出るしなぁ・・・。アクション撮るならゲート内なら火薬詰め込んで大爆発させようが、アクションで多少怪我しても回復薬飲ませて大丈夫だったって話に出来るが、その分保険金って意味で予算は上がるし探偵モノとは相性最悪だしな。」
「ゲート内で探偵やらせるなら人探しで旅させて出会いを演出した方がマシですよ。まぁ、それはもう探偵ではない旅人って話になりますけどね。そもそもゲート内は自己責任だから、犯罪の定義が付けられなくてオールグレーですし。」
「やっぱドラマ作るなら外だな。ルールがないとそのドラマが作れん。なんにしても探偵モノで新ドラマ頼んだぞ。」




